「原発活用」の政府大転換、しかし“核のゴミ”の処分場選定は道筋示されず… 若新雄純氏「誰がリスクを取るのかという話。実家の地下に造りたい」
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 去年12月、政府が大きな決断を行った。原発の再稼働、そして建て替えだ。脱炭素化を進めるため、最長60年としてきた運転期間を実質的に延長。さらに、廃炉が決まった原発を次世代型に建て替えることなど、新たな原発政策の方針を正式決定。基本方針には「将来にわたって持続的に原子力を活用する」と明記された。

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 その背景にあるのはエネルギーの安定供給と環境保護。2022年はロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー価格の高騰に拍車をかけたほか、電力の逼迫も問題に。さらに日本は火力発電に70%も依存していることから、気候変動対策を後退されているとして不名誉な「化石賞」を受賞したのだ。

 一方で気になるのが、安全性への不安や核のゴミをどう処分するかといった問題。そのスタートラインとも言える最終処分場の選定については「これまで以上に国が前面に立つ」としているが、具体的な道筋は示されていない。

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 日本のエネルギー政策は何を目指し、どう変わっていくのか?『ABEMA Prime 年越しSP』で専門家を交え議論した。

 「脱炭素実現に原発は不可欠」の立場をとる、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議メンバーで国際環境経済研究所理事の竹内純子氏。「東日本大震災前は温暖化対策を進めるため、当時の民主党政権が原子力発電所を10年で9基新設しようとしていた。さすがにこれは見直す方向になったが、ゼロにするのではなくて、依存度を低減させるということが言われていた。建て替え等を含めて、新しい技術を導入して新陳代謝をすることで、より安全性を高めていこうという方針転換をしたのだと思う」との見方を示す。

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 「GX実現に向けた基本方針(案)」で示されている、2030年代中頃~後半の運転開始を目標にしている「次世代革新炉」。その安全性について、「今の原子力発電所でも、地震の震度や津波、竜巻、内部溢水など、あらゆる場合を想定して規制基準は引き上げられていて、テロ対策も取られている。それらの大前提に加えて、仮に炉心溶融した時でも外に流れ出さないようにする受け皿『コアキャッチャー』を導入するなど、革新的な技術を加えようというものだ」と説明した。

 一方で、「気候変動対策で原発活用に否定的」の立場をとる、再生可能エネルギー政策で内閣府委員を務める都留文科大学教授の高橋洋氏。「革新炉については竹内さんが説明くださったことで概ねいいと思う。安全性が高まるのは間違いないと思う」とする一方で、「非常にコストが高い。フィンランドのオルキルオトで革新炉にあたるものを建設している。2005年から建設して、2009年ぐらいには運転開始するだろうという計画だったが、2018年に見に行った時は動いていなかった。2022年でもまだ運転していない。要するに、新しい炉なので建設にすごく時間がかかり、コストも高くなっていく。1基あたり4600億円と言われていたが、今は1兆2000~3000億円ぐらいの費用になっている。今から日本が造ろうとしてもコストの低減、電気料金の低減には寄与しないのではないか」と疑問を呈した。

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 核のゴミの問題について、竹内氏は「技術ではなく政治の問題だ」と説明する。「原子力発電所は少しの燃料でたくさんの電気を生めるので、ゴミの量は正直少ない。国内に1カ所だけ処分場があればいいが、それをどこが受け入れるか。しかも『核のゴミ』という嫌な言葉で表現されてしまっていて、日本はまだ決まっていない。政治的にすごく難しい問題であることは確かだが、技術的に困難があってできないということではない」。

 また、「政府が主導的に“ここら辺がいい”と言うのではなく、自治体から『受け入れてもいい』と言ってくれるのを待つのが大前提になる」という。「核のゴミ処分場と聞くと嫌なイメージがあるかもしれないが、北欧の例だと、研究者が集まってくる場所になるとか、さまざまなメリット・デメリットを比較考慮して受け入れを決めた自治体もある。日本では文献調査や地質の安定性の調査に応じてもいいと言っている自治体が北海道に2つある。それ以外にも関心を持つところがあるので、その中で議論をしながら、科学的な調査に進むのかどうかを待つかたちだ」とした。

