具体性があるわけでもないが「何か」はしっかり伝わる言葉だ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Cリーグ第1試合、チーム広瀬とチーム菅井の対戦が5月27日に放送された。チーム菅井は、菅井竜也八段(31)、西川和宏六段(37)、船江恒平六段(36)という関西所属の仲良し三人衆。一番若い菅井八段がリーダーを務めるが、一番はっきり物も言う。先輩・西川六段が連敗して帰ってきたところ、菅井八段は笑顔を見せながらも親しみをこめて「ちゃんとやって!」と連発。このやりとりに、ファンから「愛の鞭だあ」「説教コント」といった反応が続出した。
親しい間柄だからこそ伝わる言葉だ。菅井八段はドラフト会議の2巡目、将棋界一の人柄のよさと猛プッシュした西川六段を指名。船江六段を含めた3人組の結成については「最高です!」と連呼していた。激戦となったチームとしての初戦も、常に控室には笑いが起こり、実にいいムードで戦いを進めていた。
中でもファンの印象に残ったのが「ちゃんとやって!」なシーンだ。第2局、第4局と西川六段が続けて近藤誠也七段(26)に敗れて戻ってきたところ、菅井八段は開口一番「今のはないですよ(笑)。あれはないわ」と、笑顔混じりに叱咤激励。さらには「ちゃんとやって!ちゃんとやってください。ちゃんとやってほしい」と、とにかく「ちゃんと」を繰り返した。特に具体的な指し手に対してコメントするわけでもなく、本来の力を出せばいい勝負になると信じている後輩からの言葉。西川六段も「ちゃんとやってるんですが(苦笑)」と返すのが精一杯だった。
「ちゃんとやって!」という言葉だけ見れば、少々きつく感じるところもあるが、実際には「ちゃ(↑)ん(↓)とやって!」と、少しイントネーションが入ったもので、本人たちの表情を見ても、本気の叱咤というよりも、どこかしら“ネタ感”があるもの。視聴者も、雰囲気のよさを感じ取ったようで「いい空気だなぁ」「一喝モード」「ちゃんとやれは草」というコメントが溢れていた。
なお西川六段は第7局でも近藤七段と、この試合3度目の対戦し「ちゃんとやった」ことで、大会初勝利をゲットしていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)