「ハッキリ言って、ストロングスタイルを壊したのは武藤ですよ」
 これは“格闘王”前田日明が、武藤敬司について語った言葉である。ここで言う「ストロングスタイル」は、「猪木プロレス」と言い換えてもいいだろう。感性の鋭い前田の言葉は本質を突く。時代が昭和から平成に移り、武藤は新日本プロレスのリング上から「猪木プロレス」を消した。すなわち、あの時代の新日本を猪木色から自分の色に変えることができた唯一の男が武藤敬司だったということだ。