「調子が悪い」と「悪い偶然が起きた」は違う 麻雀サイボーグ・小林剛“鋼のメンタル”が揺れない理由/麻雀・Mリーグ
【映像】Mリーグ2023-24シーズン 開幕直前インタビュー

 “麻雀サイボーグ”U-NEXT Piratesの小林剛が今期リベンジを誓う。昨期のレギュラーシーズンは▲129.1ポイントとチームの“船長”としてチームを先導できず、悔しい思いをした。しかし、プラスもあればマイナスの日もあるのが麻雀。感触としても「『ひどい牌ばかり打っているな』という自覚はなかった」と生粋のデジタル派らしくクールに分析。「欲張らないこと」。自らの強みを武器に、着実にポイントを積み重ね、優勝への航路を一直線に照らす。

【映像】Mリーグ2023-24シーズン 開幕直前インタビュー

-昨期、チームはレギュラーシーズンを6位で通過し、セミファイナルは5位で敗戦。振り返りを。

小林剛(以下、小林) 昨シーズンは主に私の成績が悪かったという感覚ですね。私がプラスマイナスゼロで抑えていれば、たぶんファイナルまでは行けていたと思うので、正直、小林の数字のせいで負けたと言っても過言ではないですね。

-数字だけ見ると個人としては▲129.1ポイント。それよりも大きなものをチームに与えてしまった。

小林 そんなことはない。4人とも勝つことはないので、誰かがマイナスして誰かがプラスして、結果的にマイナスさえなければいいですが、仕方のない点ではあると思います。ただ毎年、僕がプラスで積み重ねてきたはずだったのが、昨期に関してはマイナスだった。そういう意味では、数字がもう100、200ポイントあれば違う結果にはなっていたかなと。

-プラスもあればマイナスの日もあるのが麻雀。それでもやはり、昨期はもう少しどうにかすればという思いがあったか。

小林 甘い選択だったと思うことは、毎年ありますが、去年はそれが裏目に出たケースが多かった。甘い打牌が捉えられたり、アガリ逃しをしたり。結構、私の中の選択で失敗した、みたいな。良い偶然に恵まれなかったな、というのも正直、ありますね。

-昨期は新たにメンバーが2人加入。どんなシーズンだったか。

小林 チームとしては「2人を売り出していこう」ではありませんが、新しい2人も十分戦えるということを見せられたシーズンだったと思います。監督の予定としては恐らく、セミファイナルをその2人で勝ち上がって「ファイナルは4人の力で勝つ」というストーリーを描いていたと思いますが、そこまでは上手くいかなかった。しかし、「UK」の2人は選手として、一流プロとして認知されたのではないか、と。Mリーグで戦える自信が、本人も付いたでしょうし、ファンのみなさんも認めてくれたと思います。

-特にポストシーズンは2人の頑張りが見られた。

小林 レギュラーの序盤は結構、緊張していたと思いますが、途中からは自分の麻雀を打てていたと思います。

-パイレーツはシーズンを通して動画を撮りながら4人で会話をするケースが多い。今期は開幕を前にどんな雰囲気か。

小林 今期はレギュラーシーズンで負けたら誰かが入れ替えです。既に経験したことですし、したいとは思いませんが、ただ、こういう競技の世界で負けた人間に何かがあるというのは当たり前だとも思う。

 ですが、1年目から負けたら次はないと思ってやってきているので、そこはそれほど気にしません。むしろ、みんながそれを気にして自分の麻雀を打てなくなるのが、負けに繋がる。普通に麻雀を打ってくれれば、少なくともレギュラーを突破する力はチームにあると思っています。

-昨年は「圧倒的に勝つ」がテーマだった。今年は。

小林 まだ聞いていません。監督は1年目から「圧倒的に勝つ」風なことは言っていましたが、僕は1年目から「結果的に勝つ」みたいな(笑)。ギリギリで勝てばいいよ、と思っていますが、圧倒的に勝った方が、良いは良いですよね。

-新Mリーガーが7人増えた。対応は。

小林 あまりにも情報がなさすぎるので。打っているのを見ないとどんな麻雀を打つのかはわかりませんし、「こんな麻雀なんだろうな」というイメージはあっても、やはり実物を見てみないと何とも言えない。しかも、やっている最中に変化していくでしょうから、その変化を見つつ、新しい選手はどんな打ち方をするのか、よく見ないといけないですね。

-小林選手はMリーグ初年度からいた。新たに入った人はシーズン途中でも変わっていくもの。

小林 みんなそうですけど、やはり対応して変わっていくことはありますね。1年のうちに変わるかもしれないし、2年目から変わるかもしれない。それは人によって異なると思いますが、何回か打てば絶対に成長して変わっていくとは思います。

