
1月1日、プロレスリング・ノアが2年連続となる元日の日本武道館決戦『ABEMA presents NOAH THE NEW YEAR2023』を開催。メインイベントⅡでは、1.22横浜アリーナ大会でラストマッチを控えたグレート・ムタと、WWEスーパースターSHINSUKE NAKAMURA(中邑真輔)の“奇跡の一戦”が実現した。
中邑真輔自身が「これは時代の狭間で起きた奇跡」と語るとおり、WWEと専属契約を結んでいるスーパースターが他団体のビッグマッチに参戦するのは極めて異例なこと。それがWWE側の体制の変化やノアの粘り強い交渉。何より世界のグレート・ムタ、および武藤敬司が引退に向かうというさまざまな条件が重なり奇跡的に実現した、まさに夢の一戦を超える、奇跡の一戦だ。
この試合に並々ならぬ想いを抱く中邑は、WWEでテーマ曲「The Rising sun」を演奏するリー・リングランドJr.さんのバイオリン生演奏と、和太鼓のコラボレーションによる和と洋が融合した、この日だけのスペシャルな演出で、白装束に身を包み全身を滾らせながら入場。リングイン前には、さまざまなことへの敬意を込めたような座礼をして、奇跡の舞台に足を踏み入れた。
続いてかがり火が焚かれる中、この日のためにあつらえた背中に「Bye Bye」文字が刻まれた新コスチュームでグレート・ムタが入場。両者がリング上で向かい合うと、日本武道館に幻想的な異世界が広がり、9500人(札止め)の観客から大きな拍手が巻き起こった。

そして運命のゴング。ムタと中邑は序盤じっくりとグラウンドレスリングを展開。入場時は拍手とどよめきに包まれていた超満員の日本武道館が静寂に包まれる。そしてヘッドシザースから逃れた中邑が「カモーン!」と挑発すれば、ムタは毒霧を天に吹き上げて威嚇。ここから試合は、ムタワールドへと入っていく。
ムタは自分の縄張りである場外に中邑をいざなうと、まずはテレビコードで絞首刑。リングに戻ると、フラッシングエルボーからSTF。さらに中邑の足に噛み付いてのドラゴンスクリューから足4の字固めと得意技を惜しげもなく繰り出し中邑を追い込んでいく。
中邑もムタのシャイニングウィザードを両腕でガードするとスピンキックから反撃。スライディング式ジャーマン、ダイビングニーを繰り出し、全身をたぎらせてから一気にキンシャサを狙うが、ここでムタがカウンターで赤の毒霧を噴射!

顔面を赤く染めてもがき苦しむ中邑に対し、ムタは場外で引き裂いた中邑のコスチュームで首を絞め、さらにリング下から持ち出したパイプイスで一撃。止めに入るレフェリーを突き飛ばし、無法地帯となったリングでさらにイス攻撃を続けようとしたが、ここで中邑の怒りが爆発。“闘魂”が宿ったかのようなナックルパートで反撃に転じると、ロープにもたれかかるムタに対して、花道を疾走してのラリアット。これはかつてムタがドーム大会などの長い花道でたびたび使った得意技であり、中邑がムタのお株を奪った形だ。
勢いづく中邑は得意の跳びつき腕十字で勝負をかけるが、ムタは上半身を起こすと中邑の顔面に毒霧を吹きかけ脱出。勝負に出たムタは、すぐさまシャイニングウィザードを発射! これがカウント2で返されると、後頭部へのシャイニングから、正調シャイニングでとどめを刺しにいくが、中邑がカウンターのキンシャサで迎撃。なおもムタは毒霧を狙うが、なんと中邑は熱い口づけでムタの口を塞ぐと、そのまま“毒”を吸い取り、ムタの顔面に毒霧を逆噴射! 苦しみ悶えるムタの顔面にキンシャサを叩き込み、カウント3! 中邑真輔が愛と毒でムタを制した。
試合後、毒霧まみれの顔をぐしゃぐしゃにしながら勝利をアピールする中邑。ムタは無言で花道を去るが、中邑がマイクを握り「奇跡を……奇跡をありがとう!バイバイ、マイアイドル・ムタ」と述べるとムタも歩みを止めてリングを振り返る。
最後は中邑がムタに駆け寄り肩を貸して花道を下がり、「イヤァオ!!」と毒霧の共演でバックステージに姿を消すと、超満員の日本武道館は大きな拍手で包まれ、それはしばらく鳴り止まなかった。

バックステージに戻ると中邑は、涙を浮かべながらこれまで抑えていた感情を吐露する。
「マジでホントにこんな奇跡、神様じゃなきゃ仕組めないでしょ。言葉を出せば出すだけ、自分自身の感動が薄れていってしまうような感じがする。もう試合前からずっと押し殺してきたわけですよ、こういう感情はプロとして。でも、こういった完璧な奇跡のタイミング。元日の日本武道館。相手はザ・グレート・ムタ。最高の入場。たまんないっスね、マジで。奇跡をありがとうございました。
あんなデカかった壁が、なんら色褪せることなく、まだまだデカい壁でいてくれて。リング上でザ・グレート・ムタと最後に肌を合わせられたことがこの上ないよろこびと感激です。大好きだったんですよ、ガキの頃。まあ、武藤敬司は60歳で引退しますが、それに比べたら鼻タレ小僧ですから。まだまだ世界で闘っていこうと思います」
かくしてグレート・ムタとSHINSUKE NAKAMURAの奇跡の遭遇は、プロレス界に極上の芸術作品を残した。魔界の扉が閉じるまであとわずか。1.22横浜アリーナで、いよいよムタのラストマッチを迎える。
(C)プロレスリング・ノア
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