「仕事ができない」とレッテル貼り 他の人へ仕事のしわ寄せも…“大人の発達障害”のリアル
【映像】大人になってから発達障害に 当事者の”働きづらさ”
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 今、ある漫画がTwitter上で話題となっている。飲食店で働く1人の女性。料理を運ぶことが苦手だったり、言われたことをすぐに忘れてしまうことがあり、同僚から「あいつヤバイよね」「アレと同じ時給とかありえないんだけど」などと陰口を叩かれる。「他の仕事なら…」と思い切って転職するも、そこでも人間関係がうまく築けず退職に追い込まれてしまう。

【映像】大人になってから発達障害に 当事者が感じた”働きづらさ”

 漫画のタイトルは『生きづらい私は発達障害でした』。この主人公と同じように社会人になるまで発達障害と気づかず、職場で困難を抱え苦悩する人たちがいる。漫画の読者からは「私と同じような体験をした人がいるのだと目頭が熱くなった」「発達障害のことがもっと世の中に知られ理解が広がってほしい」など多くの反響が寄せられている。

 発達障害者を含め、働く障害者の数は年々増加。一方で、職場で不当な扱いを受けたなどの相談も後を絶たない。また企業からは、「彼らにどういった仕事を任せればいいのか」と困惑する声もあがる。

 発達障害者が実際に感じている“働きづらさ”とは? 当事者や現場を知る識者とともに、その課題を考える。

「仕事ができない」とレッテル貼り 他の人へ仕事のしわ寄せも…“大人の発達障害”のリアル
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 発達障害と診断される人が増えている現状について、発達障害者などの就労支援企業Kaien代表の鈴木慶太氏は、「2022年に文部科学省が出した、発達障害と明確にはされていないが“学校で気になる子”の割合が8.8%。10人に1人くらいの傾向があると考えておかしくない」と分析する。

 では、当事者から見た実情はどうか?

 大学を卒業し、保育士として働くなかでADHD(注意欠如・多動症)と診断されたほなみさん(20代後半)。働くうえでのつらさ、難しさを「子どもの動きや他の先生の動きを見て察し、自分で考えて動かないといけないことがとてもしんどかった」と語る。

 ミスが続き、上司から暗に退職を迫られて転職。一方で、現在の訪問介護の仕事は5年以上継続している。「今の仕事は利用者によってマニュアルが違い、そのマニュアルをそれぞれの人に合わせてきちんと覚えたり、覚えるのが早いことは職場で褒められた」と、特性が職種によって“強み”になることもあるそうだ。

「仕事ができない」とレッテル貼り 他の人へ仕事のしわ寄せも…“大人の発達障害”のリアル
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 それでも“働きづらさ”があることは否めない。「“発達障害を持っているからあの子にはこの仕事はできないのではないか”など、まだやったこともないのに決めつけられる」といったレッテル貼りがある。

 鈴木氏は、こうした現状を踏まえても職場では発達障害を周りに伝えた方がいいと指摘。

「仕事をする前に発達障害を伝えたほうが、職場での満足度が高いというデータが出ている。やはり仕事上の関係がうまくいっていないなかで発達障害を伝えても、そこから急に改善することはなかなかない。できれば早めに伝えた方がいい」というのが、その根拠だ。

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 周りにいる人たちの向き合い方も課題の一つだが、近年ではニューロダイバーシティ=神経・脳の多様性という考え方が出てきている。これは、発達障害とそうではない人を分けないという考え方だ。

 鈴木氏も「発達障害の傾向があるのは10人に1人くらいと言ったが、我々もある程度は発達障害があるのではないか。誰しもできないことや苦手なことがある。そのうえで頑張ればできるものではないからこそ“障害”と付いているので、職場では、この人は『何がどういう環境でできないのか』を冷静に見定めてほしい」と指摘している。

 もう一つの課題が、外見からは判断しにくいこと。

 ほなみさんは「発達障害は目に見えない障害で分かりにくいので、やはり甘えと思われてしまう。他の人へ仕事のしわ寄せがいき、そのストレスで余計に私たちに対するあたりが強くなる場合もある」と語りつつ、こうした課題の解決に向けて次のように締めくくった。

「私たち当事者は周りに支えてもらって当たり前と思わずに、自分の得意・不得意なことをしっかり伝える。そのうえでどうすればスムーズに働けるかを考えてもらえたら、発達障害がある人も働きやすくなると思う」

(「ABEMA Prime」より)
 

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