「まだ第2ステージですよね?」思考回路は異常を検知 まるでパリ目前のようなGCライダーたちの戦いがツール2日目で勃発 ステージ優勝はフランス人のラフェで、コフィディスに15年ぶりのツール1勝をもたらす!
【映像】いきなり“激アツ”だった第2ステージハイライト
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「まだ第2ステージですよね?」思考回路は異常を検知 まるでパリ目前のようなGCライダーたちの戦いがツール2日目で勃発 ステージ優勝はフランス人のラフェで、コフィディスに15年ぶりのツール1勝をもたらす!

 やはり今年のツールの第1、第2ステージは違った。スペインのビトリア・ガスティスからサン・セバスティアンの208.9㎞で争われたツール・ド・フランス第2ステージは、前日に引き続き優勝候補のヨナス・ヴィンゲゴーとタデイ・ポガチャルが一騎打ち。こうした戦いはツール3週目、そろそろパリのフィニッシュが感じられる頃に見られるものだが、中継の実況・解説も「第2ステージですよね?」「これ第17ステージじゃないですよね?」と、思考回路が異常を検知した様子。「ツールは長いのでゆっくり行きましょう」というひと昔前の考え方は、新世代には通用しないようだ。

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【GCライダー】General Classification(総合順位)の上位を争う選手のこと

 これまでのツールでは、このGCライダーたちが本格的な勝負を始めるのは大体3週目ごろで、今回のようにヴィンゲゴーとポガチャルのような、「ツールを2連覇したい選手」と「それを奪還したい選手」の戦いは、パリステージの前々日まで待たないと観られないと言ってもよかった。しかし今年は、ツール初出場の選手の逃げさえも許さない、ツール2日目にしてもうお腹いっぱいになるバトルを観ることとなった。

 この日はスタート直後から3人の逃げが決まった。その中には、昨年、宇都宮市でおこなわれたジャパンカップの勝者、ニールソン・パウレスも含まれていた。彼が逃げたのには様々な理由があった。まずは山岳賞ジャージをキープすること。逃げていれば、途中に設定された山岳賞ポイントを獲得する可能性が高くなる。山岳賞を守れば、毎日の表彰台に乗ることができるし、白に赤い水玉のジャージは国際映像でもよく目立つ。チームスポンサー名の露出度も上がるというものだ。そしてパウレスは、この日のフィニッシュ地点をレース名に配した「クラシカ・サンセバスティアン」で優勝している。当然、ゆかりのある地で勝ちたい。さらに加えるなら、妊娠中のお腹を抱えてフィニッシュ地点で待ってくれているパートナーに、ツール1勝を届けたかったのかもしれない。

 そんな思いの詰まったパウレスの逃げを、GCライダーたちは容赦なく潰しにかかった。いや、勝負なのだから潰すのは悪いことではない。でもツールは始まったばかり。GCライダーたちは第21ステージで1位にいることが最重要課題なら、「この日の勝利はツール初出場で26歳のパウレスに譲るというのが、GCライダーの、それこそ思考回路ではないのですか?」と問いただしたくなるぐらいだ。

 3人の逃げはやがてパウレス1人となり、フィニッシュまで残り25kmから始まるハイスキベル山への上りで、GCライダーたちが揃って加速。彼らが加速するには一応理由があって、この山頂にはボーナスタイムが設定されており、1位通過から順に8秒、5秒、2秒が総合タイムから引いてもらえるため、まずはそれを獲得しておきたい。また、それを獲得することによって、弟アダムからマイヨ・ジョーヌを奪えるかもしれない兄サイモン・イェーツの思惑も絡まり、ハイスキベル山山頂に向かって「これ第2ステージですよね?」という戦いが始まった次第だ。

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 山頂付近ではまずヴィンゲゴーが力強いアタック。それに後ろから反応したポガチャルの踏みはさらに強力で、そのままヴィンゲゴーをかわして山頂を1位通過。ボーナスタイム8秒を獲得したが、それでホッとすることなくポガチャルはペダルを踏み続け、ヴィンゲゴーがそれをピッタリマークする。そう! GC“トップ2”ライダーのランデブーが早くも始まってしまったのだ。

 このとき視聴者の一部はこう思ったはずである。「ポガチャルさん。昨年あなたは、自分で動きすぎて、最後はヴィンゲゴー率いるユンボチームにかき回され、ヘトヘトになって3連覇を逃しましたよね?」と。もちろんポガチャルもそれはわかっていると思うが、今年も春先から攻めのレーススタイルを崩さず、数々のビッグレースで優勝してきた彼である。手首骨折で戦線離脱後のツールとはいえ、その姿勢は変わることはなかった。

 ただ、ヴィンゲゴーに「2人で行こう」というジェスチャーを見せても、首を横に振られてしまったポガチャルは、さすがにペダルをいったん緩め、後続集団と合流して、レースは仕切り直しとなった。

 フィニッシュライン5㎞手前になると、様々な選手が抜け出してこの日の長い旅の主役になろうとしたが、うまくは決まらなかった。そんな中、残り1㎞のフラム・ルージュ(「赤い炎」の意味で、赤い三角の旗が垂か下がっている)で集団後方から力強い飛び出しを見せたのが、このステージで優勝したヴィクトル・ラフェだ。猛追するワウト・ファンアールトを振り切り、所属するチームのコフィディスに15年ぶりのステージ勝利をもたらした。しかもフランス人選手の勝利にツール関係者も歓喜と同時にホッとしたことだろう。やはりツールはフランスのレース。地元選手が1勝はしてくれないと面目が立たないというものだ。

 2位となったファンアールトはヴィンゲゴーのチームメイトだが、昨年のポイント賞獲得者で、第1、2ステージの優勝候補筆頭であった。フィニッシュライン通過後、ファンアールトは拳を振り下げて悔しさを表した。その横で同じようにスプリントしたのが、なんとポガチャル! ボーナスタイム4秒が獲得できたとはいえ、「落車の危険性の高いゴールスプリントは、GCライダーなら後ろでおとなしくゴールするものですよね、ポガチャルさん」。最後まで、観ている者の思考回路を狂わすポガチャルなのであった。(ABEMA『SPORTSチャンネル』) 

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