五冠王の弟子を持つと、さすがに師匠も恐縮することがあるようだ。8組の師弟により“最強の師弟”を決める超早指し戦「ABEMA師弟トーナメント2022」の予選Bリーグ1回戦第2試合が12月31日に放送された。チーム杉本は杉本昌隆八段(54)と藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)の師弟だが、「チーム杉本」という呼び名について、杉本八段が「彼の名前が前面に出ないと違和感が…」と珍コメント。これに藤井竜王は「遠慮せずにたくさん勝ってください!」と微笑むシーンが生まれた。
藤井竜王は、現在最多の五冠を保持し、1月8日からはALSOK杯王将戦七番勝負で、羽生善治九段(52)を迎えての防衛戦が待つ。また棋王戦コナミグループ杯では渡辺明棋王(名人、38)への挑戦を決めており、年度内に六冠達成の可能性がある。タイトル戦が続く中でも年度勝率が8割を超え、他の追随を許さない強さを誇るだけに、杉本八段としても師匠とはいえ、気が引ける場面があるようだ。
通常、将棋界ではタイトル保持数や段位など「序列」が上の棋士が先に呼ばれるが、この大会は「師弟トーナメント」。チーム名も師匠の名が入り、師匠・弟子の順番で呼ばれる。杉本・藤井の師弟も「チーム杉本」だ。ただ、この響きが杉本八段には違和感があったようで、試合前のオープニングトークで「『杉本チーム』という表現ですが、そこに違和感が…。『藤井(の師匠)チーム』とか、彼の名前が前面に出ないと違和感があるんです」と苦笑いした。各種イベントでも「藤井竜王の師匠」として声がかかることも多く、ここは気を使うポイントなのかもしれない。
試合への意気込みを聞かれた杉本八段は「正直、あんまり頼りにならんかもしれないけど、頑張ってね」と弟子に声をかけたが、これに対して藤井竜王は「遠慮せずにたくさん勝ってください!」とニッコリ。ファン待望の大会初出場となる杉本・藤井師弟のやりとりが、早々と場を和ませていた。
◆ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)