アメリカで最も古い歴史を持つ航空会社、デルタ航空は、「世界初のカーボンニュートラルな航空会社に」をスローガンに掲げている。しかし、これをめぐり「虚偽で誤解を招く表現」と消費者団体に指摘され、訴訟に発展している。環境配慮を宣言した企業に一体何が起きているのだろうか。
【映像】牧浦土雅が熱く語る “環境保護策へのバッシング”の正体
デルタ航空のCO2排出削減は主に、効果が不十分なカーボンクレジットの購入によるもので、航空事業での排出削減は不十分であり、カーボンニュートラルを掲げた宣伝は誇大広告だと指摘されている。
温室効果ガスの排出量を削減しきれない場合に他の削減事業などに資金を投入し、カーボンクレジットとして購入することで相殺する「カーボン・オフセット(相殺)」。その削減効果が疑わしいケースも存在すると話すのが、信頼できるカーボンクレジットの構築事業を目指すサステナクラフトの末次浩詩代表だ。
「たとえば『1年間で100万トンのCO2に相当するような削減・吸収をする』というクレジットが、実際には100万トンも環境に効果がないようなものが『ジャンクカーボン』と呼ばれている」(以下全て、末次代表)
「環境に配慮した良い会社」とアピールしながら、効果の薄いプロジェクトに投資する企業はしばしば批判の的になる。見せかけの環境配慮、「グリーンウォッシュ」として訴えられる事例もあり、EUでは規制の動きが進んでいる。
ただ、デルタの例からは、一方的に批判できない状況も浮かんできた。
「今の状況は『正直者が馬鹿を見る』状態になっている。デルタ航空は『自分たちはこのクレジットを使いました」と、正確に情報開示してきた。その結果、低品質(ジャンク)だと言われるものを使っていたことが判明した」
低品質なクレジットの購入が発覚すると会社の信用に関わるため、危ない橋を渡らないよう、匿名でクレジットを使うケースも増加しているという。積極的な情報開示が裏目に出たデルタ航空だが、その背景には「環境への貢献の数値化」の難しさがあるという。
「カーボンクレジットにはベースラインという概念があり、『プロジェクトが無かったときにどうなっていたか』を設定しなければならず、人が観測できないシナリオを何かしら設定することになる。どう設定するのか、その貢献を定量化するのかという方法論自体が日々アップデートされている」
目に見えない空気が自然にどんな影響を与え、人間の環境保護活動によってどの程度影響を及ぼしているのか。カーボンクレジットを使う企業と消費者のためのガイドライン作りは、今まさに進められている段階だ。
「僕らは今月もブラジルの森林減少を止めるプロジェクトに行くが、違法伐採などでどんどん森林がなくなっている。年間で100万ヘクタール程の規模がブラジルだけで無くなっているが、日本にいるとどうしても想像しにくい。カーボンクレジットには森林減少を抑制するだけではなく、その収益源で学校や病院を作るなどの活動があるので、そういう具体例も含めて日本にも伝えていきたい」
企業などの環境対策の課題について、社会起業家の牧浦土雅氏に話を聞いた。
企業のカーボン・オフセット等の取り組みに対し「見せかけではないのか」などの声もある。
「いきなり石油から再生可能エネルギーに変えるコストよりも、カーボンクレジットにお金を出すほうが早い。皮肉なことに、エネルギー系の企業は莫大な利益があるので、お金を出すことで『自分たちのカーボンニュートラル目標を達成した』と言える。これがジャンクカーボンと言われる始まり」
「お金で解決しようとする姿勢もそうだが、投資しているカーボンクレジットが本当にCO2を減らせるのか。『これだけ植林することで、これだけのCO2を吸収できる』などの説明が膨大に盛られた話(ジャンク)なのではないかというところに批判が集まっている。」
――カーボンクレジットの質など、現状のルールはどうなのか?
「ジャンクカーボンが話題になり、世界、特に国連を初めとした中立的な機関の人たちは、 質の高いカーボンクレジットに投資している。また、質の高いカーボンクレジットとは何なのかの定義作りを行っているところだ」
――そんな中で日本の現在の立ち位置は?
「現状、日本はとてつもなく遅れている。SDGsウィークなどの取り組みはもちろんやらないよりはやったほうがいいが、本質はそこではなく、もっと大きな改革が必要。政府も成長戦略の柱に掲げているがまだまだ弱い。」
――カーボンクレジットに関して日本は伸びしろがある?
「日本は温室効果ガスを世界で5番目に排出している、イコール、カーボンクレジットの世界的な買い手にもなれる。そして、日本はカーボンクレジットの購入量が世界的に少ないのでまだまだ買う余地があるし、買うべき。ここに良質なカーボンクレジットを流すのが私の1つの使命でもある」
「機関投資家は収益性以外にも、ESG対応しているかなどを見る。そうすると、日本企業の経営者の見方も変わるのではないか」
(『ABEMAヒルズ』より)
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