青森県七戸町のゴミ処理場で、現金1099万円が発見された。建設用機械を使って家具などの粗大ゴミを壊す作業をしていたところ、作業員が発見したという。現時点で持ち主は現れていない。お金は家の中で眠っていたタンス預金の可能性があるという。
【映像】「現金1000万円が続々」見つかった現場の特徴(画像あり)
日本銀行の調査(2023年3月)では、約107兆円の現金が家庭にあるという。そのうちの30兆〜80兆円がタンス預金という試算も出ている。一方で、強盗や詐欺などの被害に遭う恐れもある。なぜ銀行ではなく、自宅に大金を置いているのか。
ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「タンス預金をしている人は、脱税をしている悪い人か、頭の悪い人の2種類しか思いつかない。本当に『タンス預金の方がいい』という理由があるなら教えてほしい」とコメント。
前明石市長の泉房穂氏は「今は銀行に預けても大して利息がつかない。私は弁護士と社会福祉士をやっていた。親族に知られて、お金をむしり取られる経営者の弁護をたくさんやった。金融機関から騙し取られるような人も多かった。お金を貯め込むのは、政治が老後不安を解消できていないからだ。銀行とタンス、どちらが安心かは言えない」と話す。
これに対し、ひろゆき氏は「泉さんの言う老後不安と、お金を銀行かタンス、どちらに入れるのかは全く関係ない」と主張。「銀行が潰れたとしても1000万円までは保証される。盗難や火事を考えたら、むしろ銀行のほうが安全だと思う。架空の不安に対して『タンス預金は不安がない』と考えるのは、完全に頭の悪い判断だ」と指摘する。
泉氏は「ひろゆきさんは合理的に考えている。でも、お年を召した方の不安感や心理は必ずしも合理的ではない。振り込め詐欺でもATMに行って、口座から振り込ませる手段もある。銀行とタンス預金、どちらのリスク高いか。いい勝負ではないか」と反論。
一方、ひろゆき氏も「人の家に入った時、泥棒に盗られるのはタンス預金だ。リスクが高いに決まっている。みんながタンス預金をやるから、連続強盗詐欺事件で逮捕された“ルフィ”のような犯罪者が増える。『不安だからしょうがない』と肯定するのは、僕は間違いだと思う」と述べる。
試算ではあるが、日本のタンス預金は年々右肩上がりになっている。ひろゆき氏は「『100万円ぐらいだったらいいよね』はわかる。約107兆円の現金が家庭にあるなら、1億人で1人当たり100万円なので、約10人に1人くらいは1000万円以上タンス預金をしているのではないかとなる。特に『持っていそうなのは土地持ちの高齢者だよね』と。これが問題だ。100万円レベルのタンス預金の話じゃない」と持論を述べる。
ひろゆき氏の回答に、泉氏は「ひろゆきさんと私の金額の想定が違いすぎたのかもしれない」とした上で「私は『手元の100〜200万円くらいはタンス預金で持たせてあげて』という感じだ。それほどひろゆき氏の考えと違わない。お年を召してくると、認知症が出てくる可能性もあるから早めの対応が必要だ。トータルな対策が求められてくると思う」とコメント。
日本でタンス預金が増えている現状について、専門家はどのように受け止めているのか。
第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣氏は「経済的に考えると、非常に合理性が悪い」と見解を語る。
「これまではデフレだったから、現金の価値がそんなに下がらなかった。一方で、これからはインフレの時代になっていく。おそらく目減りするだろう。もし銀行などに預けていれば、そのお金を元に銀行が投資をする。それで経済が回るので、マクロ経済的にもタンス預金はよくない」
どのような対策を取れば「銀行に預けよう」と思う人が増えるのか。永濱氏は「例えば、相続税なら『現金を持っていたら課税が強化される』といった動きが有効だ。もともと日本の相続税は海外に比べて高い。銀行などに預けていれば少し相続税が安くなるなど、銀行や金融商品に前向きに向かせるような対策が必要だ」と話す。
そもそも、なぜ日本でタンス預金が増えているのか。
在宅介護エキスパート協会会長の渋澤和世氏は「何千万というお金をタンスに預金している人は、70〜90代の高齢者が多い。その人たちがサラリーマン全盛期の頃、現金で給料を渡していた時代がある。そうすると『これはタンスに入れておこう』といった心理が働いて、月に10万円入れたとしても年間120万円。10年で1200万円になる。あっという間に何千万だ」と説明。
建物を解体したり、家族が知らずに粗大ゴミで出した後、現金が出てくるケースも多い。一方で、タンス預金が犯罪に遭っても、元々お金があった証拠がない。渋澤氏は「認知症が出てくると自分がどこに置いたのか忘れてしまう。金庫に入っていればいいが、タンスなどに入っていると事件は起こりやすいと思う」と指摘。その上で「介護が始まる前に、資産をどうするか話し合うべきだ」と話す。
「相続税は、日本人の92%が関係ない。残り8%の人がもしかしたら悪いことを考える可能性がある。92%の人の100万〜200万円は、個人の気持ちに任せていいと思う。急に明日介護が必要だといった時にお金がないといけない。子どもに立て替えてもらうのも悪いじゃないか。葬式代も考えておきたい。そういう高齢者がタンス預金する気持ちは、すごくよく分かる」
(「ABEMA Prime」より)
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