プロ麻雀リーグ「Mリーグ」、セミファイナルシリーズの最終戦でがっくりとうなだれた選手がいた。U-NEXT Pirates・鈴木優(最高位戦)は、厳しい条件ながら大逆転でのファイナルシリーズ進出もあった中でラスに終わると、試合後に行われた各選手のインタビューに顔を上げて聞いていられなかった。チームにとって大事な試合を任され、結果が出せなかった悔しさは、1人で戦ってきた麻雀プロ人生では感じられないものだった。孤高の戦闘民族が、仲間を得てもっと戦うことが楽しくなった。鈴木優のMリーグ1年目は、そんな年だった。
前シーズンから2人のメンバーが入れ替わり、新戦力として加わったのが鈴木優と仲林圭(協会)だった。自身は「外面十段」と謙遜するが、その人柄のよさはプロ麻雀界でも有名で、同時に押しが猛烈に強い麻雀とのギャップがおもしろい。リーダー小林剛(麻将連合)にして「度肝を抜かれました。我々の常識でははかれない打牌をする」と驚いたほどだ。Mリーグ初年度、壮大に行われたドラフト会議で「呼ばれる可能性は0%」ながら会場に足を運び、次々とMリーガーになっていくプロ雀士たちを見届けた。「他の人が壇上に上がっていくのを悔しいと思わないといけないと会場に行きました。よく覚えています」。それから4年が経ち、U-NEXT Piratesから指名を受けて晴れてMリーグ入り。前年、所属する団体のNo.1タイトル、最高位を獲得したことも大きかった。
攻撃的な麻雀と優しい性格に加え、自分で履いている靴下を必死に探してみたり、草団子に「うわっ!緑だ!」と驚いてみたりと、天然ボケの一面も持つだけに、また愛される。ただ本人からすれば、長く1人で戦ってきた自覚がある。「サッカーを辞めてから、中学からずっと1人でした。友だちも全然いなくて、なんかずっと1人で生きてきた感覚でした」。妻と2人の娘がいる。もちろん麻雀界にも仲間はいる。ただし、同じ目標に向かって長く時間を共有する経験は、実に刺激的だった。「(Mリーグに)入る前はトップだったら喜んで、ラスだったら喜べないような人間に自分は近いと思っていました。結果でしか喜べないというか。人間ってそんなもんだよなと思っていたのが、もう全然違うんです」。小林、瑞原明奈(最高位戦)、仲林の3人と同じ空間で過ごし、自分が戦えば応援され、仲間が戦えば自分が応援する。「絆が生まれました。一緒に悲しんで、一緒に喜んで。これがMリーグかと。パイレートでよかったと、とても思っています」と心底感謝している。
単なる麻雀の団体戦というだけでなく、一緒に戦う楽しさ・苦しさ、いろいろひっくるめた醍醐味を味わった。それだけにセミファイナル最終戦で勝てなかった自分にも悔いが残る。「ファイナルに行って、チーム4人で優勝するまでがストーリーだと思っていたので、敗退したことはとてもショックでした」と、素直に落ち込んだ。それでもしっかり沈み込んだ分、次は浮上する。「チームメイトのことがとても好きで、チームメイトのうれしい時もつらい時もどっちも共有したいと思えるんです。自分が打つのが一番チームのためになるように、そういった舞台で結果を出せる選手に成長したいです」。某アニメの戦闘民族は傷ついてから復活するほど強くなった。来シーズンの鈴木優は、Mリーグ1年目よりきっと強い。
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)






