苦しみの先に大きな戦果を手にした。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Bリーグ第2試合、チーム羽生とチーム斎藤の対戦が5月13日に放送された。チーム3勝4敗で迎えた第8局、何としてでもカド番をしのぎフルセットに持ち込みたいチーム斎藤からはリーダーの斎藤慎太郎八段(30)が出陣。梶浦宏孝七段(27)との一戦を制し、自身にとってもチームにとっても大きな1勝をもぎ取った。リーダーの勝利に、チームメイトの黒田尭之五段(26)、冨田誠也四段(27)は大興奮。「うわー!フオー!」と言葉にならない歓声を上げて大喜びしていた。
前回準優勝チームのチーム斎藤。何としてでも本戦に出場し悲願の優勝を達成するため、簡単に勝利は譲れない。そんな強い思いを抱えた斎藤八段だったが、絶好調のチーム羽生を前になかなか実力が出し切れず、個人で2連敗。焦りの気持ちもにじませつつ、フルセットに持ち込むための勝負所で自ら第8局登板に名乗りを上げた。
対するは、どんな時でも乱れず冷静な指し回しが魅力の梶浦七段。戦型は相掛かりが志向された。これまでの戦い方と同様に、持ち時間をたっぷり投入しながら読みを入れ、一手一手慎重に指し進める斎藤八段。梶浦七段の金上がりの工夫にも動じず、冷静にポイントを積み重ねていった。第2試合で連敗している梶浦七段も負けられない思いは同じ。斎藤八段に離されまいと必死に食いつき、終盤戦で猛追した。しかし、斎藤八段は豊富な経験を生かして梶浦七段を振り切り、138手で勝利。今大会初勝利と、チームをフルセットに導く貴重な白星をもぎ取り「本当に苦しんだ1勝だった。勝つって本当に大変。こんなに1勝が遠いとは…」と安堵の表情を浮かべていた。
この勝利に、チーム斎藤の控室では黒田五段と冨田四段が大はしゃぎ。前大会ではエントリートーナメントを勝ち抜き「チーム下剋上」を結成していた両者とあり、その絆は強く今大会では新たなリーダーの元で力を発揮している。モニターを食い入るように見つめていた2人は、リーダー待望の勝利に「うわー!フオー!」「よかったああ」と歓声を上げて大興奮。喜びを爆発させていた。
団体戦ならではの光景とあり、ファンも一緒に歓喜。「とみーええなあ」「うおおおおお」「これは叫ぶよなあw」「いやー楽しいね」「良いチームやね」「トミーのリアクションは見てて楽しいね」「リーダーやったね」と、ともに喜びを共有していた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)