昨季まで主にセットアッパーとして活躍、94ホールド、31セーブを挙げていたにもかかわらず、オフに先発転向を直訴。ここまで5試合に先発し、3勝1敗、防御率1.97と好投を続けている埼玉西武ライオンズの平良海馬。
平良は、5月3日にベルーナドームで行われた北海道日本ハムファイターズの一戦でも粘り強い投球を見せ、“無死満塁からのギアアップ投球”が野球ファンの間で話題となるなど、既に先発としても多くのファンを魅了。西武投手陣を支えている。
【映像】無死満塁大ピンチから圧巻「ギアチェンジ投球」
昨季までの平良といえば、デビューイヤーの2019年の26試合を除くと、2020年には54試合、2021年には62試合、そして昨季は61試合と、これまで毎シーズン、50試合以上に登板し続け、2020年も昨季もリーグ最多登板を果たすなど、その鉄腕ぶりに定評がある投手だが、そうしたタフさだけでなく、どんなピンチでも乗り切るマウンド度胸も手伝う形で、これまでの4シーズンで防御率1.66、昨季も開幕から39試合無失点というと抜群の安定感を誇っている。また、平良といえば、野手顔負けの好フィールディングでファンを沸かすこともしばしばで、たとえば昨季も、6月7日に行われたセ・パ交流戦の読売ジャイアンツ戦で、難しいピッチャーゴロを拾い上げ、内野手さながらのキレの良い動きで華麗なジャンピングスローを披露した場面が話題となるなど、十二球団屈指の高い守備能力を兼ね備えているという点も見逃せない。
また、リリーフ時には最速160km/hのストレートに加え、スライダー・カットボール・チェンジアップといったキレの良い変化球を織り交ぜるという器用さも併せ持つ平良は、剛速球を武器とする投手としては珍しく、身長173cmと、決して大柄であるとはいえない。そのことは一見、不利に思われてしまうが、その実、平良に限っては、このことは打者目線での「ボールの出所」という観点で有利に働いており、立派な「武器」として活かしていることが見て取れる。つまり平良は、「平良にしか投げられない球を投げ、好投できる」という意味では、23歳にして既に完成されたものがあるといっても過言ではないだろう。
さらに、こうした特長に加え、平良は、走者の有無に関わらず、セットポジションからクイックモーションで投げるという独特なスタイルをとっているが、実はこのことが、打者にとって、よりタイミングを取りにくくさせる要素となっているという。実際、NPB・MLBで活躍した投手出身の野球解説者・五十嵐亮太氏は、こうした平良ならではの投球スタイルについて言及する形で、「ある程度、上半身の強さもないとこのピッチングってできないので。身体の強さだったり、精神的な強さも両方備えている選手なのかなと思います」(ABEMA『バズ!パ・リーグ』2022年12月29日放送)と、その身体的タフさに太鼓判を押している。
また、精神的タフさをよく表しているのが、2021年9月14日に行われた北海道日本ハムファイターズとの一戦。打者の折れたバットがマウンド上の平良投手に向かって飛び、あわや直撃……というシーン。バットを避けた平良投手は、寝そべるような体制でボールをつかみ、そのまま一塁へ送球するが、ボールは逸れて一塁後方へ。それを見た打者走者の野村は二塁を狙ったが、ファースト・呉念庭がクッションボールをうまく処理し、タッチアウトとなった。この一連のプレーを、マウンド上で寝転がったまま、動揺した様子を見せずに見ていた平良投手。さらに、打者走者がアウトになったことを無邪気に喜んでいた。
そうした力強さ・タフさを持ちながらも、平良は、球界も注目するゲーム実況YouTube「たいらげーむ」を配信。配信中に寄せられたコメントにもテンポ良く返答していく様子が、野球ファンはもちろんゲームファンからの人気も高いという、そんな魅力あふれる選手なのだ。
現在、西武投手陣では、“チーム・ロン毛”の髙橋光成と今井達也が力強い活躍を見せているが、そこに今季から新たに先発・平良が加わったことで、より一層、楽しみなシーズンになりそうな気配だ。
(ABEMA『バズ!パ・リーグ』)