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 これに慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「福井県若狭町で先祖代々、受け継いできた実家がある。それだけでなく、田んぼも畑も山も僕の名義になっていく土地があるので、できれば地下に最終処分場を造りたい。家の周辺は原発で囲まれているのに、立地自治体じゃないからお金は貰えない。だけど、どこかの原発で事故があったら、アウトという土地だ。町は貧乏で、ものすごく割を食っている。ただ、海があるので、少なくとも最終処分場の前の中間貯蔵施設を置くというのは相当合理的だ。何を言いたいかというと、電気を使いたいだけ使える生活、つまり良いリターンにはリスクがある。しかし、原発はリターンを全員が得るのにリスクがきっちり分散されていない。誰がリスクを取るのかという話なので、僕の提案は、うちが日本中の最終処分場を全部受け入れるので、電気料金を5倍にして使いまくってもらって、若新家に信じられないくらいのお金を永遠に入れてもらうこと」と大胆な提案をした。

■再エネも環境負荷? 目標の実現性は

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 政府は日本の電源構成のうち、2019年度に18%だった再生可能エネルギーを、2030年度は約36~38%に引き上げるとしている。再エネは環境に良いイメージがある一方、森林を伐採して太陽光パネルを設置することが環境破壊につながるのでは?という見方もある。

 高橋氏は「最近、特に太陽光に対する景観問題や森林伐採への反対運動が各地で起こっている。再エネを拡大していく上で、これは最大の問題だ。安定性やコストはほぼ克服できると見ているが、地域住民から反対されるということがある意味、原子力と同じような問題になってしまう。ここ10年弱ぐらいの間に太陽光発電が急に増えて、その中には不適切な場所に置かれていたり、地域住民と何の話もせずに運転が開始されていたりするという案件はあるのだと思う。そこは適切に取り締まっていくのがまず一つ。また、政府は法改正をしようとしているが、地域に対して事前に説明を義務付けること。そして、ゾーニングというが、自治体が『この場所は不適切なので建設しないでください』『この辺りなら建設してもいい』という区分けを徹底して、問題が起きにくい場所に誘導していくことが求められている」との考えを示す。

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 各国の再生可能エネルギーの比率を見てみると、ドイツは44%、イギリスは43%とすでに半分近い(2020年時点)。竹内氏は「こういう話になると必ずヨーロッパの国と比べるが、国の規模が全く違う。日本は海に囲まれている中で、これをどうしていくのかという話をしなくてはいけない。再生可能エネルギーには送電線と蓄電池が必須になる。太陽光発電は日が出ている時しか発電しないので、電気を夜にシフトしないといけない。風力発電も風が良いところは決まっていて、電気を移動させるために送電線が必要になる。ただ、蓄電池も送電線もそれ自体は電気を作るわけではないので、シフト機能しかないものに投資をしながら、再生可能エネルギーにも投資をしていかないといけない」と課題をあげる。

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 一方で、「日本は相当再エネが入っているということを前提にしてほしい」と指摘。「日本は電力需要がすごく大きい。要はたくさん使っているから再エネで賄う比率が少なくなってしまっているが、導入量でいうと世界で第6位だ。太陽光発電に限っていえば第3位。1位の中国、2位のアメリカはそれぞれ、国土面積で25倍の差がある。やはり日本は森林等が多いので、適した土地は限られてしまう。再生可能エネルギーはどうしても土地面積や太陽の日照、風といった条件に左右されるので、できなくはないけど向き・不向きがあることはちゃんと踏まえて議論する必要がある」と述べた。

 タレントの山崎怜奈は「島国だし地震大国だし、欧米と比べるのは前提条件が違いすぎるのはそのとおりだと思う。そもそも2030年に46%減、2050年に脱炭素というのが建て前なのか、理論上可能なのか、それから国際政治上、経済上可能なのかというところをどのように考えているのか」と尋ねる。

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 竹内氏は「鋭いご質問だ。温暖化問題に対する目標の立て方は、“2030年にはこれくらい減らせるだろう”“2050年にできるだろう”と足元から見たものではなくて、“問題が深刻だから2050年にはゼロにする必要がある”から入っている。私自身、カーボンニュートラルやエネルギーというインフラに携わっている人間としては、30年は全然未来のことではない。2030年まではあと7年で、7、8年では本当に変わるということはなかなかできない。話が少しずれてしまうが、再生可能エネルギーの導入量がわずか10年で倍になったのはすごいことだと思う。それぐらいインフラを作るには時間もかかるので、これは長期戦だと思って考えていただかないといけない」と答えた。(『ABEMA Prime』より)

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