5月29日、日経平均株価が一時600円を超す大幅な値上がりとなり、取引時間中のバブル後最高値を更新した。翌日の30日も終値で29日より94円高い3万1328円となり、2営業日連続で1990年7月以来、約33年ぶりの水準に上昇した。
【映像】「コーラ」を飲みながら話す“投資の神様”バフェット氏(画像あり)
アメリカの債務上限問題で大統領と下院議長が基本合意したことを受けて、市場に安心感が広がったことなどが要因とされる中、海外投資家が日本株買いをけん引した。
また、今年4月、“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が来日し、投資する商社の首脳らと会談した。バフェット氏はここ数年、5大商社に投資するなど日本株の買い増しを進めていた。
三菱商事は今年3月までの1年間の決算で最終利益が初めて1兆円を超え、2年連続で商社のトップになった。今回の決算では、バフェット氏が投資する日本の5大商社のうち、三井物産も同じく、初めて最終利益が1兆円を超えたほか、住友商事や丸紅も過去最高の利益を更新している。
そんな商社の業績や、日経平均株価上昇の追い風となったのが、円安だ。去年は一時1ドル=150円という32年ぶりの円安水準となり、為替介入などで一度は落ち着いたものの、今年に入り再び円安が加速している。
財務省と金融庁、日銀の幹部は30日、急遽会合を開き、為替市場の動向などを注視していくことを確認。日銀の植田総裁は25日の会見で、大規模な金融緩和を継続する姿勢を改めて示している。
いまの株高の状況について、元日経新聞記者で経済アナリスト・後藤達也氏は「過去数十年の株式市場を見ても、歴史的に勢いのある金額だ」と話す。
「日本株の取引の約7割が外国人投資家だ。大きく報道されたバフェット氏の来日によって、ほかの外国人投資家が日本株を買うきっかけになった。東京証券取引所も上場企業に対して“活”を入れるようなアクションをとった。日本はアメリカと比べて、株主から預かった資本をうまく活用して、収益に結び上げていく力が弱い。『もっと改善してくれ』と強い言葉で指示を出したことで、多くの海外投資家が『日本企業が変わってくるんじゃないか』という見方をした。日銀も『金融緩和を続ける』と表明したり、賃金上昇率が久方ぶりの勢いで伸びてきたりして、10年、20年ずっと鈍かった日本の景気が変わるかもしれない。そういう見方が広がってきている」(以下、後藤達也氏)
“バフェット”効果とも呼ばれているが、この追い風はいつまで続くのか。
「今回はいろいろな要因が重なった。アジアでは中国の景気不安が強まっていて、その受け皿として、日本に注目が集まったところもある。日本の株価が半年後、1年後、どうなっているかはなかなか読みづらい。少なくとも、証券会社の人とは『ここ最近の株が買われる勢いは力が入っている』と話した。一時的に上がってすぐ元に戻ってしまうより、少し長い上昇相場の入口である可能性を示唆している人が増えているのは事実だ」
株高の一方で円安も進んでいる。国民は恩恵を受けられるのだろうか。後藤氏は「円安になった分、外国人観光客が日本で使う円の量は増える」とした上で「ホテル・外食業界が賑わって観光産業が潤うことは全体として景気にプラスになる。一方で、給料が上がりにくい中で、良いレストランの予約が取れなかったり、ホテルなどの値段が上がったりすると、ひとりひとりの生活という面では窮屈になる。全員が全員ハッピーというわけではない」とコメント。
「基本的に国が強ければ、持続的な通貨安にはなりにくい。海外で物がどんどん売れたり、Googleのように世界中で売れるサービスがあれば、その国にお金が入ってきやすくなる。長い目で見ると、日本経済の弱さが表れているといえる。インバウンドやトヨタのような輸出企業は採算が上がるが、賃金がなかなか上がりにくい中では、円安インフレを負担に感じる国民が多い。今後、賃金をいかに上げていくかが、日本経済成長のポイントになる」
日本経済の上昇基調を持続させるには、賃上げ以外に何が必要なのか。
「企業が資本をきちんと活用して、無駄遣いのところに資本を置いておくとかではなく、しっかり選別投資して、余ったら株主に返す。アメリカ型の経営を増やしていく必要がある」
(「ABEMAヒルズ」より)
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