盤上没我の気鋭棋士も、思わず頭をポリポリとリアクションせざるを得なかった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」の予選Aリーグ第1試合、チーム永瀬とチーム豊島の対戦が4月15日に放送された。チーム永瀬の4勝2敗で勝利に王手をかけて迎えた第7局は、今期初勝利を目指す本田奎五段(25)が登板。チーム豊島の勝ち頭・木村一基九段(49)の超アグレッシブな指し手に翻弄され、思わず目が点、ポリポリと頭を掻くシーンが見られた。
第7局で決着を付けるべく、大一番を任されたのは今期初めてチーム永瀬入りした本田五段だった。自身の1局目は、チーム豊島の木村九段と角換わり腰掛け銀の一局で完敗。自身の今期初勝利、さらにはチームの勝利を飾るべく引き締まった表情で対局場へと向かった。ここでも百戦錬磨のベテラン、木村九段との対戦に。本田五段の先手で、角換わりの出だしとなった。木村九段と言えば、“千駄ヶ谷の受け師”の異名を持つ受けの名手。しかし、チーム永瀬の控室では、増田康宏七段(25)が「木村九段はフィッシャーだとスーパーアグレッシブ」と評していた。
中盤戦では木村九段がペースを握ったかと思われたが、本田五段は右玉に切り替えて戦場から回避。冷静に木村九段の狙いを伺った。先手は守りの薄くなった左辺に角を向けたが、受けの強さに定評のある木村九段は角を追いかけ△8五歩。この一手に、両軍控室から「ひえー!!」と悲鳴が上がった。中でも一番のリアクションは永瀬王座。「ひえー!そういう手があるの!?うそでしょ!?」とモニターを食い入るように見つめていた。
対局場の本田五段が声を上げる訳にはいかず、思わず目が点。頭をポリポリと掻いて困惑の表情を見せると、視聴者も「ええ!?」「どゆこと?」「ホンケイ、パニックw」「うっひょー」「やばばばば」「確かに」と騒然となっていた。その後も“木村調”の手が見られたものの、流れは本田五段側に。冷静に玉形の差を見極め、詰みに討ち取り嬉しい今期初勝利を手にした。
予選突破に向けて、まずはチームの初勝利を決めた本田五段は「何とか、良かったです」とホッとした表情。目指す優勝への道のりはまだまだ長く険しいが、着実な前進を喜んでいた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)