「トップレスNG」は差別? 広がる女性発の“Free the nipple” 日本のタブー視を変えられるか
【映像】トップレス姿のデモ行進
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 今年3月、ドイツで大きな話題になった出来事が。それは「市営プールで、女性のトップレスOK」というもの。

 きっかけは2022年12月、トップレスで泳ごうとして止められた女性が「差別だ」とベルリン市に不服を申し立てたこと。スペインでも過去に同様の訴えがあった。

【映像】トップレス姿のデモ行進

 トップレスを求める女性発の「Free the nipple」(乳首解放運動)。プールやビーチなどで男性はトップレスOKなのに、女性はタブーなのは不平等だ! と訴える運動で、海外では大々的にデモ行進が行われるほどのムーブメントになっている。

 しかし、日本のTwitterには「何でそんなに出したいんだろ。分からん」「てか、これジェンダー差別なのか?」「それで『興奮するな!』って言ってもそれは無理だよ?」と、共感できないという多くの声があった。

 そこで『ABEMA Prime』では、米国で乳首解放運動をおこなう「Go Topless」を取材。日本や男性にとっても無縁とは言えない問題を、当事者とともに考えた。

■“トップレス解放運動”当事者の思いと直面した実態とは?

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 「Go Topless」が結成されたきっかけは2005年。当時、ニューヨークでは女性がトップレスになる権利が認められていたが、アートショーのプロモーションで実際におこなったところ、警察官がルールを把握しておらず逮捕されたという出来事があった。

 これを契機に2007年に結成され、今では賛同者は数千人おり、毎年8月の「女性平等の日」に合わせ、欧米各地でデモ行進がおこなわれているという。

 「Go Topless」メンバーでLA在住の田上その子さんは「女性が公的な場所でトップレスになったら、捕まったりチケット(=切符)を切られるけど、男性は何の問題にもならない。そこを捉えて私たちは男女平等を訴えている。女性でもトップレスになれるように活動をしている」と述べた。

 なぜ田上さんはこの活動に共感し、参加しているのか。

 「2007年にニューヨークで女性がトップレスになって捕まったことがある。ニューヨークでは合法だったが、警察は知らずに逮捕してしまい、訴えた彼女が勝った。これは男女平等に関する大事な問題だということで賛同した」と、きっかけを語った。

 実は田上さん自身も、2011年にシカゴで女性のトップレスを解放しようというイベントに参加していた際に違反切符を切られた経験がある。

 例年は「警察が来ても何も問題なかった」というが、この年は「結局3人の女性警官に囲まれて“チケットを出すので今日はやめてください。続けるなら逮捕します”となったので、チケットをもらって裁判所に行く形になった」と説明する。

 この活動を続ける中で、「恥ずかしい」という気持ちになったことはなかったのだろうか。

 「初めは恥ずかしい気持ちもあった。ただ、モチベーションが男女平等で、何かひとつ私も貢献したかったので、恥ずかしいという気持ちを外して参加した」と、当時の思いを語る。今では恥ずかしい気持ちは「ない」という。

 田上さんは「昔は文化や宗教によって、男性が女性を守るという慣習があったと思うが、今はどんどん変わってきて、もっと女性が表現してもいい時代になってきている。法律も、時代に合ったものに変わればいいなという思いで活動したい」と述べた。

■海外ではどこまで“乳首解放運動”が広がっている?

 では実際に、世界的にどのくらいの広がりを見せているのか。

 社会問題やジェンダー関連の記事を執筆する、ライターの中間じゅん氏は「2010年代前半くらいからすごく盛り上がってきて、主に米国で盛んになった。また、トップレスで抗議する団体としてウクライナのFEMEN(フェメン)という団体も有名だ。あとはカナダでSlutWalk(スラットウォーク)という活動もある」と解説。

 「今は欧米中心で、有色人種の人たちには声をあげる特権がなく、白人女性たちが主体と言われている。ただ、母乳育児がしやすい、暑いときに脱げる、ファッションの自由を楽しむなど、さまざまな軸でメリットはあるので、広がっていく可能性はあると思う」という見方を示した。

■日本の“トップレス”タブー視は変わるか

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 作家・社会学者で元日経新聞記者の鈴木涼美氏は「グローバルな文化が入り、日本で胸を隠すのが普通になったおかげで潤った業界もある。その価値観を変えるのに、ヌードの価値を下げるというのはひとつの方法だ。例えば、その辺で乳首を出している女性がいれば、ヌードにお金を払う男の人はいなくなるし、過度に性的に消費する行動もなくなるだろう。ただ、それは思想的にヌーディストみたいな仕事をやっている人からすると屈辱的。ジェンダー平等は重要だけれど、文化や多様性と角逐する場合もあるので難しい」と、別の観点で一石を投じた。

 一方、プロデューサーで慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は、問題の本質を「脱げるかどうかの話。脱ぐじゃなくて、脱げるだと思う。〝脱げる〟が男性にはあり、女性には“げる”がないぞということ」だと指摘。

 あくまで「この運動が間違っていると言いたいわけではない」としつつも、「“○○できる”を男女均等にすべきかどうかについては懐疑的。ケースバイケースだ。乳首を解放することではなく、一部の権限が女性には与えられていないことを考える問題だと言えば、メッセージとして適切に感じたと思う」と見方を示した。

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「欧米は進んでいるからトップレスでいい、日本は遅れているから許されないという価値観を押し付ける発想はよくない。要するにその国の文化で好きにやればいい、日本で女性がみんなトップレスになりたいならOK。その代わり、欧米を見習えとかトップレスにならない人を蔑むのはやめましょうという点だけ抑えられればいいのではないか」と述べ、次のように語った。

「イスラムのベールは女性蔑視の象徴と言われているが、そもそも女性を守るために始まったものだという発想をイスラムの人は持っている。その視点を決して忘れてはいけないと思う」(『ABEMA Prime』)

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