ゼレンスキー大統領と初めて対面した岸田総理。ウクライナの電撃訪問は“なぜこのタイミング”だったのか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』は、東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介氏に話を聞いた。
ウクライナを電撃訪問した岸田総理のスケジュールは、20日夜にインドのニューデリーホテルを極秘で出発。21日の午前9時半ごろ、ポーランドのプシェミシル駅から列車でウクライナへ。同日の午後7時にキーウに到着し、深夜にゼレンスキー大統領と会談を行い22日に共同会見を行った。
岸田総理の電撃訪問について、西田氏は「インド外遊後のタイミングが怪しいという指摘はあった」と語る。
「この日程が怪しいことは永田町やメディアではかなり前から指摘されていた。ただ、実際に行くとなると秘密保持や危機管理など様々な課題があった。戦争状態にある紛争当時国に日本の総理大臣が直接足を運んだというのはほとんど例がない。驚きをもって受け止めている」
G7首脳陣の中では岸田総理だけが訪問していなかったことも関係しているのだろうか。
「警備に対して『万全の準備をした』と話していたが、自衛隊が同行することもできず、普通に考えてかなりリスクの高い判断を行っている 。国際的な事情と国内の状況の両方を見ながらも、最後は総理が政治的に決断したのではないか。国際的な事情で言うと、G7加盟国で日本だけが訪問していなかったことに加えて、岸田総理が今夏のG7広島サミットにおける議長国であることなどを総合的に判断して『行くべきだ』と決断したのだろう。
国内の状況においても統一地方選挙が近いことがある。岸田総理は自民党総裁を兼ねている。回復傾向にあるとはいえ、基本的に低い状態の内閣支持率に何かしらの“テコ入れ”が欲しかったはずだ。『決断ができない総理だ』と言われてきたからこそ、ここぞというタイミングで決断した姿をアピールしたい考えはあったはずだ」
「岸田総理はこれまで国政選挙に予想以上に勝ちを重ねてきた。次の統一地方選挙でも結果を出していくことで足場を固めることができると考えているのではないか。そのために、内省的にもリスクをなるべく排しておきたかったはずだ」
また、西田氏は、直接訪問をすることの“もう一つの意味”についても考えを述べる。
「日本の世界における実質的ポジションに変化はないと思われるが、リスクをとって連帯する“象徴として会いに行く”ことはとても大事だ 。岸田総理は外務大臣の経験が長く、外務大臣と防衛大臣を兼務したこともある数少ない政治家だ。そういった強みを国内世論にPRしたかったはずだ」
今回のゼレンスキー大統領との会談では「両国の関係を特別なグローバルパートナーシップに格上げ」「エネルギー分野などへ4億7000万ドルの無償支援」「NATOの基金を通じて3000万ドルの殺傷能力がない装備品の支援」「ゼレンスキー大統領のG7広島サミットへのオンライン参加」などが合意された。また、ウクライナとの共同声明では「ロシアの即時かつ無条件撤退を要求する」としている。
西田氏は「支援内容は従来の延長線上」としつつも、足を運んだことについて「意味はあった」という。
「G7の国はすべて自由民主主義の国だ。G20になると民主主義ではない国も入っているが、足を運んだことでG7が一致団結し、日本も議長国として国際的な連帯を示す“象徴的な役割”は重要だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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