将棋の王座戦挑戦者決定トーナメント準決勝が6月28日、東京・将棋会館で行われ、藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)が羽生善治九段(52)に123手で勝利し決勝進出を決めた。藤井竜王・名人が見せた卓越した終盤力に、解説陣は「打たせて取るピッチングのよう。ビックリしました」と驚きの声を上げる場面も。注目の七冠経験者対決を制し、堂々挑戦者決定戦へと駒を進めた。
【映像】藤井竜王・名人と羽生九段が激突!王座戦準決勝ハイライト
令和の七冠王か、平成の永世七冠保持者か。藤井竜王・名人と羽生九段の対戦は、2023年1~3月に行われたALSOK杯王将戦七番勝負以来。シリーズは藤井竜王・名人が4勝2敗で防衛を果たしたものの、羽生九段の多種多様な戦型選択で大熱戦が繰り広げられた。約3カ月ぶりの再戦となった本局は、決勝進出をかけた大一番。ぴんと張り詰めた空気の中で行われた振り駒で、藤井竜王・名人の先手に決まった。
若き絶対王者は得意の角換わりに誘導。しかし、「仕掛けた後、少し進んでみると攻めが軽い形になってしまった」。互いに持ち時間を大量につぎ込んで難解な局面を読み合い、羽生九段は攻撃を決断。後手から飛車金両取りの銀を打ち込まれ、藤井竜王・名人は「両獲りをかけさせて、という順を選んだんですけど、そのあたりに誤算があって苦しい変化になってしまった」とぎりぎりの中盤戦を振り返っていた。
圧倒的な終盤力を誇る藤井竜王・名人とあり、若干の苦しさを感じつつも相手に手綱は渡さない。攻守の要として馬を据えると、銀で自陣を補強しつつ後手の攻めを催促した。羽生九段のラッシュともいえる猛攻をしのぎつつ、藤井竜王・名人は反撃のチャンスを狙っていく。一見玉が怖い形にさらされる中で飛車を回って攻撃態勢を整える冷静な勝負術に、ABEMAに出演した飯塚祐紀八段(54)からは「打たせて取るピッチングだったんですか…。ビックリしましたね」の声が上がっていた。
将棋界屈指のスター対決とあり、白熱の終盤戦ではファンも大興奮。視聴者からは「はやいードキドキする…」「早指し戦かな!?」「めっちゃ駒で会話してる」「終盤鬼なのよ」「怖いよう」「読みがあってるんだろうなー」など多くのコメントが寄せられていた。
最後は藤井竜王・名人が飛車を成って後手玉に迫ると、「竜を入って少し攻めを余せそうな形になったかなと思いました」。戦力差が拡大したところで、羽生九段が投了。藤井竜王名人が勝利を掴んだ。
藤井竜王・名人にとって王座戦は6期目の参戦で、初出場した2018年(第66期)のベスト4を更新。堂々決勝進出を決め「しばらく振るわない成績が続いていたので、今期ここまで進めたことは良かったかなと思っています」とホッとした表情を見せた。デビュー当時からの研究パートナーでもある永瀬拓矢王座(30)への挑戦権獲得まで、あと1勝に迫る。次戦では渡辺明九段(39)ー豊島将之九段(33)戦の勝者と激突とまだまだ厳しい戦いは続くが、八冠挑戦への期待はさらに膨らむ。誰も見たことのない景色へ、若武者の躍進は止まらない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)