「産地偽装や違法に獲った魚が食卓に…」流通の“見える化”が漁業を守る
「違法に獲った魚などが食卓に」漁業関係者の訴え
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 漁獲高の減少が続き、海の資源管理が急務となっている日本。そんな中、漁業関係者らと若い世代による“海の未来を考える”イベントが開催された。

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 イベントでは、漁業関係者や海に関わる研究者らが、Z世代の若者ら約100人とディスカッションを実施。限りある水産資源を未来にどう残していくか、意見を交換した。

 ランチタイムで参加者には「サステナブル・シーフード」を使った料理がふるまわれた。サステナブル・シーフードとは、水産資源と環境に配慮した漁や養殖による認証を受けた水産物のこと。

 年々、漁獲高が減少傾向にある日本。違法に獲られた魚の流通や、産地の偽装など海の資源管理も大きな問題となっている。

 イベントを主催したUMITO Partnersの村上春二代表は、漁業でどんなことが起きているのか、消費者が“知るきっかけ”を作りたいという思いでイベントを開催した。

 村上代表は、2021年に会社を設立。全国各地で持続可能な漁業を目指す人々をサポートしてきた。今後、重要だと話すのが、“魚がいつ・どこで・誰によって捕られた”のか、流通経路を追跡することができる「トレーサビリティ」の確立だ。

「顔が見えるとか、どこの漁師さんがどういう風に獲ったかを知れば、自分たちの思いも変わるし、信頼できる人たちのものを積極的に買おうと行動も変わる」

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 宮城県気仙沼市で遠洋マグロ漁業会社を経営する臼井壯太朗さんは、漁獲した全てのマグロに電子タグをつけ、管理を行っている。こうした取り組みが認められクロマグロで、世界で初めて“海のエコラベル”と呼ばれるMSC認証を受けた。

 手応えを口にする一方、臼井さんは、

「我々が真面目に漁業を行なって、資源管理をやっても、違法に獲られたものとか、ルールを無視して獲られたものがたくさん日本の市場に流通している。そういう物をどんどん排除していかないと、真面目に漁業を行う人たちがこのままいなくなってしまう」

 限りある資源を未来に残していくために――。村上代表は、今後消費者と漁業関係者が一緒になって海のこれからを考えていけたらと期待を寄せている。

「(漁業は)地域の基幹産業なので、漁業にとって水産資源が獲りづらくなっているのはすごく大きな課題。魚を食べる前に『どういう環境で育ったのか』『どこから来たのか』と、これまで以上に思いを馳せてみてほしい」

 この取り組みについて、BuzzFeed Japan編集委員の神庭亮介氏は次のように指摘した。

「“〇〇さんがつくりました”と写真が貼られた野菜のように、顔がわかることで品質保証になり、消費者も安心する。売る側にとってもブランディングになる。そういう魚を “エシカル消費(倫理的消費)”したい消費者が選ぶサイクルが回っていくと、非常に健全な形で水産資源を守っていくことができる」

 消費者が産地や生産者を知る取り組みも大事な一方で、海の資源を守っていく“持続可能な漁業”という部分も必要になってくる。国連食糧農業機関(FAO)は持続可能な漁業や養殖業を推進する「ブルー・トランスフォーメーション」の必要性を提唱している。

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1.持続可能な水産養殖の拡大と強化
 世界の食糧安全保障の目標をサポートし、栄養価の高い水産食品と利益の公平な分配に対する世界的な需要を満たすこと

2.すべての漁業の効果的な管理
 健全な資源を提供し、生計を確保すること

3.バリューチェーンのアップグレード
 水産食品システムの社会的、経済的、環境的な実行可能性を確保し、栄養面での成果を確保すること

 これについて神庭氏は最近起きた“サバ缶ショック”を例に挙げこう話す。

「サバ缶が欠品、値上がりした背景には気候や海流の変化などもあると思うが、小さいうちにサバを獲りすぎていることも関係している。サステナブルというのは、要は『損して得取れ』ということ。将来も魚を獲り続けるために、いまは少し我慢するということを仕組み化しないと、今後も第2、第3のサバ缶ショックが起こる。日本の水産資源管理の問題点は、漁業者にそういった判断を丸投げしていること。漁業者は生活がかかっているので、当然獲れるならたくさん獲りたい。利益相反にならないように、海外の例も参考にしながら、中立的な第三者が管理する仕組みをつくった方がいいのではないか」

(『ABEMAヒルズ』より)

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