人手不足に苦しむ飲食店 “仕込み代行”アプリが救世主に? メニューシェアリングで利益還元も
【映像】行列ができる「マグロ丼」盛り付けの様子
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 飲食店の仕込み作業をスマホ1つで外注できるサービスに注目が集まっている。飲食業界の課題解決に向け奮闘する企業を取材した。

【映像】行列ができる「マグロ丼」盛り付けの様子

 東京・渋谷にある飲食店「まぐろとシャリ」。まぐろをふんだんに使った海鮮丼が看板メニューで、休日には行列ができる程の人気店だ。しかし、店には大黒柱の存在である職人はおらず、アルバイトが中心となってお店は切り盛りされている。

「従業員は皆さんアルバイトで、職人を抱えることなく営業できている」(「まぐろとシャリ」マネージャー 柳原祐也さん)

 チェーン店ではない店がこの店舗運営を可能にした理由には、あるカラクリがあった。

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「マグロの切り付け等を簡略化するために『シコメル』というサービスを導入している」(柳原さん)

 料理の仕込みを代行してくれるアプリ、「シコメル」。言うなれば、1店舗から利用できるセントラルキッチンのようなもの。スマホ1つで仕込み依頼と発注作業ができるサービスだ。「まぐろとシャリ」では、魚の切り付けまでをシコメルが提携する工場が担い、従業員はその具材を盛り付けるだけ、というオペレーションだ。

「あまり料理をしたことがない私でも働きやすい環境」「お客様が並んでいたらスムーズに案内できたり、仕込みがない分、空いた時間でできることは多い」(お店の従業員)

 セントラルキッチンを持てないことから、仕込み作業にかかる負担や人件費がネックとなっていた中小の飲食店にとっては、まさに大きな味方となるシコメル。開発のきっかけは何だったのだろうか。

「業界としては『モバイルオーダー』や『POSレジ』など、“お店からお客さんに至るところ”ではITの導入が進んだが、“厨房から奥のところ”はこの20年間進まず、『誰もやらないのであれば我々でやろう』というところから着想した」(以下、シコメルフードテック 川本傑代表)

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 こうして2020年の秋にリリースされたシコメルが追求しているのは、工場生産になっても店の味を変えないこと。

 シコメルは飲食店から料理のレシピを受け取ると、それを工場向けに分かりやすくする“翻訳作業”を実施。全国にある提携工場の中から最適な工場を選び、試作を繰り返す。そして、店側のOKが出たものが“仕込み済み商品”として発注できるようになる。

 リリースから約3年が経ち、現在は約5500店舗が利用。2022年には約8.2億円の資金調達を実施した。

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「料理の価格が1件あたり3~5%くらいは上がる。一方で、労働時間が削減されるので、空いた時間でメインの商品やサービスに集中してもらえる。早く余力を生み出して新しい価値を作るということが一番大切だと思う」

 そして、シコメルは飲食業界の新たな可能性「メニューのシェアリングサービス」にチャレンジしている。

「『他のお店でも使っていい』と許可を得たものに関しては、アプリに商品をどんどん並べている」

 飲食店が店のメニューを専用プラットフォームに登録すると、他の事業者はそのメニューを購入できる。報酬として、利益の一部が登録店に支払われる仕組みだ。

「みんなで賢くできあがったものを使おうと、業界全体のナレッジ(知見)を活用して、生産性を上げようというサービスになっている」

 人件費の削減や、従業員の負担軽減、そして生産性の向上。今後も飲食業界の課題解決に貢献していきたいと川本代表は話す。

「7割の飲食店が『人不足だ』と言っている。まず、これを解消をしなければ、どんどんお店が減ってしまう。国際的に見て、日本の飲食店は競争力が高い。生産性を上げたうえで、海外から来る顧客に対しての進出もお手伝いできたらと思う」

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 「人手不足は非常に深刻で、そんな飲食店にとっては喉から手が出るほど欲しいようなサービスが出てきた」とダイヤモンド・オンライン編集委員の神庭亮介氏は話す。

 中には職人の手作りを望む声もある。どのように向き合うべきか。

「『何年も修行を積んだシェフが手作りした』とか『門外不出のレシピ』といったストーリー性がある店は今後もなくならない。記念日に利用するなど、ハイエンドのものとして残っていくはずだ。一方で、普段ランチに行く店にそこまでのストーリー性は求めない、という人も多い。『一定の水準を保ち、おいしければいい』という需要があるので、二極化していくのではないか」

「普段使いの方に関して言うと、シコメルみたいなサービスは非常に役立つだろうし、今はデリバリーに特化したゴーストレストランもある。そういう部分で効率化を図り、お店が存続できる仕組みができつつある。お客さんの側も、飲食店の大変な状況を含めて理解していく必要がある。シコメルのようなサービスが大々的に出てくること自体、期待値を調整していく作業の一環なのかなと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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