女性研究者の割合が飛びぬけて低い日本。妊娠・出産は研究者としてのキャリアの初期と重なることもあるが、研究の業績で評価される厳しい世界でもある。そうした女性研究者に必要なサポートは。
【映像】唐揚げ2キロ作り置きして学会のため渡米 3児シンママ研究者の工夫とは
主要国における「研究者に占める女性の割合」のグラフを見ると、ラトビア50.6%、イギリス39%、アメリカ34%というなか、日本は17.5%とOECD諸国の中で群を抜く低さだ。
ネックとなっているのが、妊娠・出産による時間のハンデや、心身への負担。子育て中の教育学研究者・西郷南海子さんに、女性研究者に“立ちはだかる壁”について聞いた。
西郷さんは、京都大学在学中に3人の子どもを出産し、2020年に博士号(教育学)を取得。離婚を経てシングルマザーとなっても研究を続け、3月にはアメリカでの学会に出席した。
研究者にとって重要な意見交換の場である学会への参加。しかし、海外ともなれば数日間家を空けることに……。学会の準備以外にも子どもへのケアも欠かせない。懸案事項は多々あるが、「行く」と先に決めない限り、出張の条件は永遠に整わないといいます。
西郷さんは頼れる親戚もいなかったため、まずは知人のなかで、泊まり込みで子供たちの面倒を見てくれる人を探し出した。加えて、「いくつかの工夫」を凝らした。
「学部生の頃からたまに海外行く機会があった。その時、子どもは幼かったので『ママは5日で帰ってくる』と伝えても、『いつかってなに?』とわからない。だから5日分のお菓子を新聞紙に包み、ひもからぶら下げ、“一晩頑張ったら1個食べられる”というふうに会える日が近づいていることを見てわかるようした」
また、自分たちのことはできる限り自分たちでできるようにしてほしいという思いから、温めればすぐに食べられる唐揚げ2キロ分を大量に作り置きしたという。
子どもたちは寂しい思いを抱く一方で、学校で友達に“母親の海外出張”について自慢するなど、シンママ研究者のカッコよさをその背中から感じ取っているそうだ。
とはいえ、「自分のような研究者は一握りだ」と話す西郷さん。結婚・出産を機に研究者としてのキャリアを諦めるか、ある程度の実績を残した後に出産するケースが多いという。西郷さん自身、実際に焦りを感じたことも――。
「大学院の時は、周りがすごく研究が進んでいるように見えて、自分は何か置いていかれているような、何周遅れだろうという気持ちになることも実際よくありました」
第3子を産んだ直後は、おんぶしながら修士論文を書いていたという。
では、妊娠・出産による心の焦りを払しょくするには、どのようなサポートが必要なのか。西郷さんの場合は、指導教員の存在も大きかったという。
「理系で研究室を離れられないような実験をされている方から『子育てはかなり致命的なダメージになる』と聞いている。指導教員など上の立場の人が『そういう生き方もあるね』と認めてあげないと何も始まらない」
厳しい環境に思えるが、研究者は会社員よりも時間の調整が可能な場合も多く、子育てしながら続けていくのに適した面もあるという。
「短期決戦じゃなくいかに粘るか。めちゃくちゃ鍛え抜かれた人しか残れないとかではなくて(研究者は)普通の職業の1つとしてあっていいと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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