賃上げのニュースや決算発表の数字を見ると痛感するが、「大企業だからこそ手が回らない領域」があり、そこが勝機になるという。キーワードは「何となく不便」だ。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、「日本の救急を変える」をテーマに消防車や救急車の製造・開発を行うベンチャー企業の株式会社ベルリング・飯野塁代表を取材した。
今回、ベルリングは新型の救急車「C-CABIN」を開発。飯野さんは出動件数が増加傾向にある中でこれまで選択肢がなかった救急車に着目した。
「(救急車業界は)ニッチでプレイヤーが少なくて、ずっと作り続けている老舗の自動車メーカーの子会社2社による独占状態になっている。彼らには量産という使命があり、あまり機能が変わらない状況の中、我々が参入して新しい付加価値を提案している」
では、従来の救急車とはどのような違いがあるのか。
まずこだわったのが「車内の広さ」。独自の技術で拡張した天井のスペースに機器を収納することで、通常より床面積が約1.5倍と広くなり救命活動がしやすくなった。
さらに追求したのが「使いやすさ」。車内を軽量化したことで電動ストレッチャーの搭載を実現し、隊員1人でも患者を車内へ運べるようにした。これは隊員の腰痛を軽減することにもつながるという。
そして、もう一つの大きな特徴が「揺れない」こと。独自開発の技術で車体のゆがみや揺れを軽減させているそうだ。
去年3月からC-CABINを導入している神奈川県立こども医療センターでは、新生児や妊婦を病院間で搬送する時などに使っている。呼吸のサポートなど、繊細な作業が求められる中で揺れの軽減は医師たちにとってプラスになっているという。
今後は海外進出も視野に入れているという飯野さん。一定の評価を得た一方、設備面で現場から指摘を受けるなど課題もまだまだ残っていると話す。
「フィードバックも含めて、良い所もあれば改善箇所も数多く意見を頂いているので、現場に合ったものにフィッティングさせていくことを地道に実直に続ける。“新たな選択肢”を提案する会社として、新しい価値を提案し続けていきたい」
この取り組みを受けて、番組コメンテーターとして出演しているキャスター取締役CROで“Mr.リモートワーク”こと石倉秀明氏はこう話す。
「スタートアップ業界には『N1から始めよう(1人の顧客を深く理解していく)』という言葉があって、今回の救急車のように仕事や生活をしている中で不便に感じることは誰にだってあると思う。その不便さを『なんとかしなきゃ』に変える」
ニッチであればあるほど採算が取れないリスクもあるのでは。
「実はみんなが不便だと思ってるけど、『市場が大きくない』という理由で、大企業やスタートアップが入ってこない事業はたくさんある。もしかしたら困ってるのは1000人ぐらいかもしれないけど、その1000人はめちゃくちゃ助かることをやる小さい会社がたくさん出てくるのは大事だし、そういう会社を社会的に応援して、増やすことが必要だと思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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