「かすめても、かすっても倒れる」その迫力に実況が驚いた重量級らしい劇的なKO決着。劣勢の予想を吹き飛ばす気迫のローの連打。「最強を倒した男」の穴を露呈させる戦いぶりを受け、敗者の大善戦に惜しみない賛辞が送られた。
3月12日に国立代々木競技場 第一体育館で開催された「K-1 WORLD GP 2023 ~K’FESTA.6~」。谷川聖哉(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)とステファン・ラテスク(ルーマニア)の対戦は2ラウンド終了間際、追い込まれたラテスクがカウンターの左フックでKO勝利。敗れたものの、序盤の大劣勢を徐々に盛り返しラテスクを追い込んだ谷川のガッツと大健闘に称賛の声が相次いだ。
昨年末、初登場にしてK-1で無双してきたマハムード・サッタリを倒し大きなインパクトを残したラテスクと、海外武者修行で腕を磨いてきた谷川。
ゴングとともにラテスクの強打に襲われる谷川。ボディフックに身体が浮きグラつく姿に「もうダメだ…」「骨格が違いすぎる」など、ファンからは早くも悲観的な声が並んだ。その後、ラテスクの振り回すフックを受け前のめりになってリングに手をつき、ダウンを喫する谷川。試合再開後も嵐のようなパンチのラッシュにガードするのがやっとの様子。
実況が「まだ1ラウンド2分もあります」とアナウンスするほどの絶体絶命のピンチ。しかし谷川は重いボディフックに耐えながらジワジワと前に出始める。すると序盤から猛ラッシュをみせたラテクスの勢いがやや失速。一方の谷川はパンチをガードで受けながらもローキックを振り抜いて逆襲に転じた。
2ラウンド、肩で息をするラテスクに、谷川が至近距離から前蹴り、ロー。さらにクリンチからローなど、粘り強い攻撃を見せると、ラテスクの表情が曇りはじめる。「足が効いてるな」と視聴者の絶望の声が期待へと変わった次の瞬間、谷川がラテクスをコーナーに追い込みパンチのラッシュからヒザを叩き込む。
場内のボルテージが一気に上がる中、苦しくなったラテスクは余力を振り絞るように体を密着させ、豪腕の左カウンターから最後は右を谷川のテンプル付近へと叩き込んだ。終始劣勢の中、勝利を目の前まで手繰り寄せた谷川だったが、ラテスクの強打を受けロープ際でダラリとヒザをつき脱力、コーナーサイドでロープに持たれるように相手に背中を向け、腰から崩れ落ちた。
最後まで諦めない谷川の戦いぶりに視聴者からは「惜しかった」「よくやった」「もう1ラウンド持てば行けたのに…」と健闘を称える声と勝利を逃したことに対する悔しさが滲んだ。
KOシーンをスロー映像で振り返った実況は「これが重量級。かすめても、かすっても倒れる」と改めて重量級の一発の怖さについて言及。さらにゲストでお笑いコンビ・鬼越トマホークの坂井良多は「ラテスク無敵状態になるのかと思いきや谷川選手が穴があることを見せてくれた。(この階級は)戦国時代になりそう」と海外勢が猛威を振るうK-1クルーザー級の勢力図に風穴を開け、希望の光を灯した谷川の健闘ぶりを讃えた。