そのネタ、後でお願いします!頼もしい“姐さん”が、切れ味鋭い進行ぶりだった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Dリーグ第2試合、チーム康光とチーム糸谷の対戦が6月24日に放送された。この試合の大盤解説で聞き手を務めたのは、プロ生活も40年を超えた山田久美女流四段(56)。解説を務めた佐藤紳哉七段(45)はユーモア溢れるトークが特徴だが、持ちネタを披露しようとした瞬間、さっと止める抜群の判断。ファンからも「桂封鎖」「後でお願いしますは草」といった声が集まった。
【映像】佐藤紳哉七段のかつらネタをスパッと斬る山田久美女流四段
山田女流四段はアマチュア大会で優秀な成績を収めると、15歳で女流棋士に。1989年に女流王将戦でタイトル初挑戦を果たすと、2度目の挑戦は実に25年ぶり。当時としては女流棋戦の最年長挑戦記録の47歳8カ月で、タイトル戦に登場した。2017年6月からは日本将棋連盟女流棋士会会長も務めている。
ハイペースで進むフィッシャールールの対局を、大会出場経験もある佐藤紳哉七段との会話で伝えていた山田女流四段だが“一手”が光ったのは第3局だ。佐藤康光九段(53)と徳田拳士四段(25)の対戦は盤面左辺を中心に激しい攻防が繰り広げられる展開に。中盤、徳田四段側に▲8七桂という候補手が出たところ佐藤紳哉七段が反応した。「8七桂とAIが示していました。まさに桂(かつら)をかぶる手。見たかったですね。私のかつらも飛んだかもしれない」と興奮気味に話したが、これは佐藤紳哉七段が「桂=かつら」のつながりから、大盤解説時に自分のかつらをスポンと飛ばす持ちネタがあってのことだ。ただ、超早指しの対局中、大盤で解説するシーンはなく、ここではいくら佐藤紳哉七段がかつらを飛ばしたところで、誰にもわからない。するとすかさず山田女流四段は「今、見えない(笑)。後でお願いします」と一刀両断した。
この素早い切り返しにファンからは「桂封鎖」「後でお願いしますは草」というコメントが多く集まった。目の前の将棋を伝えるだけでも忙しいのに、真横で見えないネタを披露しようとされればさらに忙しさが増すところだが、さすがはベテラン、咄嗟の判断で切り抜けていた。なお、佐藤紳哉七段は対局後の解説で、きっちりとかつらを取っていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)