将棋の囲碁将棋チャンネル 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局が1月28・29日の両日、石川県金沢市の「金沢東急ホテル」で行われ、藤井聡太王将(竜王、王位、叡王、棋聖、20)が挑戦者の羽生善治九段に勝利し、2勝1敗と白星を先行させた。将棋界のスーパースター同士が激突する大注目のシリーズ。次戦、第4局は2月9・10日、東京都立川市の「SORANO HOTEL」で指される。
歴史的建造物や豊な食文化、伝統芸能が魅力の文化都市・金沢対決は、令和の天才・藤井王将に軍配が上がった。本局は第1局で先勝を飾った藤井王将の先手番。羽生九段は出だしで角道を止め、居飛車・振り飛車両方の可能性を示唆した。「相手の出方次第という感じでしたが、この作戦は両方見せながら駒組みを決めるということ」と出だしから絶対王者に揺さぶりをかけた。
藤井王将は、「(居飛車・振り飛車の)どちらにも対応できる手を考えながら指していました」。細かな駆け引きののちに、羽生九段は「まだ未解決の部分もあるのかなと思って」と雁木模様に。藤井王将は急戦を仕掛けてねじり合いへと進行した。
超難解な中盤戦に突入すると、藤井王将が長考を重ねて緊張感を漂わせた。羽生九段が前日に封じた50手の開封で対局が再開されると、盤上はより一層緊迫していく。羽生九段は、藤井王将の攻撃をかわすように中段へと玉を上げた。終局後には「自陣にいっぱい駒がいるので、入玉というよりはちょっと攻めを緩和するという意図で指していたんですけど、なかなかまとまりきらなかった気がします」と振り返った羽生九段。強く攻勢に出た藤井王将がペースを掴むと、幅広い選択肢の中から慎重に指し手を選び、リードを拡大させていった。
じわじわと劣勢に追い込まれた羽生九段も、連勝を目指すべく簡単に折れる訳にはいかない。随所で工夫を見せ、終盤では先手の桂馬に狙いをつけ反撃を繰り出したが、藤井王将は揺るがず冷静。緩急自在の指し回しを見せた藤井王将が押し切り、2勝目を手にした。
快勝を飾った藤井王将は、「角と金を交換したあたりがどういう構想で指すのかが非常に難しくて、わからないところの多い将棋だったなと感じています」と総括。敗れた羽生九段は、「封じ手が良い手ではなかったかもしれないです。ただ、代わりに何をやるというのは難しいので、あの辺のまとめ方に問題があったように感じます」と振り返った。
シリーズは中盤戦へ。第4局の開催地、東京・立川は藤井王将が前年に王将位奪取を決めた思い出の地だ。次局で初防衛へ王手をかけたい藤井王将は、「第4局の前に何局か対局があるので、それらの対局も含めて状態を維持して第4局に臨めるようにしたいなと思います」、先手番で再び追いつきたい羽生九段は「気持ちを切り替えてまた次に臨みたいと思います」とそれぞれ次戦を見据えた。
藤井王将は、中2日の2月1日には順位戦A級8回戦で永瀬拓矢王座(30)戦、さらに2月5日からは渡辺明棋王(名人、38)に挑戦する棋王戦五番勝負が開幕と重要対局が目白押しとなっている。ますます混戦が予想されるシリーズから目が離せない。
(写真提供:日本将棋連盟)