昨年、自殺した小中高校の児童・生徒は514人で過去最多となった。これまでの調査では、8月31日の夜に増える傾向が明らかになっている。
なぜ子どもたちは、命を絶ってしまうのか。実はいじめは、数ある要因のひとつにすぎない。警察庁と厚労省の調査によると、学業不振や親子関係の不和が引き金となるケースも多いという。また理由が分からないケースも多い。
『ABEMA Prime』では夏休みが終わる前に、子どもたちの悩みと自殺対策を考えた。
■子どもの自殺の原因は?
8月31日の自殺が増える点について筑波大学教授で日本自殺予防学会常務理事の太刀川弘和氏は「メンタルヘルスの具合が悪い場合、休みが始まる時よりも休みが終わる時の方が危ない。子どもの場合、夏休みが終わると学校という現実に戻ることになる。そのプレッシャーが一番高くなるのが最終日だ」と述べた。
「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「夏休みで生活リズムが大きく崩れ昼夜逆転している子どもにとって、9月1日朝8時の登校はハードルが高い。8月31日の夜は眠れず、気持ちがガクッと沈んでしまい、何もやる気が起きない状況に陥ってしまうことも一因だと思う」と推測した。
警察庁・厚生労働省による「自殺の原因に関する調査」(自殺者1人につき4つまで計上)における「学校問題」の内訳は、
「学業不振 83人」「進路に関する悩み(入試以外)60人」「学友との不和(いじめ以外)49人」「入試に関する悩み 37人」「教師との人間関係 8人」「いじめ8人」「その他 35人」「不祥 93人」
となっている。この結果について大空氏は「複数の要因が複合的、かつ連鎖的になって自殺に追い込まれる。また、亡くなった方には話を聞けないので、調査は亡くなった後の客観証拠あるいは推測に基づいている。だから、自殺の現実を正確に把握できているかは疑問だ。一方で、自殺未遂者であれば“結果”が違うだけでそこに至った背景・原因は自殺者と近いのでより実情に迫ることができる。だが、残念ながらそこまでの調査はできていない」と述べた。
■どうすれば防げる?
どうすれば子どもの自殺を防ぐことができるのか? 大空氏は「いわゆる“軽傷”の段階がある。悩みが積み重なって深刻化するケースについては、問題が少ない時点で対処できれば、重症化を防げるかもしれない」と指摘した。
一方で、社会において「親が『サイン』に気づくべき」という考え方を否定的に捉えているという。
「『悩んでいる子どもはこんなサインを出すから気づいて』と紹介すると、『どうしてサインに気づけなかったんだ』と一生苦しむ人も出てくる。それを察知することよりも、サインを出さないケース、もしくは周りが気づかなかったとしても、声を拾い上げられるような仕組みが必要だ」
また、大空氏によると「自殺の支援はいくつかの段階に分かれる」という。
「まず、我々のような相談窓口は『傾聴』する。うつの症状にも波がある。『死にたい』という気持ちにも間違いなく波がある。その波が来た時に誰かに肯定してもらう、承認して受け止めてもらう。このプロセスによって『死にたい』という気持ちが『生きたい』に変わる瞬間が必ず来る。問題は解決していないが、『とりあえず今日は相談員のあなたが話を聞いてくれたから生きてあげるよ』などと思ってもらう」
傾聴の後はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー・民生委員などに繋いでいくという。
「本来、日本が持っていた福祉制度の仕組みは、ちゃんと子どもや若者が使えるような形に改革していくと、普遍的な悩みから個人の問題へとどんどんグラデーションで支援をしていくことができる。残念ながら今は『その先』がない状態だ」と嘆いた。
太刀川氏は「現在、児童・思春期精神科医が全く足りていない。子どもの心のうちは、1時間ぐらいは話を聞かないと分からないが、その支援のインセンティブが全然ない。そういった医療資源を増やすことも大事だ」と述べた。
■相談窓口
大空幸星氏が理事長を務めるあなたのいばしょ(チャット相談)
子ども優先対応期間 8月20日〜9月4日
※24時間365日 誰でも無料・匿名
(『ABEMA Prime』より)
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