政府は、転職を目的としたリスキリングに最大で56万円を補助する制度を始める。果たして効果はあるのだろうか。
【映像】「動画編集講座」「就職対策の面談」…リスキリングの様子
新たな業界へと転職するための「リスキリング」。いわゆる“学び直し”について、政府はそれにかかる費用を支援する新制度を発表した。1人あたり40万円を上限に受講費用などの半額が補助される。さらに、転職に成功して1年間継続して働いた場合には追加で16万円が支給され、最大で56万円の補助となるという。
政府は「所得を向上するためにはキャリアアップが必要だ。そうした方向性を応援していきたい」としている。ただし、支援の対象は“すでに企業等と雇用契約を締結している人”に限られている。(フリーランスや経営者は対象外)
この制度に街の人は―。
「ITは全く業界が違うので、学べるのであれば使って見たい。支援制度があれば踏み込む材料にはなる」(20代不動産業)
「『そこじゃない!』という思いがある。税金を使う優先順位としては間違っていると思う」(40代個人事業主)
「転職やキャリアチェンジにコストを投じるのは(日本では)根付いてない感覚はある。今は珍しいものだと思うが、徐々に選択肢として当たり前になっていくのではないか」(学び直し講座を行う「WorX株式会社」の藤原義人CEO)
このニュースについて、東京都立大学の宮本弘暁教授は「労働市場の流動化は日本経済に必要なことだ。労働移動が活発化すれば、個人がスキルを身につける必要があるため、方向性は正しい」とする。
ただ、「転職」を条件としたことについては、「労働者の学び直しは転職希望者に限った話ではないし、転職希望者も身につけたいスキルは様々。個人が自由に学び直しをすることができ、それをサポートする『自己啓発優遇税制』のようなものを考えていくことが重要。例えば講習を受けたり本を買ったりするなど、スキルアップに使った費用を控除するやり方でもいいのではないか」とコメントしている。
政府の支援制度は、キャリアアップや所得の向上に繋がるのだろうか。『ABEMAヒルズ』に出演した上智大学の前嶋和弘教授は「狙いは見えるが、確かに“そこじゃない感”はある」として考えを述べる。
「転職を条件にすることで労働市場は流動化できるかもしれない。だが、所得の向上やキャリアップに繋がるかどうかは不透明だろう。政府としては、プログラミングや情報・データ分析などに産業をシフトさせたいのかもしれないが、我々の学びは毎日あるし、様々な仕事がまさに学びだ。
例えばアメリカなどでは、中小企業の労働者をターゲットにしたスキルアップのための補助金などがある。そういった方針も考えられる」
(『ABEMAヒルズ』より)
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