“セカンドレイプの町・草津”と不名誉なレッテル…「性被害告発」は実態も証拠もなかった? メディアの責任と課題
【映像】性被害告発はウソだった? 残された被害どう払拭? 疑惑が晴れた草津町長が生出演
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 日本有数の温泉地として知られる群馬県草津町。のどかなこの町が3年前、世間を大きく騒がせたことを覚えているだろうか。

【映像】「ウソの証言で刑事告発まで…」“支援する会”会長が怒りのSNS投稿(画像あり)

 発端は2019年12月、当時町議だった女性が町長の黒岩信忠氏から「町長室でセクハラを受けた」と告発した。一方、当初から黒岩氏は疑惑を真っ向から否定。2021年、女性は強制わいせつ容疑で町長を告訴したが、嫌疑不十分で不起訴になった。

 黒岩氏も名誉棄損などで女性を告訴。女性は在宅起訴となった。こうした中、これまで女性を支援してきた団体が、先日解散を発表した。

「嘘の証言をし、あまつさえ刑事告発まで行って、黒岩信忠町長の名誉を深く傷つけたこと、そして支援者にも嘘を言い続け、支援者と世間を欺き続けたことを、まずは真摯に謝罪するべきでしょう」(※「支援する会」会長のFacebookから)

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 「支援する会」は女性の証言を信じたことを謝罪。しかし、世界中で報じられたこの騒動で、草津町は大きな痛手を負った。

 「“セカンドレイプの町・草津”と非常に侮辱的な文言により世界に拡散された」「草津ブランドを傷付けられ、信用を陥れられた行為、これは許すことができない」(黒岩町長 ※発言は去年11月)

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 ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した黒岩町長は「日本外国特派員協会の記者会見も仕組まれていたように感じる」と振り返る。

「本来なら、女性から性被害について説明して、後日、加害者であるとされた私が弁明をするパターンだ。しかし、全く逆だった。いきなり私に『出演してほしい』と言われ、あまり意味も分からず出た。私もあまり英語は詳しくないが、きちんとした翻訳がされていなかったという話も聞く。告発した女性のときは私の2倍以上の人が集まっていて、悲劇のヒーローのように入場時、拍手で迎え入れられた。私は最初から犯罪者扱いのひどいインタビューを受けた。それが世界に飛び火をした」

 当時、フランスの記者から電話インタビューを受けた黒岩町長。

「日本がまだ女性を蔑視して、そういう意味で“後進国”であるとされた。日本には日常的に性暴力を繰り返す政治家がいると、国そのものまでバカにされた気がした。強い怒りを感じたし、本当にネット社会は怖いなと思った」

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 告発当時を黒岩町長はこう振り返る。

「告発は、2015年1月8日に私がレイプしたという話だ。しかし、これが公開されたのは、2019年11月15日だ。もう5年に達しようとするときに、突然、電子書籍で私に犯されたと主張した。こちらとしても面食らって、何を言っているのか、驚きだった。私は直ちに警察と顧問弁護士に連絡をとった。新聞社の記者で何人か知り合いがいて、話をした。それから1〜2日経ったら、多くのマスコミが草津町に押しかけてきた。町長室の間取りから何まで全部を撮られた。ガラス張りの町長室はいつでもドアが開いていて、すぐ側には副町長室や総務課がある。朝の10時に性交渉があれば、誰もが気づかないはずはない。最初から全員が嘘だと見抜いていた」

 しかし疑惑が晴れるまで結果的には3年の時間が掛かった。

「本当に女性が性被害に遭ったとき、この事件になぞらえて、声をあげづらくならないか。それを最初に懸念した。草津町としては、屈辱の3年間であった。私自身の名誉より、まず草津町そのものが風評被害を受けた。SNSで『草津に行くのをやめよう』というハッシュタグが貼られたり、役場の周りに来た女性たちに『町長出てこい。やめろ』と街宣がかけられたりした。湯畑という草津の中心で、フラワーデモが行われたりして、草津町としても本当にひどい目に遭った。検察官に対しては感謝をしている」

  えん罪の救済や研究を行う、元裁判官の弁護士・西愛礼氏はこの事件をどう見ているのか。

「虚偽告訴罪は、有罪をいつも立証している検察官が、逆にえん罪であることを立証しないといけない。立証はとても難しい。その難しさから“悪魔の証明”と呼ばれているほどだ。客観的な証拠がどうしても必要になってくる。今回、録音データが最終的には決め手になっている。それを聞けば白黒はっきりするはずだ」

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 面談時の音声データについて、告発した女性は「最初の15分しか録音できていない」と主張、肝心の部分は「町長が近づいてきたので音声を切った」としている。その後、検察は押収したパソコンからデータ全体を復元。関連裁判で1時間の録音データを提出した。内容を聞くと、面談中の2人の会話が途切れずに継続しており「強制わいせつ行為が起きていないのは明らか」としている。

 黒岩氏は「テープの内容は私自身ももちろん覚えていなかった」とした上で「パソコンは検察が令状を取って差し押さえられたものと思われる。告発した女性が捏造することは絶対にできない。これほど決定的な証拠はないと思う」と話す。

 仮に虚偽告訴罪だった場合、賠償責任はどうなるのか。西氏は「名誉毀損で民事の損害賠償を提訴されていると思うが、法律上は限界がある。お金で解決できる部分は限られていて、一度汚されてしまった人のイメージや名誉はなかなか回復できない」と話す。

「法律家としてきちんと解説しておきたいが『告訴が間違っていたから虚偽告訴罪だ』という話ではない。例えば満員電車の痴漢で『この人が痴漢です』と言って、間違えていた時に、虚偽告訴罪にはならない。示談目的で『この人を犯人に仕立てあげよう』としたときに、この虚偽告訴罪が問題になってくる」

 女性が2015年の被害を2019年になって告発したタイミングについて、コラムニストの河崎環氏は、こう分析する。

あの頃のメディアの空気は#MeToo運動が盛り上がっていた。日本でも海外でも、とにかく性被害を受けた女性たちの声にメディアが寛容すぎた。どう吸い上げて報じていくのか、反省していくべきだ。メディアが好きそうな被害者と加害者の図に甘んじていて、良かったのか。『女性は必ず被害者である』といった姿勢で切り込んでいくのは偏向で、決して平等な姿勢ではない」

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 その上で河崎氏は「黒岩さんのいうように性被害に遭っている女性が『どうせお前も虚偽だろう』と言われかねない。女性にとっては声をあげづらくなって、大変な迷惑だ。告発した女性にもいろいろな事情やきっかけ、動機があったのだろうが、他の女性を貶めることになっている。全く共感が持てない」とコメントした。

(「ABEMA Prime」より)
 

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