強くて渋くてかっこいい。そんなファンの心を“全駒”するようなチームが誕生するか。 将棋の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」のドラフト会議が、4月1日にドラフト会議に放送される。例年、この大会を楽しみにしている将棋好きアイドル、SKE48の鎌田菜月が恒例にしているドラフト予想に挑戦。団体戦も今年で4回目となり、ドラフト指名の傾向も少しずつ変化が出てきているが、いろいろと考えを巡らせた中で願望として出たのが羽生善治九段(52)、郷田真隆九段(51)、久保利明九段(47)という知名度・実績十分のベテランチーム。「ロマンスグレーのチームが見られたら、ファンの方はすごく『おー!』となるんじゃないかと。喜ぶ方は多いと思います!」と、猛烈にプッシュした。
持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指しのフィッシャールールというスリリングさ、チームメイトで収録する動画のエンタメ性のマッチングが人気の同大会。鎌田の例年楽しんでいる。チームを組む棋士にとって、楽しい大会になるかどうかは、ドラフト会議にかかっている。仲良し集団を作るかと思えば、まるで交流のない棋士を選んでみたり。棋士の指名は毎回予想がつかない。
鎌田菜月(以下、鎌田) この大会を学びの場にしようと思うのかとか、個性が出ますよね。藤井聡太先生(竜王)について、ファンの方は同世代を選ぶのか、上の世代を選ぶのかの2択だと予想されていたと思いますが、去年は大先輩2人でした。今年はあえて藤井先生にとって「鬼門」と言われている先生をチョイスしたら、また違った沸き方をするかもしれないですね。
昨年のドラフト指名で印象的だったのが、渡辺明名人(38)だ。2巡目に渡辺和史六段(28)を指名した。渡辺名人本人も当時「青田買い」と説明していたほどで、渡辺六段も一部では注目されてはいたものの、まだまだこれからという若手棋士の一人と思われていた。ところがABEMAトーナメントでチーム渡辺に加わり活躍すると、公式戦の結果にもつながり、2022年度の将棋大賞・連勝賞(20連勝)を受賞した。
鎌田 すごい!と思いました。将棋ファンのみなさんが注目している若手棋士の方、調子がいい方はいると思うんですが、やっぱり盤面を通して向き合っている先生が見る景色は全然違うんでしょうね。もちろんファンの方にも「いや、わかっていたよ」という方もいらっしゃるでしょうが(笑)。先生方が見ているのは数字や統計的なものではなく、インスピレーションみたいなものなんでしょうか。おもしろいですよね。
ABEMAトーナメントで新たな棋士が活躍する一方、実績十分の棋士が初参戦することもある。今年のビッグトピックのひとつがリーダー棋士になり、初参加が決まった千田翔太七段(28)だ。早くから将棋ソフト(AI)を活用した棋士として有名で、最近では髪型もおしゃれに変更。イメージチェンジは大成功と評判だ。
鎌田 去年、ルックス面で大きくイメチェンしたのが話題になりましたよね。最初はちょっとびっくりしましたが(笑)。今まで大会に参加されなくて、リーダーになって初参戦というのも、またかっこいいです。今まで参加されていなかった分、千田先生とその他の先生の関係性があまり見えなくて、どなたを指名されるんだろうと困惑していますし、すごく楽しみです。
そしていよいよ恒例のドラフト指名。いくつか案を考えたが、ここは鎌田の願望を形にしてみた。
鎌田 同じ人を指名するケースも考えると羽生先生は、また佐藤紳哉先生(七段)と中村太地先生(八段)を選んで、三度目の正直があるかもしれないですね。以前にも「まだこのチームでやれることがある」とおっしゃっていたので。ただ、羽生先生には久保先生、郷田先生とロマンスグレーのチームも組んでほしいんですよ。喜ぶファンの方も多いと思いますよ。あとは木村一基先生(八段)がどうなるか。木村先生がいるチームはやっぱり強いですよね。成績もそうだし、ビジュアルも(笑)。去年、まさかもう一度エンジェルをやられると思っていなかったですし、リーダーでなくても木村先生色に染まるところを、すごく注目しています。
最後に、今大会から導入された個人賞についても聞いた。将棋大賞のような最多対局、最多勝、最高勝率の3部門に加え予選で最も活躍した棋士、初参加で最も活躍した棋士の、計5部門がある。昨年であれば、7戦全勝の佐藤天彦九段(35)が1.000で最高勝率、11勝3敗の服部紳一郎五段(23)が最多勝だ。また団体戦になった第3回から3大会の合算では、広瀬章人八段(36)が16勝6敗、勝率72.7%が最高勝率になっている。
鎌田 天彦先生、昨年もすごかったですが最高勝率で2連覇したらすごいですよね。年度別で見ると、安定しているのは増田康宏先生(七段)。ずっと上位にいるので、増田先生は今年も勝率で3位以内には入るんじゃないでしょうか。藤井先生は相手も対策を立てているので、今年も苦戦しそうだし…。以前、羽生先生がおっしゃっていたんですが、将棋の反射神経は考えた上でバーッとつながるというよりも、積み重ねがあって「これが来たらこう」と直結できるのがプロの強みだと。藤井先生も、本当の意味での反射神経がこれから下っていくとしても、将棋の反射神経がもっとグイッと来る瞬間があって、それをご本人が手応えとしてわかる時が来るんじゃないかと期待しています。常人にはわからない、恐ろしい話ですけどね(笑)。
トップ棋士が地力を存分に出すか、ベテランが再び輝くか、それとも新星が現れるか。今年も楽しみが尽きないドラフト会議だ。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)