将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2023」本戦トーナメント2回戦・第3試合、チーム稲葉とチーム千田の対戦が8月26日に放送された。関西所属の棋士6人が激突したこの試合は、両者一歩も譲らぬシーソーゲームを展開。前回王者でリーダーの稲葉陽八段（35）が貫禄の3戦全勝でチームを支え、チーム稲葉が最終スコア5勝4敗で勝利した。この結果、チーム稲葉が連覇に向け前進。準決勝では、チーム藤井VSチーム斎藤の勝者と激突する。
意地と意地がぶつかり合う大激闘は、チーム稲葉に軍配が上がった。序盤の第1・2局は、相手チームの西田拓也五段（32）と最年少棋士・藤本渚四段（18）が連勝でスタートダッシュ。前回覇者のチーム稲葉としては、“切込み隊長”の服部慎一郎六段（24）と安定感抜群の出口若武六段（28）が続けて敗れる誤算が生じた。
チームのピンチを支えるのがチームリーダーの役目。第3局で流れを変えるべく、稲葉八段が登場した。対するは相手リーダーの千田翔太七段（29）。相掛かりの出だしから拮抗した勝負となったが、急所で稲葉八段の逆転術が光りチームに初勝利を持ち帰った。“勝ったら連投”がチームカラーとあり、リーダーもそれを踏襲して第4局も続投。研究会仲間でもある西田五段の四間飛車穴熊に立ち向かった。陣形の差で振り飛車ペースの進行となったが、稲葉八段の粘りと猛攻に耐える力が上回り115手で勝利。リーダーの連投連勝で星をイーブンに戻して見せた。
第5局では、出口六段が2度目の兄弟弟子対決となった藤本四段戦に敗れ再びリードを許す結果となったが、第6局で服部六段が待望の初勝利。仲間の奮闘に火が付いた出口六段も第7局で相手リーダーを破り、初白星＆チーム勝利に“王手”をかけた。
第8局は、千田七段が相矢倉の出だしから気迫を見せつけ、服部六段を破るとフルセットが決定。最終局は稲葉八段VS西田六段のカードとなった。大一番らしくなかなか差がつかない展開から、どちらが抜け出すかという緊張感あふれる進行に。実力者の西田五段に対し、稲葉八段が貫禄を見せつける圧倒的な指し回しで勝利をもぎ取り、チームの勝利を決めて見せた。
同メンバーで挑んだ前回大会では、若手の服部六段と出口六段の勢いに任せ要所で登場していた稲葉八段だったが、この試合では自身が3戦全勝でチーム勝利をけん引。「フルセットで厳しい戦いだったなと思う。チーム千田はフィッシャーの練習を積まれているということが伺えたので、より厳しさを感じました」とギリギリの戦いを振り返った。
この結果、前年覇者のチーム稲葉の準決勝進出が決定。次戦では決勝進出をかけて、藤井聡太竜王・名人（王位、叡王、棋王、王将、棋聖、21）率いるチーム藤井と斎藤慎太郎八段（30）がリーダーを務めるチーム斎藤の勝者と激突する。稲葉八段は「どちらが来ても厳しい相手。このチームも厳しい戦いを乗り越えてきているので、良い戦いができればなと思います」と意気込みを語った。
◆ABEMAトーナメント2023 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり、今回が6回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士14人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全15チームで行われる。予選リーグは3チームずつ5リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
（ABEMA／将棋チャンネルより）
