アメリカで進む“男女の産み分け” 命の選別につながる危険性も? 家庭内で性別の偏りをならすファミリーバランシングとは
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 女性の社会進出で共働きがごく当たり前となったほか、結婚観の変化で晩婚化が進む日本。さらに、深刻になっているのが少子化だ。

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 日本で「晩婚で何度も産めないと考えると、性別を選びたい」「跡取りに男の子を求められる人もいる」といった声も上がる中、アメリカでは、家族の中での男女の偏りをならす“ファミリーバランシング”という概念が広まっている。生まれてくる子どもの性別を選択する“男女の産み分け”が進んでいるのだ。体外受精時に“着床前診断”を行い、受精卵の染色体がXYの男かXXの女かを調べ、望むほうの受精卵を体内に戻すことが認められているのだ。

 アメリカで産婦人科医として働く安川茉弥医師は、「着床前診断の結果に性別が書いてあり、染色体異常も載っている。その中から何のバイアスもなく『じゃあどれにしますか?』『どれ入れますか?』という感じで、こんなに自由なんだ」と驚く。

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 一方で心配もあるとして、「もしどちらかの性別だったら中絶する、ということに繋がる可能性もある。産み分けが許されるなら中絶もいいんじゃないか?となるような倫理観の流れを作るのはいけないと思う」。

 日本で着床前診断を受けるには、「複数回体外受精をしても妊娠しない(2回以上)」「流産を繰り返す(2回以上)」「夫婦にどちらかに染色体構造異常がある」という基準がある。性別を選ぶ目的で使うことは規制されているが、技術的にはほぼ100%判定が可能だという。

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 不妊治療や生殖医療を専門に行う医療法人オーク会の産婦人科医・田口早桐氏は、「技術的にそれほど難しいことではなくアメリカと日本でまったく違いはない。ただ、倫理的な問題で(性別判定のために着床前診断を行うことを)禁止にする国も多く、日本でも禁止する法律はないが、日本産婦人科学会での自主規制がある」と説明。

 田口氏はこの規制について「倫理的な問題と、科学的根拠なしに提供するのは危ないということだろう」とした上で、「産み分けの話は非常にセンセーショナルで、学会で大きく取り上げられることはない。あったとしても不妊治療など治療的な意味合いのほうが大きいと思う」と述べる。

 アメリカで体外受精のうち着床前診断を実施したのは、2008年の4%から2018年には40%にまで増加している。まだ認められていない日本でも「確実に男の子が産まれるなら産みたい」「女の子が欲しいけど、もし違ったらと思うと3人目は産めない」といった声もあがっている。

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 田口氏は「私のところにも産み分け希望でいらっしゃる方がいるが、どちらかというと“男の子が続いたから次は女の子がいい”といったマイルドなものだ。政治的なことやジェンダーによる不平等があるから、男女を選ぶという話ではない」と分析した。

 一方で、神奈川県立こども医療センターの石川浩史副院長は「着床前診断を使った男女の産み分けには賛成できない」と断言する。「命の選別の線をどこで引くかは難しい問題だが、運動能力や顔貌まで産み分けるのは疑問だし、男女を産み分けるのはそれと同じでは?」「リソースが限られるので、本当に必要としている不妊症の方々の迷惑にならないか懸念」だと指摘する。

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 この意見に田口氏は「そんなに大きな問題にならないのでは?と思っている」と応じる。

「染色体の情報を知った上で受精卵を返すことによって、流産率が激減するというのは科学的な事実。生まれてくる可能性がより高い受精卵によって、苦しみを減らすのは良いことだという方向になっている。今は性別には触れずに、“この受精卵は大丈夫、これは大丈夫ではない”ということだけを伝えているが、“染色体は本当に正常なのかデータを出してくれ”と言われた時に、“大丈夫だから、見なくていいです”と拒否するのが良いのかは、疑問に思う」と述べた。

 NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「アメリカと日本の現状は全く異なる。ただ、日本でしかできない議論があるとすれば、皇統の話ではないか。今後男の子が生まれないかもしれないという中で、男系を続けていくことがどうしても必要なのであれば、産み分けぐらいしか倫理的な基準で満たせる方法はないだろう。そうした事情を踏まえながら、一般社会の中でも定着させるということは、日本の議論・問題提起としてあってもいいのではないか」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)

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