団体戦としては6回目を迎える将棋の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」のドラフト会議が、4月1日に放送される。14人のリーダー棋士が、今年もどんなチームを作るのか。藤井聡太竜王(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)を筆頭に、リーダーもおなじみの顔触れとなってきたが、今回からの新リーダーが千田翔太七段(28)だ。同じ森信雄七段(71)門下からは山崎隆之八段(42)、糸谷哲郎八段(34)、という兄弟子2人もリーダーとして参戦している。森門下推しを自称する将棋ライトノベル「りゅうおうのおしごと!」の作者・白鳥士郎氏は、今回のドラフトにも興味津々だ。
団体戦となって4年目を迎え、ドラフト会議での指名も、超早指しフィシャールールでの戦い方にも慣れてきた各棋士。成績上位者がリーダーを務める分、顔触れのほとんどが変わらないため、どうしてもマンネリ感が出るところだが、ここに新たな刺激を加えると期待されるのが千田七段だ。
白鳥士郎氏(以下、白鳥) 千田先生がリーダーとして入ってきてくれて、新陳代謝が起きました。千田先生は朝日杯将棋オープン戦の優勝もあり、早指しの適性もありますが、やはりAI(将棋ソフト)にすごく強いところがあるので、どんなトレーニングを積んでくるのか楽しみです。AIも早指しだと反応が遅れることがありますし。千田先生がどんな人をドラフトで選ぶのかも楽しみですよね。控室にパソコンを持ち込んで何かやってくれないか、とまで期待してしまいます。
千田七段といえば、将棋界でもAIを取り入れた先駆者で、藤井竜王が奨励会三段時代にソフトのインストール方法から手引きしたというエピソードがある。早指し棋戦に適した戦術まで、AIで調べきれるかは不明だが、他の棋士にはない特色であるのは明らかだ。
白鳥 控室でもAIの話題とか飛び交うんじゃないですかね。パソコンで解析しながら戦略を立ててみたり。だからこそ、チームメイトにもAIのことを話せる方を選ぶんじゃないでしょうか。谷合廣紀先生(四段)は、振り飛車党でチームとしての戦略も高まりますが、東大の博士課程で自作の将棋AIも持っています。もう一人の仲間には、佐々木勇気先生(八段)を選ぶのでは。絶好調ですし、コンピューター将棋の大会の解説で、千田先生と一緒に出られたこともあるので、つながりもありそうです。
続いて、他の森門下の予想もしてみた。特に注目しているのは糸谷八段だ。例年インパクト抜群のチーム動画を収録してファンを楽しませるエンターテイナーだが、将棋でも居飛車党・振り飛車党をうまく織り交ぜたチーム構成で、好成績を収めてきた。
白鳥 早指しのフィッシャールールにおいて、振り飛車というカードを相手にぶつけられるというのは、戦略が増えますね。糸谷先生はカードゲームもお好きですが、対戦カードを重視されるのは、そういう理由もありそうです。なので早指しが得意な振り飛車党は選ぶでしょう。それから同門だと、居飛車党ですが澤田真吾先生(七段)あたりでしょうか。千日手、持将棋を厭わない。これは性格だし、精神も鍛えられています。長時間に渡る収録に耐えられそうじゃないですか。さらに挙げるなら大橋貴洸先生(七段)ですかね。勝率も7割を大きく超えています。公式戦は居飛車が多いですが「耀竜四間飛車」のような振り飛車戦法を開発した方で、やはり居飛車・振り飛車両方指せる。加えて言えば、対藤井竜王の成績もいいですよね(2023年3月現在で4勝2敗)。居飛車・振り飛車両方指せるのは強いですね。独特なファッションセンスも映えそうです。
この他、今回から導入された個人賞は、最多対局、最多勝、最高勝率、予選で最も活躍した棋士、初参戦で最も活躍した棋士の5部門あるが、この候補には順位戦A級入りを決めたばかりの佐々木勇気八段(28)、デビュー直後から勝ちまくっているイケメン若手棋士・徳田拳士四段(25)を候補に出した。今年のドラフトはどんなドラマが待っているか。また、森門下のリーダー同士による棋士の奪い合いは起こるのか。将棋以上に読めないことばかりだ。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)