27日、東京都はヤングケアラーへの支援マニュアルを公表した。ヤングケアラーとは、本来は大人が担う家事や家族の世話、介護などを日常的に行っている子どものことだ。
マニュアルでは、福祉・教育などの関係機関が連帯、早期に気づき、支援につなぐことを目的に、ケアラーに該当しているかが分かるチェックリストや支援の手順などをまとめた。
その責任や負担の重さから、学業や友人関係などへの悪影響が懸念され、子どもの権利が守られない可能性が出てきている。また、周りに相談できずに一人で抱え込んでしまう当事者が多いのが実態だ。
国も本腰をあげるべく、経済産業省は「OPEN CARE PROJECT」を立ち上げた。介護を個人の課題からみんなの話題に変え、介護に携わるプレイヤーの増加を目指す。
ヤングケアラーを救うことはできるのか。そして支援のあり方は? 「ABEMA Prime」では、経験者や介護・福祉の専門家と考えた。
介護・福祉の人事支援企業Blanketで代表を務める秋本可愛氏は、東京都の動きについて、「問題が明るみに出てから、支援が必要だとわかりつつも、手探りの状態が続いていた。マニュアルができたことで、いろいろなプレイヤーにとってヒントになるのではないか」と語る。
ただ、現場で活用するには課題もありそうだ。
秋本氏によると「まだ自治体で取り組みの差がある」のが実態という。マニュアルには、どこが担当するかも含めて、各自治体・教育機関の取り組みが推進するきっかけとして期待されているという。
ケアラーをケアする企業・想ひ人の代表の金子萌氏は「支援の方法論が提示されたのはいいと思うが、実際にどう現場で活用するか考えていく必要がある。70ページ以上もあり、最後まで読める人はなかなかいないのでは」と指摘する。
金子氏は高校2年のとき、44歳の若さで父親が若年性パーキンソン病と認知症を発症。その経験から会社を立ち上げた。金子氏は「私自身、外に経験を出せるようになったのは、ついこの2年といった話。それまではずっと自分の状況を周りには全く言えず、ひた隠しにし続けてきた」と当時を振り返る。その経験から「ヤングケアラーが自分から相談するのはハードルが高い」と指摘する。
介護が始まると生活は一変。金子氏は「大学1年のとき、父が病気を理由に会社から退職勧奨を受け、目の前が真っ暗になった。どうすればいいのかわからない状況だった」と話す。
学校の先生には「進路の相談はできるが、家族の状況を相談する発想はなかった」といい、周囲に相談できない状況だった。そうした中で、金子氏は母といろいろな行政機関へ相談に行き、父の退職に関しては弁護士に相談し、乗り切ったという。
こうしたエピソードを踏まえ、「私も中学高校時代は母と二人暮らしで大変なことが多かった」と語るのは、番組に出演したタレントで女優の山之内すずだ。
「大学に進学する選択肢を考えることもできず、夢を持つことは中学時代から諦めていた」という山之内は「私は運良く芸能界に拾われて、どうにか17歳で生活する能力を持てたが、高校を卒業したら死ぬしかないと思っていた。ただ、その時に保健室の先生にだけは相談できた。“あなたはあなたの人生を生きていいんだよ”という一言で頑張れた」と、自身の経験を明かした。
誰にも言えないことを聞いてくれる大人がいるだけでも救われる。その意味でも「こういうマニュアルができることはすごくいいことだと思う」とコメントした。
小学2年生のときに両親が離婚したというギャルタレントのあおちゃんぺも「家のことをきょうだいでやらなきゃいけない家庭になったが、人に言えなかった。苦労していると思われたくなかった。親戚に相談すると、“親が頑張っているのだから、子どももそれぐらいしろ”みたいな。親不孝かのように言われ、余計に人に言えなくなった」と自身の経験を語る。
そのうえで「子ども時代に子どもでいられなかった人のケアはすごく大切。まずは、時間を作ってあげることが有効だと思う。例えば、国が支援金を出して、訪問介護や家事代行が週に1回、2回でも来てくれたら違う。そうすれば経済も回せるし、苦労している方の時間も作れると思う」と、実体験に基づく課題と解決策を提案した。
ヤングケアラーを含む介護者の約8割が「悩みを1人で抱えてしまう」と答えた調査結果(※エス・エム・エス「安心介護」介護の相談先に関する実態調査より)もある。マニュアルができたことは前進の一歩だが、それだけで周囲に自分の状況を相談できるようになるわけではない。
“いま最も伝えたい想い”として、「家族だけで頑張らなきゃいけない問題になった瞬間、すごくつらい問題になってしまう。いかに頼れるか、自分のケアができて初めて相手のケアができることを知っているかでも全然違ってくる。そういった教育や機会を、私たちは作っていきたい」と語った秋本氏。
金子氏は「両親が共働きだから、祖父母のケアを子どもがやっているといったケースもある。ビジネスケアラーの支援として、社会資源を使って介護を受けれるような制度やサポート、プロダクトはあるが、それが知られていないという課題がある。ヤングケアラーを生み出さない仕組み作りが必要だ」と述べた。
(「ABEMA Prime」より)
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