「書類は改ざんするから」海外で無許可臓器移植、NPO法人と医師が結託か? 手術直前だった当事者が明かすあっせんの裏側
【映像】キルギスで生体移植寸前だった当事者に聞く! 海外移植あっせんの舞台裏
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 7日、臓器移植法違反の疑いでNPO法人「難病患者支援の会」理事が逮捕された。

【映像】海外で腎臓移植手術…価格は? 小沢さんの場合(※一覧画像あり)

 理事は一昨年の11月から去年の2月にかけて肝硬変を患っていた40代の男性に肝臓移植を勧め、紹介状を作成。移植費用3300万円をNPO法人の口座に振り込ませた後、ベラルーシで手術を受けさせ、海外で臓器移植を国の許可なくあっせんしたとみられている。

 40代の男性はベラルーシの病院で亡くなった人から肝臓移植を受けたが、手術後、体調が悪化。日本に帰国してから死亡したという報道もある。理事はあっせんしたことを認める一方「海外での移植は許可がいらないと思った」と容疑を否認している。

 世界的に見て臓器提供者数が圧倒的に少ない日本。なぜ、臓器移植が進まないのか。ニュース番組「ABEMA Prime」では、実際に臓器移植を望み、一度はウズベキスタンへと向かった当事者と共に考えた。

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 腎臓移植のため容疑者のNPO法人に相談した経験がある小沢克年氏は、今も人工透析を続けている。

「話を聞くと手術を受けた皆さん、泣き寝入りをしている方ばかりだ。私のケースは特殊で、医者が間に入っていた。医者とNPO法人が手を組むと、どんどん被害者が出ると思って今回告発する立場になった」

 容疑者とはどのような経緯で知り合ったのか。

「一昨年の10月頃、私がラグビーを教えていた大学に関係している准教授の医師から連絡があった。その大学の副学長に『小沢さんのことを相談された。私なら力になれる』とアプローチされた。実際にクリニックに行ったら、東京の一等地にあって、直接ドクターから話を聞いた。現役の医師がいるなら、間違いないだろうと思って、お願いした。結果、手術を受けるためにウズベキスタンに行くと、容疑者たちがいた」

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 直前に手術地がウズベキスタンからキルギスに変わり、やめて帰ってきた小沢氏。現地で何があったのか。

「キルギスで先に4人、同じ腎臓移植の手術を受けていた。日本人が1名と、アラブ人が3名の計4人だ。そのうち2名が亡くなって、1名が意識不明の重体。3〜4日後くらいに、なんとか意識は戻っていたが、半死半生の状態だった。それを見て『これはダメだ』と思った。そもそも、事前の話と違うことだらけだった」

 小沢氏は、当初「ウズベキスタンの国立病院で手術する」と聞かされていた。もちろん合法かどうか、何度も確認したという。

「いざウズベキスタンに行ったら隣国の『キルギスの国立病院でオペをやる』と言われて、渋々移動したら、町の不衛生なクリニックだった。現地の待合室では『ドナーの女性がいた』と知らされ、脳死患者からではなく、生体移植だった。完全に違法だと思ったからやめて帰ってきた。当時、今回の容疑者からは『書類を改ざんするから安心しろ』と言われた。あの世界はなんでもありだ」

 総額2300万円が必要で、手術を取りやめても「約1000万円は戻らなかった」と明かす小沢氏。話を聞いた、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「臓器移植ツーリズム自体、世界中でやめようといった動きがある」と指摘する。

「例えば、海外で臓器移植を受けた1人の日本人が生き残ったとする。でも、その臓器は現地の国の誰かが受け取れないことになる。金の力で外国の臓器を買うことが現実で起きていて『それは良くないから、各国内でちゃんと臓器を賄うようにしよう』となった。特にオランダは、臓器移植は自動登録だ。『嫌だ』と言わない限り、臓器移植されちゃう。日本も国内で賄うようにすれば、こんな詐欺はなくなると思う。小沢さんの話を聞いていると、NPO法人が『たまたま悪いことをした』ではなく、悪いことをする前提でいろいろな準備を積み重ねてやっている感じにしか聞こえない」

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 小沢氏は、別の団体にも話を聞きに行ったこともあったという。

「その団体はメキシコで移植を受ける形だった。死んだ人からではなく、生体からの移植だと言われた」

 なぜメキシコには行かなかったのか。

「そもそも、お金をそんなに持っていなかった。ラグビー部の教え子が募金してくれたお金だから『すべてが終わったら全部開示して、報告する義務がある』と言ったら、その団体はフェードアウトした」

 海外で臓器移植を望む背景に、日本国内で臓器移植がすぐに受けられない現実がある。日本では、臓器移植を希望者約1万5000人に対し、年間で臓器移植を受けた人は約400人(2~3%)という低い数字だ。

