「意図せず定期購入」消費者庁が“ダークパターン”に注意喚起 米当局がAmazon異例提訴
【映像】パッと見は普通でも…ララさんが騙された“通販ページ”(画像あり)
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 アメリカ連邦取引委員会がAmazonを提訴し、注目を集めている。問題になっているのは「ダークパターン」だ。

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 ダークパターンとは、ユーザーを騙して意図しない行動へ誘導する手法のこと。例えば「今だけお得!」とカウントダウンを表示したり、「残りわずか!」などの煽り文言で商品を買わせようとする手法を指す。また「いつでも解約できる」と謳っていたのに電話が繋がらず、解約手続きができないといった状態もこれに当たる。

 アメリカ連邦取引委員会は、有料会員サービス「Amazonプライム」に意図せず登録させる設計だったことや、複雑な手順で解約を妨害していると指摘。数百万人を欺いて登録させたと主張した。これにAmazonは猛反発し、「お客がプライムを愛していることが真実。登録も解約も明快かつシンプルだ」とコメントを発表した。

 いまやダークパターンを使ったサービスは身近にあふれている。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、専業主婦のララさん(50代)も、ダークパターンに騙され、意思に反して化粧品の定期購入契約を結ばされた一人だ。

「ネットの広告には『休止や解約はいつでもできる』と書いてあった。『今だけチャンスの1880円でお試しができる』といった内容だ。特別クーポンを使って10分以内に申し込まないとダメだった。内容も見たが『定期購入』の文字はどこにも書いてなかった」

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 肌に合う・合わないなどの問題もあり「1回だけ試してみたい」と思い、クレジット払いで購入したララさん。細かな規約は読まなかった。

「最初に『今は混んでいるので1カ月くらいかかる』と広告には書いてあった。その後『クレジット払いからコンビニ後払いに変更させてほしい』とメールが来た。おかしいなと思って調べたら、定期購入にされていて、解約ができなくて困っている人がたくさんいた。品物も来ていないし、支払いもしていないので『キャンセルしたい』と連絡したら『特別なクーポンを使っているので、4回分を払わないと解約ができないコースだ』と言われた。連絡をして初めて自分も定期購入になっていたことが分かった。コンビニ後払いにしてほしいと言ってきたのは、クレジット会社にたくさんクレームが来ていたからではないか」

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 法律上、ララさんのケースに問題はないのだろうか。弁護士の染谷隆明氏によると「購入前に『定期購入で合計いくら』という認識がなければ、契約取り消しが可能で、支払いは不要だ」という。また、広告画面と最終確認画面の両方に「定期購入」と「総額表示」が必要だといい、「規約だけでは不十分。特定商品取引法違反のおそれがある」とした。

 受け取りと支払いを拒否した際、催促の連絡は来たのだろうか。ララさんは「はがきが2枚来て、メールでも『払ってください』と連絡があった。品物が来ても、受け取り拒否をして返品した。だが『定期購入になるので請求は残っているから、支払いをしてください。しないと法的処置をとります』と連絡が来た」という。

 『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』(翔泳社)の著者で、UXライターの仲野佑希氏は業界の動きをどう見ているのか。

「まず、Amazonの件は起こるべくして起きたと思う。欧米の消費者団体は、以前から指摘していた。特にアメリカは消費者意識が高い。有料会員サービスのAmazonプライムは、無料会員のユーザーが商品をカートに入れて決済に進む過程で『次に進む』というボタンを押しただけで、有料会員に入ってしまっている。解約も、画面上で引き留めがあったり、分かりにくいボタンの選択肢から選ばなければならず、これらが問題視されている」

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 国民生活センターなどではララさんのようなトラブル相談が増えているという。

「ウェブページ上のデザインの話になるが『初回お試し』『いつでも解約可能』といった、消費者側の気を引く言葉は大きく書いてある。一方で、企業側にとってあまり都合の良くないことが小さくあったり、隠してあったりする。消費者を煽るような表現をして切迫感を演出して、購入を促すのもダークパターンの中でよく見られる。定期購入に関しては、やはり販売者側に明記する義務がある。本当に基本的なところだが、消費者側も急いで買わず、一呼吸置いてから買う習慣をつけてほしい」

 仲野氏によると、カウントダウンタイマーが実質のセール期間を示していないケースもあるという。

「いつ見ても10分間のタイムセールが行われているウェブサイトもある。自動でカウントを回しているだけの非常に悪質なケースだ。『このページを何人が見ている』といった表示も、ブラックボックスになっていて、本当に正しいのか分からない。これは、いわゆる行動心理学の社会的証明、ソーシャルプルーフと呼ばれるもので、ユーザーが焦る演出の一つになっている」

(「ABEMA Prime」より)

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