-新しい人が入ってやりづらくなることは。

小林 やりづらくはないです。それは一緒だと思いますね。特に僕は、そんなに人読みとか大きく変える方ではないので、新しい人が入っても、自分の手を信じて。

 ただ、新選手が7人いて、打っているうちに「この人の押しはこういうものだ」というのがわかってくると思うので、少しは変えることになるでしょうが、現状はまだわかりません。

-7人の中で、一番わからない選手は。

小林 中田花奈さんですね。

-それはキャリア的に。

小林 キャリア的なのと、たぶん成長している真っ最中であること。ほとんど麻雀を見たことがないので、どうなるんだろう、というのが全く想像つきません。

-日によって全く違う、というのは対応が難しいか。

小林 「この前は押し過ぎていたけど、今日は堅かったな」みたいなことが絶対にあると思います。そこはやってみないとわからない。逆に数戦見たからといって「この人はこういう打ち方だ」と決めつけない方がいいですね。

-チームリーダーとして具体的な個人およびチームの目標を。

小林 チームの目標はもちろん優勝で、最低でもセミファイナルに残ること。ただ、セミファイナルを目標には打たないので。96試合のレギュラーシーズンでポイントを積み重ねて優勝に近付いていくことが目標です。

 個人としては、去年は200近く負けてしまったので、プラスマイゼロ以上は当然として。僕は4着回避率に入る打ち方なので、4着回避率で首位争いをできればいいな、と思っています。MVPは+400とか必要ですので、僕は400もなくていいなと。+100くらい勝って、4着回避率争いを繰り広げるような麻雀が目標です。

-小林選手からチームメイトに期待することは。

小林 正直、みんな勝つ力はあると思っています。昨期の成績で言うと、僕の次に悪かったのが鈴木優なので、優がプラスになればいいなと。

-去年は巡り合わせが悪いことが多かった。「今、調子が悪い」など、考えることは。

小林 「今、調子が悪い」という判断はしません。「悪い偶然が起こりました」というのと、「今、自分の調子が悪い」のとでは全然、状況が違うので。

 それこそ野球だったら「思った通りに振れない」みたいなことはあるでしょうが、麻雀で良いツモが来ないのは個人の調子ではない。微妙な判断が続いている時は調子が悪いというでしょうが、麻雀牌の巡りが悪いことは個人の調子ではない。なので「酷い牌ばかり打っているな」という自覚はありませんでした。調子が悪いという言葉は誤解を招くので使いません。

-小林選手は大きなラスを続ける印象がない。その秘訣は。

小林 欲張らないことですね。多くは、欲望丸出しで打っているので。トップを取りたい、高い点を取りたいと。ゲームの構造上、4位よりも1位の方が順位点が大きいので、本人たちはゲームの構造に合わせて打っているつもりでしょうが、僕は順位点も素点も失うような打ち方をしているようにしか思えない。秘訣と聞かれたら、みんなと違って欲を出さないことではないでしょうか。

-欲が出るのが人間。どうやったら抑えられる。

小林 みんな「高い手をアガりたい」と「ここは我慢する」のバランスで打っていると思うんですけど、僕は高い手をアガりたい願望がないです。アガリに向かって結果的に高くなればいいな、と思っている。そこがみんなと違います。

 僕は牌の組み合わせをしていって、たまたまスピードを落とさない範囲で高くなればいいな、みたいな感覚。その感覚が大分、違うのではないでしょうか。その結果、みんながトップを狙って4着に落ちてしまうのを、僕はちょこちょこ稼いで2着・3着を拾っていく感じです。

-チーム数が増えて日程がいびつに。昨期と戦い方が変わることは。

小林 日程に関しては全然、気にしません。今まで9回出ていたのが8回になる。出番が週に2回あったのが1.8回くらいになったというだけですから。

-やりづらいことも。

小林 ないですね。優勝ポイントとかも、そんなに変わらないというか。セミファイナルまでが6/8が6/9になったので、セミファイナルボーダーは若干、厳しくなるかもしれません。過去▲200くらいがギリギリラインだったのが、もう少しだけ上がるかもしれない。

 でも別にマイナス200を目指して打っているわけではないので、気にしません。あと9チームになって思ったのは「組み合わせを作るのが大変だっただろうな」というところです。僕は、まず「9」と言われて、その気持ち悪さが(笑)。しょうがないですけどね。

-赤坂ドリブンズにネット麻雀の雄・渡辺太選手が入団。どんな印象か。

小林 渡辺太、楽しみですね。たぶん、すごく強いです。ネット麻雀界の実績では朝倉(アサピン)か渡辺、ほぼ2トップと言っていいくらいな感じですので。リアル麻雀の部分は正直、知りませんが、彼の麻雀でここが下手、ここがダメとか、もう7~8年の付き合いですが、聞いたことがありません。

-付き合いがある。

小林 ネット麻雀でよく同卓するくらいですが。やられているイメージですね。

-対策は。

小林 取りようがないです。

◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
ABEMA/麻雀チャンネルより)

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