何千どころか何万という将棋を見てきたアラフィフの名棋士たちでも、驚きまくる一局があるようだ。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」予選Dリーグ第3試合、チーム糸谷とエントリーチームの対戦が7月1日に放送された。第4局はチーム糸谷・徳田拳士四段(25)と、エントリーチーム・古賀悠聖五段(22)の若手同士の対戦。お互い手の内を知る両者は激闘を繰り広げると、最終盤ではまさかの展開が待っていた。これを見ていた森内俊之九段(52)、郷田真隆九段(52)、行方尚史九段(49)の3人が、控室で大はしゃぎすることになった。
森内九段、郷田九段、行方九段の3人はこれまで順位戦をはじめ、各棋戦の上位で数々の名局を生み出してきたアラフィフ棋士。特に森内九段と郷田九段は七冠独占・永世七冠を達成した羽生善治九段(52)と同学年ということもあり「羽生世代」とも呼ばれた。この3人が周囲を驚かせるような対局を生むことの方が多かっただろうが、今回ばかりは3人が一斉に驚く側に回った。
後手の古賀五段が先にペースを握ったと思われたものの、徳田四段がひっくり返して終盤に突入。残り時間がわずかの中、徳田四段が勝ち切れるか、古賀五段が迫れるかという展開になった。するとここで時間切迫のためか徳田四段にミスが生じ、自玉に即詰みが発生。古賀五段は千載一遇のチャンスを逃さず、きっちりと詰まし切った。
形勢が大きく二転三転する激戦に、対局者以上に大騒ぎだったのが控室で見ていた棋士たちだ。古賀五段を応援していた行方九段も思わず「まじかよ」とつぶやくと、郷田九段は「あっはっは。すごい逆転だな」と大笑い。一方、逆転負けを喫した徳田四段のチームメイト森内九段は「いやー!」と叫んで頭を抱えていた。対局中にはめったに見られない3人のリアクションはファンにも大好評。「これは面白い笑笑」「なんてこった」「ベテランがみんな頭抱えた」と大盛り上がりだった。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)