「セレブ」にかかれば、驚異的なスコアも単なる通過点だ。昨期、初めてファイナルシリーズ進出を果たしたTEAM雷電の黒沢咲(連盟)は、シーズン前半に11万2700点という、歴代最高スコアを叩き出した。波に乗ったら止める者はなく、本人も「誰と戦ったか覚えていない」くらいに入り込み、点棒を稼ぎに稼ぎまくった。2期連続でのファイナル進出、さらに悲願の初優勝を成し遂げるために、セレブが照準を定めたのは13万点というとてつもないスコアだ。
【映像】Mリーグ2023-24シーズン 開幕直前インタビュー
-昨期は3位。ファイナルでは最終戦に出場し、慣れない条件戦を戦った。
黒沢咲(以下、黒沢) もうやりたくないです(笑)。ああいう出番は嫌ですね。10万点取れば優勝とか10万点取れば3位から2位に上がれるというなら喜んで出て行きたいんですが、着順で負けたら入賞できないとかは本当に向いてないと思って。ものすごく消耗しました(苦笑)。
-チームとしてファイナルに出場できたからこその苦労だった。
黒沢 そうなんですよ。最後の4戦は(出場する)順番が決まっていたので、たまたまあの場面で私が出ることになったんですけど、おそらく関係なく一戦一戦決めていたら私は出ていなかったと思うんですよ。半泣きでした。
-一昨年の大敗を受けてからの昨年どんなシーズンだったか。
黒沢 チーム解散になるかもしれない、編成が変わるかもしれないというきつい一年になるとは思っていたんです。それを突きつけられると逆にもう明るく前向きにやるしかないので、スッキリというか。前年の成績が悪すぎたからというのもありますけど、いい意味で全員開き直れた。それが昨シーズン、今までと比べて良かった結果につながったんじゃないかと思っています。
それぞれみんなが精神面でタフになって臨めたシーズンだと思うので、それを考えると▲1256.1の年というのは結果的に無駄にならなかった、無駄にせずに成長できたのが誇らしいと思っています。
-1年目も2年目もセミファイナルまで行ったがその後は苦しいシーズンが続いた。
黒沢 そうなんです。だから(2021-22シーズンに)ガコーンとやられて開き直った。どんな逆境の中でも前に進む気持ち、強い気持ちが全員にあって向き合えたし、誰かがちょっと弱気になった時は周りが盛り立てて励ます、みんなで戦えたシーズンだったと思います
-昨シーズンは本田選手が絶好調。
黒沢 出だしが2連敗でまた悪夢が始まったというような顔をしていたんです。Mリーガー全員の中で一番暗いスタートを始めたのは彼だったと思うんです。きっかけとなったのは瀬戸熊さんが「ラスだったけど今日みたいな試合をやっていれば大丈夫だよ」って言ったことですね。単純な本田さんなので、それを真に受けて「大丈夫と言っていたら大丈夫なんだ」って。たまたまその次から成績が出てきたので、ノリノリになってくれました(笑)。
SNSで「本田さんは褒められると伸びるタイプだから」と瀬戸熊さんがつぶやいたんですよ。そうしたらユニバースのみんなが本田さんを褒めるようになって、そしたら調子に乗っちゃって、言う通りだったなと。勝つ度にみんながめちゃくちゃ喜んで褒めてくれるので、それでニヤニヤしながら調子に乗って、気づいたら素晴らしい成績になっていました。
麻雀ってメンタルが大事と言いますけど、大事どころか本当に気持ち一つで大きく変わってのびのびとやれるようになるんだなと、目の当たりした一年でした。
-本田選手本人はMVPを取らないと(選手入れ替えの)レギュレーションに引っかかった時に、自分が外れるんじゃないかと心配していた。
黒沢 雰囲気が5年間で一番ぐらいに良かったので、みんなそういうことはあんまり言わなかったし気にならなくなって打っていたように見えました。気持ちを1つに、じゃないですけどそれを実現できた年になったと思います。
-ポストシーズンに萩原聖人選手が体調不良で一時離脱。チームとしては頑張らなければというポイントだった。
黒沢 私もなんとか元気づけたいと思っていました。情勢的なものもあって実際に病院に行って励ますということができなかったんですが、(病院で)絶対Mリーグは見ているじゃないですか。だからいい麻雀を打って勇気づけることができたらと思っていました。
あとは退院して戻ってきた時に私たちのMリーグが終わってしまっていたら寂しいじゃないですか。萩原さんが戻ってきた時にいい位置にいて、4人で戦っていけるいい位置を作った上で帰ってきてほしいなと。病気になったことは一見悪いことしかないんですけど、いつも以上の力がもしかしたらみんなで出せたと思うので、自分たちの力にできたと思っています。
-次のシーズンに向けて、宣材写真等の撮影で久々に集まった。
黒沢 オフシーズン中も順番に何の罰ゲームか忘れたんですけど、4人で集まって瀬戸熊さんや本田さんがご飯を奢らされてるんですよ(笑)。4人でオフシーズンも集まって麻雀をしますし、美味しいものを食べたのに「何で俺が払わなきゃいけないんだ」と言ってますが(笑)。久しぶりに会ったという感じでもそんなになくて、自然とみんな笑顔になって、嬉しい感じで今日も楽しく撮影をしていました。
