マイノリティ優遇は“逆差別” 大学入学者選抜巡り提訴 最高裁の判断は
【映像】「女子枠」を設置した東京工業大学
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 社会的不平等を解消するためのアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)。いま、アメリカの連邦最高裁で大学入試に関しその是非を問う2つの訴訟が起きている。

【映像】「女子枠」を設置した東京工業大学

 学生の多様性を確保するため、アメリカの多くの大学では1960年代からアフリカ系アメリカ人やヒスパニック、その他の少数派を優遇する措置がとられている。

 これに異を唱えたのが、学生や保護者など2万人超で構成されると自称するNPOだ。この団体は“公平な”入学者選抜を求め、ハーバード大学とノースカロライナ大学に対し、白人やアジア系アメリカ人の受験者を差別していると訴えた。

 差別を是正するための制度ではあるものの、優遇措置を受けられない人にとってはそれが逆に差別になるとして、これまでは白人の保守層を中心にアファーマティブ・アクションの禁止を求める声が上がっていた。

 連邦最高裁はこれまで一貫して合憲としてきたが、今回その判断が覆ろうとしている。その背景にあるのが、前トランプ政権だ。9人の最高裁判事のうち6人を保守派が占め、長年合憲とされてきた人工妊娠中絶を巡る判例が去年覆されるなど、その後の最高裁の判断にも影響を与えている。

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■日本でも進むアファーマティブ・アクション

 様々な人種が集まるアメリカのみならず、近年は日本でもアファーマティブ・アクションの動きが進んでいる。女性の活躍推進に向けた取り組みだ。

 東京工業大学は2024年の入試から“女子枠”を設置。富山大学や名古屋大学などでも同様の制度が導入されるなど、日本の大学入試でも多様性の確保を重視するための措置が始まっている。

 また、企業の採用活動や政治の世界でも積極的に女性の活躍の場を広げる動きが加速する一方で、SNS上では「“女性だから”という理由だけで優遇するのはおかしい」「女性が社会に出ることで…って言うけど、その代わり能力の高い男性の未来は奪われる」などの声も上がっている。

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 アメリカ現代政治外交を専門としている、上智大学の前嶋和弘教授に話を聞いた。

 アファーマティブ・アクションは禁止となる可能性が大きい?

「アメリカの最高裁は音声が公開されている。それを聞くと、かなり難しいという印象。保守派の判事6人はアファーマティブ・アクションについて『違憲だ』『なくてもいい』という意見で一致している」(以下、全て上智大学・前嶋和弘教授)

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 今回の判決、アメリカ国内の注目度は?

「ものすごく高い。最高裁の判決が出た時にはトップニュースになる。点数の優遇措置を違憲と決めた2003年のニュースでは、25分ほどの番組で約15分間がアファーマティブ・アクションの話だった。影響は大学だけではなく、雇用や政治、日常生活のいろいろなところに及び、大きなアメリカの歴史的転換点になる」

 日本では、東大が女性の教員の採用目標を掲げるなど、女性の登用でアファーマティブ・アクションの概念が用いられている。最高裁判断の影響は?

「違憲だとしたら、日本でのこうした取り組みが『逆差別だ』という意見も出てくるだろう。日本や世界に大きな影響を与える」

(『ABEMAヒルズ』より)

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