将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Dリーグ第3試合、チーム糸谷とエントリーチームの対戦が7月1日に放送された。フルセットの大激闘の末、5勝4敗でチーム糸谷が勝利。ぎりぎりの攻防戦が続いた第8・9局を担ったのは森内俊之九段(52)だった。リーダー級の活躍で、予選個人成績は4勝2敗。圧巻の勝ちっぷりで存在感を示した。
絶対絶命のピンチでも、これ以上に頼りになる大先輩はいない。予選突破をかけて激しい戦いが繰り広げられた予選Dリーグでは、チーム糸谷はチーム康光、エントリーチームどちらの試合でもフルセットの大激闘に。全18局のフルマッチを戦った。エントリーチームとの第3試合では、第1局で徳田拳士四段(25)が先勝を飾ったものの、2局目から3連敗を喫する苦しい展開に。チームの大ピンチの要所をリーダーの糸谷哲郎八段(34)がしのぎ、なんとか勝利への望みをつないだ。
終盤戦の第7局時点での残すカードは糸谷八段1回、森内九段2回となっていたが、カド番で後がないチーム糸谷は勝負所に糸谷八段を投入。エントリーチームの郷田真隆九段(52)とのリーダー対決で大逆転勝利を飾り、3勝4敗と食らいついて見せた。残すカードは森内九段が2回。しびれるような展開で迎えた第8局は若手伸び盛りの古賀悠聖五段(22)との対戦となったが、終盤のよどみのない指し回しから一気に寄せ切り、快勝を飾ってみせた。
森内九段はタイトル12期、永世名人の有資格者でもあるレジェンドで、一般的に若手有利とされるABEMAトーナメントでも高い適性を発揮。今期ドラフト1位指名した糸谷八段も「居飛車党の本格派で棋界に並びなき人」と評価していた。そんな森内九段が仲間とあり、チームメイトも厚い信頼を寄せている。連投となった最終第9局も「最後を飾る舞台で指せて嬉しく思います。これで最後ですので、力を出し尽くしたいと思います」と語り、行方尚史九段(49)との対戦に向かった。
最終局は振り駒の結果、森内九段の先手番に。チームメイトとの作戦会議で語っていた相掛かりを志向すると、行方九段が序盤で工夫を見せたものの「何か誤算があったようで、早い段階で有利になることができた」と抜け出すことに成功。公式戦でも幾度となく経験してきた大勝負で冷静な指し回しを見せ、57手で勝利をもぎ取った。
衝撃の圧勝に、控室の糸谷八段も「強し!」。視聴者からも「強かっこいい」「森内先生つよすぎる」「あっさり圧倒的」「鬼強いな」「ゲームの王者」「つっよ!」と多くのコメントが寄せられていた。
2試合ともフルセットの最終局で勝利を決めたのは森内九段。リーダー級の大活躍を見せた頼れる“レジェンド”は、「厳しい戦いが多かったですが、貢献できて良かったです」と感慨深げに語っていた。予選では、新鋭から同世代のベテラン棋士まで全6局を4勝2敗の好成績で終えた。「展開が目まぐるしいのでスピードについていけない場面もありましたが、その中で我慢強く戦って結果につなげることができて良かったです」と晴れやかな表情を見せていた。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)