韓国軍は、北朝鮮が31日午前6時28分頃、東倉里から南に向け、弾道ミサイルの可能性がある飛翔体1発を発射したと発表した。韓国軍は、飛翔体は韓国西部オチョン島から西に200キロ余りの黄海上に正常ではない飛行で落下したとしている。
北朝鮮は、事実上の弾道ミサイルの発射を5月31日午前0時〜6月11日午前0時までの間に行うと通告しており、日本や韓国などは警戒を続けていた。今回、北朝鮮が自ら「失敗」を公表する形となったが、この「対外的な事前通告」も一因であったと思われる。
北朝鮮の国家宇宙開発局は、今回の欠陥を具体的に調査・解明し、対策を早急に講じ、できるだけ早く第2次打ち上げを断行していくと伝えている。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、北朝鮮の動きについて明海大学教授で安全保障が専門の小谷哲男氏に聞いた。
――今回のミサイル発射の失敗についてどう見ている?
「軍事偵察衛星を打ち上げることは事前に発表していた。そして、2年前に発表した北朝鮮の軍事5カ年計画の中にもこの打ち上げについても含まれていたので、計画に則って着実に必要な作業を行なっている。今回の失敗は北朝鮮も認めているが、こういうロケットの打ち上げは失敗から学ぶことが多いので、そこからさらに学んでより完成度の高いロケットを完成させる可能性がある」
――できるだけ早く次も打ち上げるとしているが6月11日まで気をつけるべきなのか?
「11日までの通告をそのまま生かして2発目を撃つのか。それとも、もう1発撃つ際に新たに通告を出すのかはまだはっきりとしない。北朝鮮が2発目を11日まで撃つ可能性も否定できないので、引き続き警戒をする必要はある」
――北朝鮮のミサイル開発はどの段階まで進んでいるのか?
「今回は偵察衛星の打ち上げということで『ロケット』を打ち上げたわけだが日本政府なども事実上の弾道ミサイルと表現している。これは人工衛星を宇宙空間に上げて衛星軌道に乗せるという技術は、実はミサイルの弾頭を制御する技術と同じだからだ。そういう意味では、今回打ち上げが成功していれば、北朝鮮のミサイルの精度がさらに上がったことになっていた」
――この軍事偵察衛星は一体何を偵察する狙いだったのか?
「北朝鮮は、朝鮮半島、日本列島、東アジアにいる米軍の動向をできるだけ把握したいと考えていると思う。ただ、この偵察衛星1基だけでは米軍の全体の動きを見極めることはできないので、この先4基、5基と打ち上げる。また、偵察衛星だけではリアルタイムで米軍の動向は監視できないので、長時間滞空できる無人機やドローンなども使って、米国の動きを把握し、万が一の場合には攻撃できる能力を高めようとしているのだと考えられる」
――今回、沖縄でJアラートが発信されたが、回数を重ねるにつれて受け止める側の国民の警戒は薄くなるのではないか
「Jアラートに関しては、既に国民の間で精度が高くないのではないかという意見が出ていて、鳴ったからといって避難する必要があるのかと思い始めていると思う。しかし、ウクライナのキーウでいうと、ほぼ毎日のように空襲警報が鳴り、市民はそれによって身を守れている。北朝鮮はミサイル発射しても日本国民が『またか』と思うのであればしめたもので、さらに撃ち続けると思われる。
北朝鮮のミサイル能力はかなり高まってきており、日本に届くミサイルも今後さらに改良するために実験をするはず。どこかの時点で日本の領域にミサイルが飛んでくるという可能性もあるので、Jアラートを軽視せず、しっかりと自分を守ることを考えるべきだ。そして、非難されるべきは国際法を無視して、日本の安全を考えずにミサイルを撃ち続けている北朝鮮なので、しっかりと非難の声を上げていくべき」
――今後のミサイルの頻度はどうなる?
「昨年、37回打ち上げられたミサイルのほとんどが短距離ミサイルで、主に在韓米軍や韓国軍を狙ったもので、北朝鮮はすでに完成したと発表している。次はより射程の長い、在日米軍基地、グアム、アメリカ本土を狙ったミサイルの開発、精度向上に力を入れることが予想される。そして、軍事偵察衛星も引き続き撃ち続けると思うので、頻度に関しては下がらない」
(『ABEMAヒルズ』より)
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