レーシングドライバーの極めて高い技量を持ってしても避けられない接触は、最速バトルの結末を象徴する見逃せないシーンのひとつでもある。
名勝負が僅かな差で接触へと転じてしまった衝撃の瞬間。“日本最速”のレース『スーパーフォーミュラ』で起きた今シーズンで最も印象に残るシーンは大きな反響を呼んだ。
「絶対に譲りたくない」「絶対にここで抜きたい」せめぎ合いが生んだ名勝負の結末
もし「今季の印象的なクラッシュシーンは?」というアンケートを取ったら、第3戦の大湯都史樹(TGM Grand Prix)と野尻智紀(TEAM MUGEN)のクラッシュを挙げる人は多いかもしれない。
決勝11周目、予選でポールポジションを獲り、決勝では今季初優勝をかけて良いペースで走っていた大湯に対し、これまで2連覇を成し遂げている野尻が追突。そのまま2台はクラッシュバリアへ……。両者リタイアとなった。その後、野尻に対し「危険なドライブ行為」との裁定が下り、競技結果に30秒加算、ペナルティポイント1点が与えられた。
無線でもやるせない思いを爆発させた大湯が、ガードレールへ座り込み、その側に野尻が立ち尽くす様子は心に残るシーンとなった。
抜群の速さと焦りが生んだ激しい接触…“無念のリタイア”の舞台裏
そして第4戦、大湯は、そのクラッシュを払拭しようと臨んだが、またもやリタイヤに追い込まれてしまう。
前線でマシンが大破した関係で、なかなかセッティングが合わせきれず、予選順位は沈み、14番手からスタートとなった。しかし、決勝では抜群のスタートを決め、6つポジションアップし、その後もオーバーテイクを続ける鮮やかな走りを見せた。
ところが、30周目に阪口晴南(P.MU/CERUMO・INGING)をアウトからオーバーテイクしようとした際に接触。そのままコースアウトし、無念のリタイアを喫した。
このクラッシュに関しては、大湯に対して「危険なドライブ行為」との裁定がなされ、競技結果に30秒加算のペナルティとペナルティポイント1点が科された。
特に大湯は今季クラッシュによってチャンスを逃すシーンが多い。速さは折り紙付きなだけに今後は接触を避け、活躍するシーンが増えることを願うばかりだ。
(ABEMA『スーパーフォーミュラ2023』/(C)JRP)