突き抜けた才能を持つ一面がテレビや映画でも取り上げられ、認知されるようになった「ギフテッド」。一方で課題となっているのが、周囲との違いに苦しむギフテッドが過ごしやすい環境づくりだ。
【映像】IQ138ギフテッド男性が“畑仕事”で例えた「上司とのズレ」
「小さいときは、なんとなく周りと合わせづらいとかっていう感覚はあったが、それが段々と『周りとちょっと違いがあるんだ』と感じるようになってきた」
IQ138の「ギフテッド・サバイバー」として、これまでの経験を発信している吉沢拓さん(37)。小学生のときには算数オリンピックの全国大会に出場するほど勉強が得意だった一方で、周りとのズレを感じることが多かったという。
「算数に強い興味を持っていたのでどんどん学びたかったが、(小学校の授業では)『得意な子は苦手な子とペアを組んで教えてあげて、その子ができたらあなたも次の問題に進んでいいよ』という形だったので、自分としては物足りなさがあった」
意欲はあるのに自分のペースで学べないことがストレスだったという吉沢さん。しかし塾に通うことでどんどん成長、10歳の頃には中学校3年までの学習範囲を終わらせていた。その後は自由な校風の進学校で過ごし大学へと進んだため、自分の好きな勉強に没頭することができたと話す。
しかし、自分らしく過ごせる場所があった学生時代から一転、社会人になってからは“問題児”扱いされ、休職や転職を繰り返すことに…。
「いわゆる“社内評価”が真っ二つだった。すごくハマる会社や部署もあれば、全くハマらない会社もある。上司からすると『自分の考えを理解しようとしない。理解できる能力も協調性も感じられないダメな人間だ』と。攻撃的な言葉を浴びせられることもあった」
根本的な問題は、上司や同僚の“当たり前”と吉沢さんの“当たり前”のズレだったという。
「イメージとしては、自分は遠くの火事を見つけて『大変だ!なんとかしなきゃ』と言っているが、周りはその火事が見えていない状態。目の前の畑仕事をほったらかして山火事をどうにかしなきゃとしていると、上司からは『お前に任せた仕事はどうなってるんだ。お前、なにもやってないじゃないか』と怒られてしまう。目線が合わないことが多かった」
周囲の当たり前から外れてしまうと“理解できない存在”になってしまう…。自分の持つ能力が評価されない葛藤に追い込まれ、休職や転職を繰り返した吉沢さん。様々な苦悩を抱えながら、自分らしくいられる場所を模索し続けた自身の経験から、“ギフテッド”について考えを述べる
「どうしても『天才』とか『才能』という部分だけ着目されがち。周囲からするとそれを伸ばしてあげるのが、本人にとっての幸せだと思い込みがちだ。しかし、当事者からするとそうとは限らない。そんなことよりも『安全でいたい、自分らしくいたい』という人が多い。ズレがある限りはどうしても“才能のカツアゲ”が起きてしまう」
文部科学省の有識者会議でも、特異な才能のある児童生徒への指導や支援の在り方を議論している。吉沢さんは「特殊な例ばかりに注目せず、いろいろな教育の形を模索することが望ましい」と話した。
「得意な子が苦手な子に教えてあげるやり方は自分には合わなかったが、みんなが等しく同じ授業を受けられるのはいいこともある。『ギフテッドの才能が活かされてない今の教育はだめだ!』と悪いところだけ見て否定するのではなく、もっとフラットに考えてほしい」
このニュースについて、『ABEMAヒルズ』に出演したJX通信社の代表取締役・米重克洋氏は「ジェンダー問題と同様に多様性がキーワードになると思う」と指摘する。
「個人個人が自分でやりたいことに意欲、意思を持って動かないとその人や周囲の人間は決して幸せになっていかない。働く環境でもよく議論されているが、学ぶ環境でも同じことが言えるのではないか。
我々のように当事者ではない多数派の人間が気づかない苦しみや悩みを持っている人はいる。その人たちが本当に望んでいることは何かをコミュニケーションを取りながら考えていくことが大事だ」
(『ABEMAヒルズ』より)
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