初代女王が、団体戦の栄冠も取りに行く。女流棋士による早指し団体戦「女流ABEMAトーナメント2023」1回戦第1試合が3月11日に放送された。開幕戦は、伊藤沙恵女流三段(29)率いるチーム伊藤と、西山朋佳女流三冠(27)のチーム西山が激突。大激戦の末に、チーム伊藤が5勝3敗で勝利し、決勝進出を決めた。
前回準優勝の難敵・チーム西山を相手に、チーム伊藤が結束力を見せつけた。香川愛生女流四段(29)と上田初美女流四段(34)の経験者を自軍に迎えた伊藤女流三段。初戦はリーダー自ら出陣し、初出場の鈴木環那女流三段(35)から先勝を持ち帰った。続く第2局も、香川女流四段が山根ことみ女流二段(25)に勝利。幸先の良い連勝スタートを切った。
しかし、チーム西山もそう簡単には星を渡せない。ピンチの状況で西山女流三冠が登板すると、上田女流四段、香川女流四段に連投連勝を飾り、あっという間にイーブンに追いついた。前回大会でも11勝1敗と圧倒的な力を見せつけており、今大会でもその“剛腕”ぶりは健在だった。
仕切り直しの5番勝負となった第5局では、上田女流四段と山根女流二段が対戦。先手の山根女流二段が四間飛車の出だしから快調に攻めて上田女流四段は劣勢に追いやられていたものの、終盤戦で先手が二歩反則負けに。チーム伊藤は思わぬ形で待望の白星が転がり込んできた。続く第6局は、「この将棋だけは勝たないと」と奮起したチーム西山の鈴木女流三段が相穴熊戦に勝利。仲間のミスを帳消しにし、再び3勝3敗の同星に並んだ。
勝負は終盤戦の第7局へ。勝負所と見たか、伊藤女流三段が第1局以来に登場。山根女流二段との対抗形の一局に、丁寧な指し回しを見せた伊藤女流三段が勝利し、決勝進出へ“王手”をかけた。
勝利へあと一歩となった第8局では、これまで個人1勝1敗の香川女流四段が登板。前回大会では加藤桃子女流三段(28)率いるチーム加藤のメンバーとして優勝を経験しており、個人連覇のためにはこの勝負所を何としてでもものにすべく「ここで終われるように頑張ります」と出陣した。鈴木女流三段との対抗形の将棋を制し、決勝行きを決めた香川女流四段は「決勝行けますね!また3人で戦えるのが嬉しい。拍手してもらいたいです!」と満開の笑顔を咲かせていた。
第1回大会以来2度目の優勝を期す伊藤女流三段は、今度は仲間と立つ決勝の舞台とあり、喜びもひとしおの様子。「自分が将棋指しているときはもちろんですけど、チームメイトのお二人が指しているのも夢中で見ていたので、あっという間に時間が過ぎ去っていましたね。将棋の面だけでなく、精神的にも助けていただきました。ものすごく良いチームメイトを選べたと思う」と心強い仲間に感謝の言葉を寄せた。
目指す先は優勝のただ一点のみだ。「チーム西山の皆さんはすごくお強い。そのチームに勝ててすごく自信にはなりましたが、倒したからには優勝しなければいけない責任がある。また3人で全力で戦っていきたい」。柔らかな笑みの中で、口にした「責任」という二文字。チーム西山の思いも背負い、決勝の大舞台へと向かう。
◆女流ABEMAトーナメント 第1回大会は個人戦、第2回大会から団体戦になった。第3回の「2023」は4人のリーダーがドラフトで2人ずつ指名、3人1組のチームを結成し、トーナメントで優勝を争う。持ち時間は5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は5本先取の9本勝負で行われ、第5局までに必ず全員が1局以上指さなくてはならない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)