チームワークを誤解? 「道徳」教科書から削除『星野君の二塁打』にひろゆき氏「『上が言うなら従え』は間違い」
【映像】ひろゆき×現役監督「星野君の二塁打」を議論
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 小学校の「道徳」の教科書から長い間教材として使われていた児童小説『星野君の二塁打』が2024年度から消えることになった。

【映像】漫画「星野君の二塁打」道徳の教科書より(画像あり)

 大事な野球の試合、同点で迎えた最終回の裏。ランナー一塁で打席を迎えた星野君は、監督から送りバントの指示を受ける。「打てそうな気がする」と指示に背いて強打すると、結果的に二塁打となり、チームはサヨナラ勝ち。

 しかし、監督は星野君に対し、チームワークの大切さを説き、ルールを破ったことを指摘。チームメイトは擁護するが、監督は罰として次の試合の欠場を言い渡した――。

 教科書ではこの物語から「ルールを守るのは何のためか」を問いかけている。『ABEMA Prime』では三夜にわたってこのテーマを扱い、三夜目は “論破王”のひろゆき氏と、元プロ野球選手で韓国や台湾での指導経験もある中島輝士氏(京都先端科学大野球部監督)と共に考えた。

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ひろゆき氏:日本は無能な管理職の人を温存して、権力が集中する構造をずっとやり続けている。結果的に、星野君は選手として試合に出られなくなった。そうすると、正しいかどうかは関係なく「ペナルティが怖いから監督に従う」になる。本当に優秀な監督であれば「打てる時は打ったほうがいい。打てないなら送りバントだ」と言うべき。これが道徳だと教えると、無能な管理職に従う人が増えるだけだ。

 例えば、これが星野君にとって最後の試合で、めちゃくちゃ実力があったら、スカウトの声がかかるかもしれない。でも、送りバントの指示に従ったら、おそらく星野君に声がかからない。生徒の人生にとってどっちが大事か、ちゃんと考えるべき。サッカー本田圭佑選手は「一瞬でもゴールチャンスがあったらシュートしたほうがいい」と言っていた。結局、選手の能力はそんなに変わらない。どんなチャンスがあったとしても、すごく狭いチャンスでも、自分の中で「これはいける」という時は、信じて自分の道を進むことが僕は正しいと思う。

元プロ野球選手・中島輝士氏(以下、中島氏):大前提を言わせてもらうと、これは子どもの試合だ。だが、技術的に高くなっていくと、監督のサインを無視するのはありえない。野球はチームプレーなので、前後の打線も問題になる。星野君が送りバントしたら、次の子が打つかもしれない。仲間を信頼する気持ちが少しでもあったほうが、僕はいいと思う。

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ひろゆき氏:もう一つ間違えていると思っている。流れが大事なら、子どもが「こういう流れだから送りバントをした方がいい」と自分で考えられるように、監督が教えるべき。それができていないから“監督が無能”は変わらない。監督の教育が失敗したから星野君は「サインを無視したほうがいい」と思ったのではないか。

中島氏:一理ある。指導者がしっかり教えてあげる必要はある。僕も30〜40年前ぐらいに都市対抗戦で、同じような経験をした。監督の指示はバントだったが「打たせてくれ」と言ったら、「打ってこい」と言ってくれた。結果的に三振だった。

 その当時は「なんで打たせてくれないんだ」と思っていたが、バントの指示が出るような選手ではまだ信頼がないと後になってわかった。一方で、セオリー通りの野球をしても今は勝てない。ある程度、奇襲作戦もあり得る。それはゲームの流れから作っていくものだ。今、自分も監督の立場になって、生徒たちが納得するように話している。

ジャーナリスト・佐々木俊尚氏(以下、佐々木氏):ポイントは2つあると思う。1つは、監督の理由が「規則を乱した」以外にない。今の若者には全く通用しないのではないか。バントしなくてはいけない説明がちゃんとあれば、本人は納得する。頭ごなしに「こうしろ」と言われると「なんで従わないといけないのか」という気持ちになる。星野君がバントをしなくてはいけなかった理由を説明して「次にこういう場面になったら、従ってくれ」と言えばいい。

 2つ目は、こういう番組で完全自由主義に生き抜いてきた人がコメンテーターとして出てくると「こんな監督のいうことは聞くな。バカだ」みたいな話になる。一方で、チームや共同体の輪も大事だ。2000年代、自己啓発本がバンバン流行って「独立して金儲けしろ。会社なんかに頼るな」みたいなことが言われた結果、死屍累々になっている。勝っている人はいるが、勝てなかった人がいっぱいいる。議論として「バランスをどこで取るか?」が必要だ。極端にならずに、真ん中あたりに折り合いをつける場所を見つけるのが、大事な議論だと思う。

ひろゆき氏:子どもたちは監督が言っていることが正しいと思い込んでいる。監督が間違っていたらどうするのか。僕はちゃんと上を疑える状況を作るべきだと思う。「どんなアホでも上が言うなら従うべき」を道徳として教えるのは、間違っている。

 チームワークの教材であれば、監督に従わなかった星野君はどういう罰であるべきかをみんなで決めるべきだと思う。でも結局、監督が勝手にペナルティを決めた。チームワークでもなんでもないと思う。他の選手は「星野君、打ってくれてありがとう」と思っているかもしれない。

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佐々木氏:漫画なり描写なり、表現力の問題はある。漫画を読むと、明らかに監督が言っていることが正しいような誘導的な内容だ。そうではなく「どっちが正解だったのか考えよう」「議論しよう」と題材として使うなら良いと思う。

柴田阿弥アナウンサー:協調性やチームプレーを意訳した結果、同調圧力が生まれる。これを見て「上の言うことを聞かないと罰を与えられるし、何もしない方が楽」と思ってしまうと、子どもは「先生の気に入る答えを用意すればいい」とならないか。

中島氏:子どもの意見も聞く必要がある。子どもたちが話し合って、必要なときに大人がリーダーシップを取るべきだ。部員も100人近くいると、いろいろな性格の選手がいる。ある程度、監督として、チームが同じ方向を向いていればいいが、まとめるのも大変だ。問題が必ず出てくる。一緒になってやっていくことが大事だ。

 僕はいろいろなチームで監督をやらせてもらって10年くらいになるが、どこでも批判は受ける。どう立て直すかは、サポートをしてくれるコーチやスタッフとも会話を交えて解決していくのも一つの手だと思う。

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ひろゆき氏:結局、独裁の権限を持っている人が「みんなでリーダーを決めたんだから、これはみんなで決めたことなんだよ」と言うと、バカな子たちは騙される。完全に独裁なのに、みんなで決めたかのように誤解する。民主主義やチームワークがどういうものか、間違ったまま子どもが世に出ちゃう。絶対的に優秀な人に従うならいいが、そうか分からない人でも「えらい役職なら従った方がいい」と教え続けることは、今の日本の経済の低調に繋がっていると思う。

(「ABEMA Prime」より)

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