放送法をめぐる文書問題 「多面性」と「ナラティブ」で見えてくる情報発信の本質
「多面性」と「ナラティブ」で見えてくる情報発信の本質とは
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 もしも、一つひとつのテレビ番組や記事が「政府にお伺いを立てなければいけない」としたら…。

 視聴者は心から楽しめるのだろうか。あるいは、メディアはその役割を果たせるのか。

 現在、放送法の「政治的公平」の解釈をめぐる文書 に注目が集まっている。

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 焦点の一つになっているのは、政府が長く「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する」と解釈してきたものを「たった一つの番組でも『明らかに逸脱している。問題がある』と認められれば政府がメディアに干渉できる」、というものだ。

 これに対し、ジャーナリストで白鴎大学名誉教授の後藤謙次氏は、「メディアを自分たちのコントロール下に置きたかったのでは」と見解を述べている。

放送法をめぐる文書問題 「多面性」と「ナラティブ」で見えてくる情報発信の本質
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 ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、磯崎氏が放送法の新たな解釈について総務省に働きかけていた件について、ビジネス映像メディア「PIVOT」チーフ・グローバルエディターの竹下隆一郎氏に聞いた。

「1つの番組にここまでプレッシャーをかけるのは相当おかしなことだ。非常に神経を尖らせている。理解できない」

 行政文書の中では「視野の狭い話」「言論弾圧ではないか」という指摘もあったが。

「本当にそう思う。コメンテーターはそれぞれ複雑で多面的な考えを持っています。例えば、安倍元総理をめぐる評価についても『外交面では良いが、国内の政策に関しては疑問がある』など一言で『良い・悪い』と片付けられないと考えることもでき、多様な考えを複数の番組や複数の視点で検証するのが言論だ。そういった議論をしているので、そもそも1つの番組や限られた時間のなかで語られたコメントで判断できない」

 「多面的」というキーワードに続いて、世界に目を向けたときに肝になるが「ナラティブ(物語・語り・文脈)」だと竹下氏は強調する。

「世界では一種の言論戦争が起きている。例えば、中国のIT企業を好意的に報じれば、「中国はイノベーティブで先進的だ』という中国側のナラティブに乗っかることになる。あるいは『西欧的な民主主義の国よりもコロナをうまく終息させた』と言えば、こちらも中国に有利な物語に寄り添うことになる。フェイクニュース、ディスインフォメーションの課題もある。映像のフェイクも作られている。SNSを通して色々なナラティブが国境を超えて入り乱れている。民主主義的な国と権威主義な国家のナラティブも世界の言論空間ではこれからぶつかっていく。ある意味、国の防衛に関わる。(国内のメディアの言論の自由を守るという大原則をふまえた上で)、もっと世界のことも議論するべきだ」

(『ABEMAヒルズ』より)

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