 「医療の翻訳家」としてメディアなどで発信している医療ジャーナリストの市川衛氏は「日本は臓器提供をする人が本当に少ない」と語る。

「数自体が少ない中で、移植を受けたいとき『お金さえあればどうにかしてあげる』という人が存在する。それこそ小沢さんのように『海外で移植を受けられるらしい』という噂を患者さん同士で共有したり、治療に関わっている方の一部が『実はあっせんしてくれる人を知っているよ』と言って紹介したりするケースが多い」

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 20年間、逮捕者が出なかったのはなぜなのか。

「手術は海外で行われるから、決定的な証拠を掴むのが難しい。患者さん側もいわばその正規のルートではないところで受けるので、なかなか声を上げにくい。『お金を積んで海外でも手術を受けたい』という気持ちも分かるから、刑事事件として摘発してルートを塞いでしまうのも『そこまでやるべきか?』と思ってしまう。だから、これまでなかなか摘発には至らなかった」

 今回摘発に動いたのは、どのような意思決定があったのだろうか。

「今回のケースに関しては、明らかに重体な人が出てしまっている。報道で見た限り、禁じられている死体からの移植を示すような証拠もある。それが大きかったのだと思う」

 団体から「合法だ」と言われても、実は違法だったケースは多いのか。

「実態が分からない。これが一番の問題だ。誰もその実態を把握していない。騙されている割合も、移植が成功している割合も全く分からないのが今の状況だ。移植された臓器は体の中で言えば“異物”になる。自分の臓器として使い続けていくためには、いわゆる免疫を抑えるような薬を日本の病院でもらって継続的に使う必要がある。実際、医療機関の話では『どこで移植したのか?』と患者に聞いても『それは答えられない』というケースがあると聞く。個人のプライバシーだから、どこで手術をしたか強制的に聞くのは難しい」

■ 「脳死=死ではない」ドナーが増えない日本の背景…移植を待つ側の葛藤も

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 日本では、ドナーの状態で提供できる臓器が変わってくる。心臓が止まってからでは提供できる臓器が少なく、提供できる臓器が多い脳死の状況では、なかなか提供者がいない。待っていてもなかなか回ってこない状況をどう感じているか。小沢氏は「僕も答えが正直分からない」と葛藤を明かす。

「僕は腎臓が必要な体で、その立場でドナーが一人でも増えてくれればいいと思っている。同時に私にも子どもがいるので、もし子どもが脳死になったら『心臓は動いているが、臓器を提供できるか』と聞かれても、できないと思う。これを聞かれるのが一番困る」

 アメリカでは100万人当たりの提供者数が41.88人いるのに対し、日本は0.6人と桁違いに低い。これはなぜなのか。

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 市川氏は「日本は原則的に、脳死を人の死とは認めていない。海外から見て、非常に特異で、変わっていると思われている」と話す。

「日本の場合、基本は心臓が止まったときが“死”だ。脳死は、通常の死とは認められなくて、臓器移植のために判定が行われて、初めて『脳死は死である』と判断される。ガイドラインが非常に厳しい」

 アメリカではなぜ多くの臓器移植が行われているのか。

「背景としてよく言われるのは、いわゆる医師が脳死とある患者さんを判断した場合に、必ず移植コーディネーターにその旨を伝えなければならない制度が存在する。最初は批判があったが、でもこれによって、まず脳死と判断されたご家族は、一旦そのコーディネーターの話を聞くことができる。他にもさまざまな要因はある」

 日本ではなかなか臓器提供を受けられない現実があるが、どう考えていくべきなのか。

 ひろゆき氏は「最初から臓器移植は、OPTING OUT(事前の拒否表示がない限り臓器提供を許諾したとみなす方式)にしていいと思う」と述べる。

「OPTING OUTの国も、その現場で家族が止めたら、臓器移植をしない国もある。オランダの場合、2回手紙が届いて、2回とも無視すると、臓器移植賛成になる(※対象は18歳以上の成人)。でも、それは自分が無視したのだからそれはしょうがない。そっちの仕組みにした方がいい」

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 その上で、ひろゆき氏は「日本で臓器移植を受けたい人は小沢さんだけではない。1万人以上いる。そういう人たちがもっと表に立って『臓器移植が必要だ』と言うべきだ。『こんなに多くの人がいるんだ』『この人を助けたい』となる。こういう番組に出てもっと喋るようになったらいいと思う」とコメント。

 番組の最後、小沢氏は「厚労省に伝えたいこと」として、こう主張した。

「海外で移植を受けるのは絶対悪ではない。実際に私は最初合法と聞いて行ったし、中には国策として受け入れている国もある。例えば、日本人が2000万円払って移植手術を受けると、自国の3人ぐらいが無料でオペができる。海外で移植を受けて日本に帰ってきた人を、ちゃんとケアできるようにしてほしい」

(「ABEMA Prime」より)

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