17日、ロシアが穀物合意離脱を表明したことで、特にアフリカの国々が食料危機にさらされる懸念が出てきた。途上国の課題解決に向けた取り組みを、情勢に左右されずに継続するには―アフリカの素材を使ったアパレルブランド『CLOUDY』のCEOで、アフリカ現地の雇用支援などにも取り組む社会起業家の銅冶勇人氏に聞いた。
【映像】途上国に1万枚のTシャツを送ると、その分の雇用を奪う
━━ウクライナ侵攻の影響、ロシアの穀物合意離脱をどうみるか?
「ものすごく大きいインパクトがあると感じている。物が入ってこないということもあるが、ここ数年ずっと続いている物価上昇が、今ピークに達しているような状況。女性の生活必需品であるナプキンが1枚で200~300円する。ガーナでは約80%の人たちが日雇いで生きている中では、必需品を購入することすらできない状況が続いている。僕らがなんとなく食べているようなポテトチップスのロング缶が、ガーナだと600~700円するのでつい手を伸ばすのをやめてしまった」(以下、銅冶氏)
ただ、そもそも必要な物資を「他国や支援機関が提供する」という仕組み自体を見直さなければならない段階だと言う。
「途上国に雇用を生む、自国内で生産できるものを増やして輸入に頼らない仕組みづくりをすること。それが、こういった途上国では今一番大きな問題の解決の糸口だと思う」
━━古着など、ものを送ることをもう考え直したほうがいい?
「1万枚のTシャツを送ればその分の喜びが増えると思ってしまうが、その国で1万枚のTシャツを作っていた人の雇用を奪うことになる。先進国が物を提供し続けたからこそ、途上国が自国で何かを生み出す能力が育たない。」
アフリカの素材を使った服を作っている銅冶氏だが、現在は別のことにも取り組んでいるという。
「ガーナで『CLOUDY』というアパレルランドの工場を現地に作って雇用するプロジェクトからスタートしている。今、我々が作っている学校の敷地近くに農場を作り、現地の学校給食の材料をそこから捻出しながら、教育と一緒に農業を作っていこうとしている。ゆくゆくは村全体が自給自足して、缶詰工場をこの場所に作り雇用を生み、物価上昇を抑えながら、物が提供できる状態にしたい。」
━━給食に目をつけたのはなぜ?
「我々の学校では必ず給食を提供することをルール付けている。一番の理由は、子どもたちが学校に来る理由になる。学校に行ったことがない親御さんも多く、最初は『学校ができたから行っていいよ!』と言うが、実は明日のお金が大変で、『やっぱり子どもたちも働いた方がいいんじゃないか』となる現実がある。途上国で学校を作っている団体などはいろいろあるが、学校に通っている子どもたちがほとんどいなくなってしまうケースがある。
そこで、給食を提供することが子どもたちを学校へ送り出す大きな理由になる。教育のレベルを底上げしていく上で、学校給食を提供することは1つの大きな糸口になると思う」
いま、ガーナの農業では、天候や環境により安定的に作ることができない状況があるという。
━━支援によりそれまでの現地の農業とは違ったものになる?
「ただ作るだけではなくて、そこにきちんとしたビジネスを植え付けてあげることが重要。どうしたらお金を作ることができるのか、広げることができるのか、継続的に運営することができるのか。そこまで一緒に作っていくことが今の途上国にとって非常に大事。いま宮崎市のJAの方々が賛同し、全面的にバックアップしていただいている。日本としてもこれまで農業支援などを行ってきたが、日本のやり方を重視してしまっていたので、なかなか継続できる仕組みが根付かなかった。現地の人たちが継続できるよう、現地を尊重した農業のかたちを作っている」
(『ABEMAヒルズ』より)
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