絶対に勝ちをもぎ取るという執念を込めたような3連勝だった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント2回戦・第2試合、チーム永瀬とチーム糸谷の対戦が8月19日に放送された。リーダー永瀬拓矢王座(30)は第1局で永世名人の有資格者・森内俊之九段(52)、第3・5局は若手ホープの徳田拳士四段(25)を相手に、個人3連勝。リーダー自らぐいっと引っ張った。チームもスコア5-3で準決勝に進んだ。藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、21)を除けば唯一の現役タイトルホルダーが、勝負の鬼とばかりに徹底した指し回しで、最高の成績を収めた。
ストイックな姿勢から時に「軍曹」、また相手の戦意を失わせるような戦い方から「負けない将棋」とも表現される永瀬王座が、レジェンドと若手、2人を相手にこれでもかとばかりに地力を見せつけた。第1局の相手は森内九段。後手番から横歩取りの将棋になると、永瀬王座の方から早めに仕掛けた。受けの強さには定評がある森内九段だが、中盤に永瀬王座が思い切りよく飛車を切り飛ばして森内陣を切り崩す手を選択。大胆な選択に見えたが、この大局観が冴えペースを一気に掴むと、そのまま力強く押し切った。
第3、5局はあまり情報もない若手の徳田四段との対戦だったが、より力でねじ伏せたような将棋だった。第3局は先手の徳田四段が雁木、後手の永瀬王座が矢倉でスタート。永瀬王座が「少し攻めてもらってから受けに回る展開になった」というように、先手の徳田四段から仕掛けざるを得ない流れに持ち込むと、中盤以降は完全に永瀬王座の将棋に。解説していた青嶋未来六段(28)も「うまく先手に攻めさせて受け止めた。最後は完封勝利」と評価するように、動かせておいてから駒を全部取ってしまうような、会心譜が出来上がった。
徳田四段とは先後も同じまま第5局で再戦。今度は横歩取りになったが、定跡形でお互い間合いをはかるような進行から、自ら外していった徳田四段に対して、永瀬王座は慌てて攻めずに一手一手、プラスを積み上げるような指し回し。最後は一気に攻めきって、またも快勝を収めた。
第5局までにリーダーが3勝を挙げる活躍に、チームは常にリードしながら試合を進め、粘るチーム糸谷を振り切りスコア5-3で勝利。試合後、永瀬王座は「望外な結果でよかったです」と、3連勝に表情を緩ませた。
過去には永瀬王座、増田七段、そして藤井竜王・名人という最強のチームで優勝を果たしたことがあるが、永瀬王座と増田七段のコンビは継続しつつ、その後「チーム永瀬」としてはベスト4まで。2度目の決勝、さらには優勝へ。公式戦では藤井竜王・名人と王座戦五番勝負も決まっている中、団体戦優勝に向けて貪欲に突き進む。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)