数々のドラマが起きたプロ麻雀リーグ「Mリーグ」2022-23シーズンの個人スコアトップ、MVPに輝いたのはKONAMI麻雀格闘倶楽部・伊達朱里紗(連盟)だ。2021-22シーズンから加入し1年目から活躍したが、2年目には開幕日に役満・四暗刻をアガるスタートダッシュを決めると、苦労も多い道中だったが最後は激しいMVP争いも勝ち切り、タイトル奪取に成功した。まだプロ雀士になってから丸4年を経過したところで、飛躍的に力をつけた姿には、その成長ぶりを見守った仲間たちも驚くばかり。強敵揃いのMリーグで輝けたのも、どんどんと学んでいく吸収力、悔しさを忘れない負けず嫌い、そして謙虚さがあるからだ。
Mリーグデビュー1年目から32人中4位の大活躍。当時の最高スコアである10万5500点を叩き出すなど華々しく、それでいて通好みの打ち回しを見せるなど、早々に関係者・ファンから高く評価された。活躍した翌年に苦戦する「2年目のジンクス」もどこ吹く風。いきなり役満をアガる派手なスタートを切ると、2022-23シーズンも伊達が個人スコア下位に沈んで苦しむという季節は訪れなかった。
試合中は冷静に見えるが、内心では多くの葛藤がある。高い雀力こそあれ、Mリーグという注目の舞台には、いろいろなものがつきまとう。「舞台慣れしているはずなんだけど、その舞台の大きさを知っちゃったからこそ怖いという気持ちが出るようになった。何もわからず戦うぞ、みたいな気持ちになりきれていない」とこぼしたことがあった。Mリーグでは勝者だけでなく、敗者もインタビューを受ける。その際、求められるのはなぜあの選択をしたのか、どんな思考でいたのかというもの。無意識のうちに目の前の戦いよりも、その後に説明できることを考えてしまうようになっていた。「集中して楽しめる感覚がすごく薄くなっていた。これを切って失敗して、何か言われているというのが頭に流れるようになってきて…」。本来戦うべきは卓で向かい合っている3人。それ以外のことに気持ちを引っ張られることに悩んだ。
吹っ切れた契機は尊敬する先輩からのひとことだ。同じ団体に所属するEX風林火山・勝又健志(連盟)とイベントで一緒になった際、高く評価していると直接伝えられた。「今のままの麻雀を打っていれば絶対に勝ち続けられるし、Mリーグの成績も偶然じゃない、勝つべくして勝っていると。強くて信頼している人に言ってもらえて大丈夫だと思えました」。不安をかき消そうと1人で考えることが、余計に不安をかき立てることもあるが、強者と認める人からの言葉で、麻雀がまた楽しく思えるようになってきた。
悩んでもなおくじけないのは、持って生まれた負けず嫌いによるものだ。プロ入り前から麻雀を打つ仲間から出てくる言葉は「すごい負けず嫌い」「本当に勉強熱心、熱意がめちゃくちゃ伝わってくる」というもの。仲間同士の麻雀でも負けたままでは終わらない。勝つまでやる。伊達は「当たり前じゃないですか。頑張るも負けず嫌いも当たり前すぎる。負けず嫌いと特に思っていないけど、負けず嫌いらしいです(笑)」と、あっさり答えた。競技を問わず、負けたくないがために自分をどこまで追い込めるかは、トップ選手になれるかの重要な資質の一つ。伊達はそれを備えていた。
周囲も認める2年目のMVP獲得だが、チームの初優勝を逃したこともあってか、MVPのメダルを首にかけられても、最終日には笑顔らしい笑顔は見られなかった。「麻雀の内容に関して非常に反省点が多かった。頼もしいチームメイト3人に頼る場面がスコア以上に多くて、自分も4人のうちの1人としてしっかり戦力になっていきたいと感じた一年でした」と、謙虚な言葉ばかりが続いた。Mリーグ史上初となる2年連続MVP。過去の自分にも負けたくない伊達が、偉業達成に向けてまた練習に励む。
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)