基本的に麻雀打ちはマイペースで、1人で過ごすのが好きであんまり「みんなでなんかしようよ」ということがないんですよね。試合とか会場以外でも4人で集まって楽しい、みたいな感じがどんどん出来上がっている気がします。
-新しいチームが増えて日程も変わるが、その点で意識していることは。
黒沢 特色のある選手も入ってくると思うんですが、それはあんまり気にしすぎない方が私は普段から自分の力を発揮しやすいタイプだと思っています。
(BEAST Japanext)鈴木大介さんの麻雀を見ているとめちゃくちゃ強いなと思わされます。特に一発勝負でとんでもない力を発揮するタイプ。それでも私は強い人と打つのがすごく好きなのでめちゃくちゃ対戦を楽しみにしていますし、心配をしてもあまり意味がないと思っているので、あまり不安にならずに次のシーズンを迎えたいと思っています。
-新しいチームが入ると、リーグ全体の雰囲気も変わるか。
黒沢 猿川さんや菅原さんは同じ団体なので、顔を合わせることがあるんですけど、そんなにたくさんしゃべる相手ではない。新入生じゃないですけど、新しい人が入ってきたなというドキドキ感もあります。どういう雰囲気になるのかなと楽しみですよね。
中田さんも何回か対戦はしているんですけど、打つ度に勉強しているんじゃないかなと感じますし、今まで以上にMリーグに入ったらさらに急成長すると思うんですよね。いっぱい刺激を受けるしバッシングがあったりいっぱい褒められたり。すごく今までとは違う密度で(経験値が)増えてくると思うので、そんな成長が楽しみです。
ドキドキ緊張しながら、私の1戦目がそうだったようにみんながステージを上がってくると思うので、迎え撃ちたいなと思っています。
-新シーズン、個人の目標は。また最高スコア記録の更新は。
黒沢 ちょっとずつ更新したいと思うので、13万点のトップぐらいで行こうかなと思っています。最初は2万5000点しか持ってないので、6万点ぐらいから叩けるだけ叩きたいし、明らかに自分に風が吹いているみたいな感じになります。それぐらいになってくると安い手が入らないんですよね。ほとんど1万2000点か1万8000点ぐらいずつ増えるぞ、みたいな。それまでは刻みながらというところもあると思うんですが、それぐらいまで行くと、アガったら跳満、倍満だぞというような。
そうなると、入り込みすぎて待ちの枚数とかは頭をよぎらないんですよ。とにかく集中しすぎちゃってるんですかね。余計なことを全然考えないので、終わった後に誰と戦っていたのか覚えてないぐらいのこともあります。相手がカボチャかナスかみたいな感じですかね(笑)。
相手がこういう風に打ってくるだろうとか、そういうこともあんまり考えなくなってくるところが不思議とあって、そういう時の試合って対戦相手も覚えていないんです。普段から待ち枚数とかもあんまりわかっていないんですけども、頭で考えていないんですよね。自然と体が動いている感じです。変なモードに入っているとそんな感じになりますね。
-新ユニフォームの印象は。
黒沢 すごくカラフルになったなと思っています。最初の何年かはほとんどスポンサーさんもなかったのですごくシンプルな感じだったんです。萩原さんがプロデュースしてくれたり作ってくれたんですが、だいぶ賑やかな感じになってきました。応援してくれる人がどんどん増えて、こういう風にカラフルなものを背負って戦えるというのはそれはそれですごく嬉しいと思います。
でも私はあんまり着るものとか気にしないタイプなんで。萩原さんがとてもおしゃれなタイプですが、瀬戸熊さんも何でも大丈夫です(笑)。
たくさんのものを背負っているし、重くなった気がします。私たちが良い麻雀をしていい結果を出すとここ(企業ロゴ)が喜んでくれてるような気がしますし、この子たちが誇らしく輝いているような気がしますので。
-昨シーズン、途中で髪を黒く染めた本田選手が、また茶髪にしたい希望がある。
黒沢 本田さんは茶髪で目を隠したいタイプなんですけど、自分の心構えや姿勢は外見には出ると思っていて、私はすっきりした黒髪で真剣に打っている方がかっこいいと思います。
武士道じゃないですけど、背筋を伸ばしてきちっとした格好でやっている方が本田さんは似合うと思う。そういう感じで麻雀に取り組んで欲しいです。ただでさえちょっとチャラチャラして見えるタイプですからね(笑)。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズンを戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。さらに上位4チームがファイナルシリーズに進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)