将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Cリーグ第2試合、チーム天彦とチーム菅井の対戦が6月3日に放送された。「関西最強」のチーム名を持つチーム菅井に対し、佐藤天彦九段(35)、戸辺誠七段(36)、三枚堂達也七段(29)のそれぞれの頭文字を取った「天辺堂」・チーム天彦が躍動。5勝1敗と圧勝し、幸先の良い予選スタートを切った。
日頃から交流を持ち、仲良しメンバーでの結成となったチーム天彦にとってはこの第2試合が初陣。第1局はフィッシャールール経験豊富な三枚堂七段が先陣を切った。対するはチーム菅井で大会初出場の西川和宏六段(37)。公式戦を通じて初対戦となった本局では、西川六段の先手で三間飛車の出だしとなった。先手ペースでの進行となったが、三枚堂七段が一瞬の隙を突いて逆転。チームに勢いをもたらす先勝を持ち帰った。
この勢いをつなげたいチーム天彦は、2局目で早々にリーダーの佐藤九段が登場。奨励会入会同期の船江六段の対戦となると、横歩取りの将棋でまさかの事態が発生。根性の粘りから終盤で流れを引き戻した船江六段だったが、佐藤九段からの王手を放置してしまい反則負けに。フィッシャールールならではの“まさか”の見落としに、対局者はもちろん、各控室、視聴者からも悲鳴が上がった。これでチーム天彦は2勝目とし、迎えた第3局では戸辺七段が持ち味の“戸辺攻め”を炸裂。西川六段を破って3連勝を飾った。
勝利に王手をかけるべく、第4局では三枚堂七段が2度目の登板。対するチーム菅井からは、チームの危機とあり菅井竜也八段(31)が登場した。“タツヤ”対決は三間飛車から相穴熊の戦いに。菅井八段が力強い差し回しを見せたが、“桂馬の貴公子”の異名を持つ三枚堂七段が▲6六桂と桂馬を躍動させ、111手で勝利。相手リーダーを破り、チーム勝利まであと1勝の位置へと導いた。
いよいよカド番に立たされたチーム菅井は、第5局で西川六段を投入。チーム天彦からは戸辺七段が登板し、相振り飛車の華々しい戦いとなると、絶対絶命のピンチに立たされた西川六段が▲6二歩からカウンターを決めてチーム待望の初勝利を飾った。チーム勝利に“王手”をかけているチーム天彦だが、このまま流れを譲るわけにはいかない。第6局では、佐藤九段自ら出陣すると、相手も菅井八段と第2試合初のリーダー対決が実現した。後手の菅井八段は四間飛車の作戦を用いると、相穴熊の戦いに。本局で決める、とばかりに佐藤九段が熱い闘志をみなぎらせ、鋭い攻めで菅井八段を圧倒。157手の熱戦を制して、第2試合の決着を付けた。
終わって見れば5勝1敗と大差で勝利を飾ったチーム天彦。佐藤九段は「チームメンバーがたくさん勝ってくれた」と戸辺七段、三枚堂七段を労った。さらに、「5連勝とはいかなかったが、星を離して勝つことができてこれ以上ない戦いだったと思う」と試合を総括。気心の知れたチームメンバーとあり、全員が伸び伸びと対局に臨むことができたことが勝因だったようだ。次戦の第3試合では、予選突破をかけて広瀬章人八段(36)率いるチーム広瀬と対戦。「優勝候補のひとつ。緩まず戦っていかなければと思います」と気を引き締めていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)