毎年のようにスター棋士・女流棋士が誕生する将棋界において、内山あや女流初段(18)の存在は欠かせない。持ち前の明るさと物怖じしない芯の強さは、勝負の世界で生きていくものにとって大切な要素に挙げられるが、その器量はトップランナーにも引けを取らない。さらに今期の女流名人戦リーグ入りを決めるなど、“本職”でもめきめきと頭角を現している。「私は将棋が大好き」と眩しいほどの笑顔で語る18歳。ブレイク前夜とも言えるこの瞬間、新進気鋭の女流棋士の“今”を聞いた。
将棋を始めたきっかけは2013年の第2回電王戦。父親がPCで対局の様子を観戦していたことから興味を持ち、すっかり将棋のとりことなった。そこから4年、2017年に中1で研修会入り。2020年の第14回白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦ではアマチュア選抜から気鋭の女流棋士たちを破り堂々の優勝を飾った。同年12月のプロ入り後も着実に白星を集め、今期の女流名人戦リーグ入りを決めるなど、夢の階段を駆け上がっている。
好きな戦型は「矢倉」で、自身については「厚みを活かして戦う棋風」。2021年に放送された『第2回女流ABEMAトーナメント』では、リーダーを務めた渡部愛女流三段のドラフト指名を受け初出場を果たした。個人成績は1勝4敗ながら、先輩棋士たちの中でもしっかり存在感を示していた。当時は出場者の中で最年少ということもあり、やや幼い印象のあった内山女流初段だったが、公式戦での経験、戦果を積み上げたことで自信みなぎる凛々しい表情に。勝負強さはもちろん物怖じしない明るい性格は、将棋界でのブレイクは約束されていると言っても過言ではない。
“尊敬する棋士”には迷わず師匠の北島忠雄七段(57)の名を挙げる。「北島先生が子供教室を開催されているので、その時にスペースをお借りして、同門の奨励会員の方と練習将棋を指しています。週一くらいなので師匠とお会いする頻度も多い方だと思います。小学生の頃からお世話になっているので、あまり緊張はしないですね。私が(公式戦で)勝つと喜んでくれて『次も頑張りましょう』と言ってくれるので、すごく嬉しいです」。2020年12月、井道千尋女流二段との対戦となったデビュー戦では、棋士・女流棋士のデビュー戦最長手数記録となった286手で敗れたが、北島七段から「ゆっくり休んでください」とのメッセージがあったと言い、良い時も悪い時も、信頼する師匠からの言葉は何よりの原動力になっているようだ。
棋士編入試験を見事突破し、4月にプロデビューする兄弟子・小山怜央さん(29)の存在も大きい。「編入試験は本当に応援していました。普段からすごく優しいんですけど、将棋は悪いところから逆転される力強さを感じます。一門として活動できるのがすごく楽しみです」。公式戦ではもちろん、様々な場面で“北島一門”を目にする場面はぐっと増えることになりそうだ。
対局中のきりりとした姿からは想像がつかないほど、くるくるとを表情を変えて笑い声を上げる姿が魅力的な18歳。趣味は「お笑いを見ること」で、対局遠征時の必携アイテムには「よしもと漫才劇場のチケット」を挙げたほど。「対局後に必ず見に行くことにしています」と元気の源を明かした。内山女流初段の“推し”芸人は、吉本興業所属の双子漫才師の『ダイタク』。「ライブを見に行った時に出演されていて、おもしろいなと思ってYoutubeをかたっぱしから見ました。ガチファンです…(笑)。机にアクリルスタンド立ててますよ」と並々ならぬダイタク愛を語った。
さらに趣味の幅は広く『ラグビー観戦』も。英国・ベルファスト市生まれということが影響しているといい、「確かに珍しいかもしれないですね。もちろん日本代表を応援しているんですけど、出身がイギリスのアイルランドなので応援しています。さらに応援している選手がイングランドにいるので、そちらも(笑)。何も起きない時間が少なくて、常にどこかで戦いが起きているのでずっと楽しめるんです」と魅力を語った。
今春に高校を卒業し新たなステップに踏み出すが、女流棋士と学生生活の両立に対して「大変さはあまり感じなかったです。先生の中に将棋ファンがいらして、その先生と校内ですれ違うとコッソリ『勝ってたね!』と言ってくれました」と高校生活での貴重な時間を振り返った。
「私は将棋を指すことが大好き。勝ち残って対局数を増やしていけるように勉強していきたい」。その笑顔は、暖かく優しい。光輝く将棋界の未来は、内山女流初段が指す一手から切り開かれていくのかもしれない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)